【連載】管理会社の活用で心労も最小限に。室内死亡事故発生時の対応手順とポイント

  • 2021/3/15
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(株)アートアベニューの安藤と申します。弊社は首都圏の賃貸物件約6800戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。
本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

2度目の緊急事態宣言も解除され始めたとはいえ、未だ収束の兆しの見えないコロナ禍。直接的な因果関係は証明できませんが、コロナ以降、病死や自殺など、室内で亡くなる入居者の数が増えているという声を周りの管理会社から聞くことが増えました。

かくいう当社でも、例年は1件あるかないかという室内での死亡事故が、昨年はなんと11件も発生し、現場では毎月誰かがその対応に追われているような状況でした。
もし、自分の物件で入居者が亡くなってしまったら。

今回は「事故」発生後の流れをざっくりと把握するとともに、各ステップで気を付けたいポイントを確認していきましょう。

まずは遺族との話し合い。話がまとまったあなたは恵まれている。

室内で死亡事故が起こってしまった場合、当然ながら最初に取り掛かるべきは、室内の荷物の片付けと清掃、内装工事です。賃貸借契約や室内の家財などは「相続人」に相続されますので、まずは遺族(相続人)や連帯保証人と、部屋の明け渡しや原状回復工事について話し合いをすることになります。

一見すると当たり前で簡単なことのようですが、明け渡しや工事の費用負担について、遺族とスムーズに話し合いを進められるなら、実はまだ恵まれた状況だといえます。なぜなら、保証会社利用のため連帯保証人がいない、借主が天涯孤独で相続人がいない、相続人が相続放棄をしたため費用の請求先がない、といった事例も最近では増えているからです。

借主が亡くなったことでの損害であれば、できる限り借主側に費用を負担してほしいというのが貸主心理かとは思いますが、いくら粘って交渉したところで、支払い義務のないものを払わせるというのは非常に難しいものです。また、交渉に時間をかけけるほど入居者募集は遅くなり、機会損失は増える一方となりますので、相続人がいなかったり、相続放棄をされてしまった場合には、『これも不動産投資のリスク』と腹をくくって、速やかに修繕や清掃の手配をしてしまう方が得策でしょう。

減額せずの募集も可。募集再開時の条件設定は状況次第。

室内が片付いたら、次は速やかな入居者募集ですね。
とはいえ、室内で人が亡くなった部屋は『心理的瑕疵』のある物件として、宅建業法上、賃貸借契約の重要事項説明で借主にその事実を告知する義務が生じます。また、人が亡くなった部屋はどうしても敬遠されやすいため、賃料を減額して募集をすることが一般的です。

ですがこの告知義務や減額、法律で期間・金額が明確に決まっているわけではありません。あくまで個々の事案ごとに、自殺か病死か、部屋のダメージの大小などによって、告知する期間や減額幅は変わります。実は、告知事項のある物件イコール必ず減額が必要、というわけでもないのです。

たとえば、室内で病死後にすぐ発見されて部屋にダメージなし・入居者募集にも支障なしと判断できるなら、告知のみ行なって賃料の減額はしない、というのも選択肢の一つでしょう。管理会社はその判断の目安が分かっていますので、いざという時はまず管理会社に相談してみてください。

言うは易し、行うは難し。こんな時こそ管理会社にお任せを。

また、そもそも死亡事故対応は、個人で行なうにはなかなかにハードです。荷物を片付けて、内装工事をして、条件設定をして募集する。言葉にするとたったこれだけですが、悲しみに暮れる遺族に金銭の交渉をして請求をするだけでも精神的にこたえますし、募集条件の設定も判断が難しいもの。このあたりの業務を任せられる「管理会社」の存在は非常に頼もしいでしょう。

慣れない業務、避けたい業務を代行してもらえるのも、管理会社に任せるメリットのひとつです。万一の際には管理会社をうまく使って、最小限の労力で賃貸運営のトラブルを解決していきましょう。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

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