木造の中高層マンションが都会の風景を変え、日本の林業を救う

日本の伝統的な建築物と言えば木造です。そして最近の木の大型建築物と言えば、国立競技場。「杜(もり)のスタジアム」として国産木材をふんだんに使用した、世界的にも珍しいスタジアムとして生まれ変わりました。

また同じように、木造の高層マンションも誕生し注目を集めています。

地上14階建ての木造の高層マンション

木造の高層マンションが注目されたのは、2020年2月のこと。野村不動産が東京都千代田区に「プラウド神田駿河台」という日本初の木質系構造部材を使った高層分譲マンションを建築することをリリースしたことでした。

「プラウド神田駿河台」は、JR中央線・総武線の御茶ノ水駅から徒歩5分という立地にあり、地上14階建て、総戸数36戸という規模です。

設計と施工を担当するのは、木造ビルの実績が豊富な竹中工務店。内装材に木材を使用するだけでなく、なんと、柱や壁などの構造部も木材を使うと言う正真正銘の木造です。また、国産木材を使用するという点にも注目が集まりました。

これまで高層ビルは基本構造は鉄骨とコンクリート。これはこれでオシャレな建物は作れましたが、都会的である一方、無機質になりがちでした。そこで、装飾に木材を使うなどして温かさを演出したものはありました。しかし今回発表されたのは、芯まで木造。言い方を変えれば、五重塔の高層マンションなわけです(何か違う気もしますが)。

何にせよ、街中の緑化は熱心に取り組んできたテーマでもあり、木質感を生かした外観デザインには大きな期待が寄せられます。

中層マンションも各地に登場

実は木造マンションは他にもあります。

三井ホームは、2020年11月から東京都稲城市で、木造大規模中層マンション「(仮称)稲城プロジェクト」に着手しています。最寄り駅は京王相模原線、稲城駅。駅から徒歩4分というので、立地条件はなかりよいですよね。建物は5階建て。1階は鉄筋コンクリート造ですが、2階から5階が木造というハイブリッド型。総戸数は51戸だそうです。

実は三井ホームは、ハイブリッド型の4階建て、5階建て施設を多数手がけていて、さらに建築法が日本よりもゆるいアメリカやカナダでは、7階建てのマンションなども建てているとか。すごいですよね。

他にも賃貸マンション「yeniev(イニエ)南笹口」が新潟で建てられています。ここは木造5階建てで、山形市の木構造メーカーが開発した木質2時間耐火部材を使用したのが特徴です。マンションは1K]~1LDKの15戸だそうです。

技術が上がり、建築法が改正されたことが契機に

木材はあたたかでいいな、と感じますが、一方で気になるのは性能面。これまでは耐火性をあげるには、マイホームであってもRC造にするのが当然という風潮があるなか、より大きな耐火性が求められる高層マンションで木造がふんだんに使用となると、この点が気になるのは当然のことかもしれません。

実は中高層木造の実現が可能になったのには、建築法の規制が緩和されたことが関わっています。

日本の建築法は1919年に作られた「市街地建築物法」というのが最初であり、1950年には建築基準法が作られ、ここで大型の木造の建築物は規制を受けることになりました。この時代の木造はとにかく燃えやすく、技術力でカバーできるものではなかったので当然かもしれません。また、「コンクリートはすごいぞ」という神話があった時代なので、木造よりもコンクリートの方があらゆる面で優れているんだという雰囲気があったのも事実です。

しかし時代が進み、2000年に建築基準法が改正されます。ここで、「木材でも鉄と同じ性能出せるなら、木材を高層ビルに使用しても良い」と改正されます。

具体的には、2時間耐火の国土交通大臣認定を取得していることが条件になります。これには梁や外壁などあらゆる部材で合格したものが複数でてきており、これが今回の中高層マンションの建築につながったというわけです。例えば、竹中工務店が開発した「CLT(直交集成板)耐震壁」「LVL(単板積層材)ハイブリッド耐震壁」は、耐火性はもちろん、十分な耐震性が確保できることが認められています。

また木造は他の面でもメリットがあります。鉄筋コンクリートに比べると軽量で建築の際のコストカットができる点。また、国産の木材を使用すれば、資材調達のコストダウンも図れます。

CLTの広がりを国土交通省も後押し

木材利用でも安全な建物が建てられることがわかったことで、国土交通省はCLT(直交集成板)を使った建築物の一般設計法を策定しました。これまでは建築物ごとに大臣認定を受ける必要があったものを、告示に基づく構造計算や仕様にすれば個別に認定を受けなくても建築許可がおりるとするものです。

これにより今後は木造建築物がさらに加速するものと思われます。

日本の木材自給率が改善傾向に

ちなみに CLT は複数の板を張り合わせて作られるもの。これによりこれまでは捨てられてい木材が使えるようになり、国産材の有効活用にもつながります。

実際、民間や団体が国産材の使用に積極的に取り組んだことにより、日本の木材自給率が改善しつつあります。2000年には18.2%ものが、2018年には36.6%に回復(林野庁発表)。これは2011年から8年連続での上昇とのことで、これからますます期待ができそうです。

日本の国土面積の約3分の2は森林。1900年頃から植林されたものの使われる先がなく、放置されている木が多くあるそうです。これを活用する手段としても注目される今回の取り組み。元気がない一次産業の活性化にもつながることに期待します!

原田園子

原田園子ディレクター

投稿者プロフィール

「不動産の学校」のディレクター兼ライター。
住宅メーカーや不動産業者をクライアントに持っています。
不動産関連の取材実績も多数あり。
不動産投資から日々の暮らし記事まで、幅広く担当します。

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