固定資産税評価証明書とは?国定資産公課証明書との違いも解説
みなさんは「評価証明書」をご存知でしょうか?
不動産登記に関わる登記免許税(とうきめんきょぜい)の算定、相続税や贈与税の申告などの際に必要になる「固定資産評価証明書」がそれにあたります。耳慣れない言葉ではありますが、いざ必要となった場合に、自ら市区町村役場に取得しにいかなければなりません。今回はそんな固定資産評価証明書について、使用用途から取得方法まで、基本情報を解説します。
固定資産評価証明書とは
固定資産評価証明書とは、固定資産評価基準に基づいて評価した固定資産税評価額を、証書として記したものになります。ここに記された評価額は、不動産に課税する際の計算に使用します(課税対象には、機械装置などの償却資産も含まれます)。また、土地、建物を売却する際の参考価格にもなります。
固定資産評価替えは3年ごと
固定資産の評価額は毎年算定されている訳ではありません。評価算定は3年ごとに行われ、評価替えしています。また、新築、増改築した家屋、地目の交換(農地から宅地への変更など)、1つの土地(一筆いっぴつ)を複数の土地へ分ける文筆(ぶんぴつ)、複数の土地を一つにまとめる合筆(がっぴつ)などが行われた土地に関しては、翌年度に新しい価値が決定します。
固定資産税評価証明書と国定資産公課証明書
固定資産税評価証明書は、固定資産の評価額を記した証明書です。その使用目的はさまざまです。
使用用途
- 登記免許税の算定
- 相続税、贈与税申告
- 不動産取得税
- 住宅ローン契約時
固定資産公課証明書は固定資産税評価証明書に加えて、「課税標準額及び税相当額が記載されたもの」になります。固定資産税の計算のもとになる額面、固定資産税や都市計画税の課税標準額、相当額などです。
固定資産税、都市計画税は、不動産の所有者が納税します。そのため、不動産の売買や譲渡が行われた際に、前の所有者と今の所有者との間で、固定資産税、都市計画税を分けるのですが、その額面を不動産公課証明書に記された税相当額をもとに算出します。
ちなみに、都市計画税はすべての不動産に課されるわけではありません。都市計画税は都市計画法に基づいた、市街化区域とされる場所にある不動産が対象となります。毎年1月1日に市区町村の固定資産台帳に、土地や建物の所有者として登録され、都市計画税の課税対象とされている不動産に対してのみ、課税されます。
固定資産税・都市計画税の計算の仕方
固定資産公課証明書に課税標準額が記載されています。
固定資産税の標準税率(100円未満切り捨て)=固定資産税評価額×1.4%(制限税率)
都市計画税の標準税率(100円未満切り捨て)=固定資産税評価額×0.3%(制限税率)
「制限税率」とは上限であるということ。市区町村によってはこれより下回る税率であることも。例えば固定資産税の標準税率計算において、1.4%ではなく1.2%が適用されることがあるということです。定率ではありませんので、注意して下さい。
固定資産税評価額とは≠不動産の時価
固定資産税評価額とは固定資産税を算出するための評価額ではありますが、この額面がそのまま固定資産の額面、不動産の時価額とはなりません。固定資産税評価額は、土地の場合は公示価格の7割、建物であれば新築時、5~7割となります。また、当然ですが、建物の評価額に関しては、償却資産(機械装置など)を含め、年々評価額は下がっていき、ゼロに近づいていきます。固定資産税評価額の目安は以下のようになります。
- 土地の固定資産税評価額=土地の時価×70%
- 建物の固定資産税評価額=建物の建築費×70%
また、すべての土地、建物が上記標準税率で算出されるわけではなく、減免される基準も複数あるので、確認しておきましょう。
土地に対する条件 | 固定資産税 | 都市計画税 |
住宅用地の小規模宅地用地(200㎡以下の部分) | 1/6になる | 1/3になる |
小規模宅地以外の住宅用地 | 1/3になる | 2/3になる |
