【連載】コロナショック以降の不動産市況

今年3月から約2か月間、新型コロナウィルスの蔓延を避けるために施されたロックダウン措置。今年5月以降は、空港などでの帰国者の14日の隔離制度程度の軽度のロックダウンに変わったニュージーランドですが、経済的な損失はかなり大きなものとなってきています。

1)商業(テナント)物件は壊滅的な被害

ニュージーランドのメインの産業である観光業は、壊滅的な被害があるようです。特に、ニュージーランドの最大級の観光地、クイーンズタウンは、死の街と化しているという話もあります。実際にいっていないのでよくわかりませんが、そこで日本料理的を経営する女将さんのブログをみると、海外からの旅行者はみない。但し、今年の冬は寒く、国内からのスキー客などは増えているようです。

リンク先: https://yokonzblog.net/

クイーンズタウンの夏場は、ミルフォードサウンドという世界的な観光のスポットを訪れる観光客もたくさんいます。但し、今年は原則、国内客メインとなるのでホテルなども安くなりそうなので、国内需要で凌いでいくということになるのかもしれません。

中国などのインバウンド需要に支えられていたことを実感する観光地の風景となっているようです。現在も、空港での新型コロナウイルスの検疫が行われており、観光目的であっても原則入国禁止という状況が続いています。

私が住んでいるオークランド市内も、レストランなどのテナント関連の店舗は、空きがかなり目立つようになりました。ロックダウン中に閉店を余儀なくされたテナントも多いようです。また、新しく店舗を開店する方もいらっしゃるのですが、黒字化するには相当に厳しい感じもしています。

今後も、商業系の店舗の需要減は続く感じがしています。また、今年4月から最低賃金の値上がりなどもあり、人件費の高騰と家賃の高騰で、テナントはかなり厳しいところが多いのがわかります。今年1月にオープンした日系の一風堂は、賑わっていましたが、オークランドでも最も家賃が高いショッピングモールのテナントとして出店しており、儲かっているのかどうかは、よく分かりません。

また、簡易な工業系のテナント施設、例えば、自動車修理工場のような物件については、テナント募集か売り物件の看板が多く見られるようになりました。テナントが、ロックダウン中の資金繰りがつかなかったのか、あるいは、丁度商売に見切りをつけるという判断をしたのかもしれません。

2)居住用物件は、比較的活況が続く

不思議な状況が発生しているのが、居住用の物件。ニュージーランド国籍であれば、オーストラリアでのビザなしでの労働も可能なことから、多くのニュージーランド人(以下、キウイ)が、オーストラリアで出稼ぎ生活をしていたのですが、オーストラリアも不況となったことから、ニュージーランドへ帰国するキウイが増えたことです。

キウイがまず考えることは、住居を確保することであり、それも所有しておかないと、家賃がインフレで上昇することを十分に認識しているので、買える範囲内での住宅を買う方向に動いています。

また、コロナウイルスショック後、政府の住宅購入の助成やニュージーランドの中央銀行がゼロ金利にしたこともあり、住宅ローン金利も、史上最低の2%以下のものもでてきて、空前の住宅購入ブームのような状況となっています。但し、このようなファーストホームバイヤーと呼ばれる一次取得層は、価格100万ドル以下の物件がメインです。

一方で、アメリカからの移住ないしは、セカンドハウスを取得しようという動きが活発になっており、5百万ドルを超えるような物件の需要も高まっているようです。ニュースにもなっていましたが、7百万ドル程度の評価額であった住宅が、なんと11百万ドルで売れたということらしいのです。買ったのは、アメリカ人ではないかと言われています。

NZドルの為替レートも対米ドルでかなり弱くなっているので、アメリカ人にとって、ニュージーランドの住宅が、かなり割安にみえることも影響しているようです。また、米中の貿易戦争などもあり、平和な国ニュージーランドに住宅を持とうというアメリカ人が増えているというお話のようです。

もちろん、2018年10月から永住権を持たない個人が、居住用の住宅を購入することはできないのですが、500万ドルを超えるような物件については、OISというニュージーランドの海外投資局の了解を取れば、購入可能です。また、永住権についても、1000万ドル以上投資すれば、ほぼ無条件で永住権を取得できる制度を利用しているアメリカ人もいるのではと思われます。

このような状態であり、100万ドル以下の物件や500万ドル以上の物件は活況を呈しています。ロックダウン中に想定されたような「失業者が大量に増えて、住宅物件の投げ売りが始まる。」想定については、今のところ起こっていません。これは、人口が増えるという要素と住宅の不足状況が続いているというマクロの視点からみれば、住宅価格は下がらないという結論に導かれるような感じです。

このように、商業物件と居住用物件の大きな格差ができているニュージーランドの不動産市場の現状です。今後、どのような変化をみせるかについても、紹介していきたいと思います。

ふりーパパ

ふりーパパふりーパパ

投稿者プロフィール

1980年代後半から不動産投資開始。
2004年にサラリーマンを卒業して、不動産投資や株式投資などにて生計を立てる。不動産投資に必要な頭金を株式投資などの紙の資産への投資をし、それを元手に借入金を起こして不動産投資をしているのが特徴

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