新築住宅 床面積120㎡までの居住部分に係る | 1/2になる |
更に、土地の課税標準額が30万円以下、家屋の課税標準額が20万円以下の場合は、固定資産税、都市計画税が免除になります。
建物に対する減免措置23区内の場合①
例えば東京23区内の都市計画税であれば、耐震化のための建替え、又は改修を行った住宅に関して、固定資産税、都市計画税の減免措置があります。
耐震化のための建て替えを行った住宅に関して
昭和57年1月1日以前からある家屋を取り壊し、当該家屋に代えて平成21年1月2日から令和2年(2020年)3月31日までの間に新築された住宅(新築したマンションを購入した場合も、要件に該当すれば減免される)。
減免される期間
新たに課税される年度から3年分の都市計画税全額減免。
建物に対する減免措置23区内の場合②
耐震化のための修繕を行った住宅に関して
昭和57年1月1日以前からある家屋で、平成20年1月2日から令和2年(2020年)3月31日までの間に、耐震化のための改修を行った住宅。
減免される期間
改修完了日の翌年度(1月1日完了の場合はその年度)1年分について住宅1戸あたり120㎡の床面積相当分まで全額減免。
上記の減免の例は東京23区内に限られますが、住まいの市町村によって特例措置が設けられている場合がありますので、しっかりと確認しておきましょう。
評価証明書の用途
登録免許税の算定
不動産を登記する際、固定資産税評価額をもとに登録免許税が課されます。税額は最大でも固定資産税評価額の2%になります。
不動産売買の申告
不動産の所有権が別の者へと変更になる際、固定資産税評価証明書が必要となります。ちなみに、不動産の所有者が変更になることによって、固定資産の価格自体に変更はありません。ただし、固定資産税の支払額は前所有者と次の所有者で分割する必要があり、その際は固定資産公課証明書の税相当額を日割りで分割するのが一般的です。
なお不動産取得時に課される不動産取得税は、不動産取得時に1度だけ課される税です。その額は固定資産税額の3~4%になります。
相続税、贈与税の申告
土地、家屋などを相続、または贈与された場合、その評価額を算出する際に固定資産税評価証明書を添付する場合があります。
土地に関しては・・・・・
路線価図に記載がない場合の土地、農地、山林に関して固定資産税評価額を基準に、負担調整措置を施したうえで評価額を算定します。
家屋に関しては・・・・・
原則、固定資産税評価額が課税標準額となります。
評価証明書の取得方法
固定資産評価証明書の発行は市区町村役場で行っています。自ら出向いていき、窓口にて交付してもらうことも出来ますし、郵送で送ってもらうことも可能です。
また、取得可能なのは基本的に固定資産の所有者本人になりますが、委任状があれば第三者でも取得することが可能です。固定資産の所有者の同居親族、代理人、相続人、借地人、借家人などがそれにあたります。その際は身分証明書の他に、別途委任状が必要です。委任状は市区町村によって様式が定められている場合と、記載に必要な事項のみ定められている場合があります。その点においては市区町村によって異なりますので、申請に出向く前に、提出物を含めて何が必要か確認しておきましょう。
固定資産評価証明書取得時に必要なもの
- 身分証明書・・・・運転免許証、パスポート、マイナンバー、健康保険証など。
- 納税通知書・・・・直近のものになります。
- 委任状・・・・・・代理人が取得する場合。
- 売買契約書、登記簿謄本・・・不動産を新たに売買により取得した場合。
- 戸籍謄本・・・・・相続の場合、相続する不動産の所有者の死亡が確認出来、且つ、相続関係がわかる書類が必要となる為、一般的に所有者の戸籍謄本になります。
さいごに
固定資産評価証明書は固定資産税、都市計画税の日割り計算時、また登記費用の算出時にも用いられる証明書です。不動産売買契約時に必要な場合は、すみやかに取得しましょう。