マイホームの終活を考える。残された家族がもめないためにやるべきこと

「終活」という言葉が定着するようになり、書店ではさまざまなエンディングノートが販売されるようになっています。家族同居が当たり前のことではなくなり、核家族化が進む中、亡くなった後に残された家族に迷惑をかけたくないと考える人が増えているのです。
そんな中、特に気にかける人が多いのが、マイホームの終活です。一歩間違えば、残された家族がもめてしまったり、厄介ごとだと考えかねない不動産のこと。ここでは、マイホームの終活について考えていきます。

 

マイホームの終活には、2つの思いが交錯する

マイホームの終活が難しいのは、2つのことを両立しなければならないことにあります。

ひとつは、家族との思い出に囲まれながら、できるだけ最後まで住んでいたいという思い。もう一つは、残された家族に迷惑をかけたくないという心配でしょう。自分が亡くなった後も配偶者には自宅に住み続けてもらいたいという場合も、一人暮らしをしていて自分が亡くなった後は自宅がなくなってもいいという場合も、やるべき終活をしておけなければ苦労するのは残された人です。まずは、このあたりから考えていきましょう。

 

残された家族がもめる理由は「お金」であることがほとんど

長年住み慣れた家、そこにはたくさんの家族の思い出があり、できれば最後まで住んでいたいと思う人も多いものです。でも、そのためには整理しなければいけない問題があります。ひとつは、自分が亡くなった後、残された親族がもめないようにしておくこと。そして、もうひとつは、片付けや処分に手間をかけないことでしょう。

特に、遺産相続でもめるところはたくさんあります。「もめるほどの家ではない」という人も多いのですが、実際には数百万円でもめ、絶縁状態になっている人もいますので、このあたりはシビアに考えておく必要があります。

 

法定相続はどうなっているのか?

まずは法律を見ていきましょう。あなたが亡くなった時に所有していた不動産を含む財産は、配偶者や子供が相続することになります。遺言状の存在を確認し、それがなければ全ての相続人で分割協議を行うことになります

遺言書がない場合の「法定相続」は、以下のように決められています。

  • 配偶者と子ども1人の場合は、配偶者と子どもが1/2ずつ相続する。
  • 配偶者と子ども2人の場合は、配偶者が1/2、子どもが1/4ずつ相続する。
  • 配偶者と子ども3人の場合は、配偶者が1/2、子どもが1/6ずつ相続する。

これをもう少し、具体的に見ていきましょう。

あなたには、配偶者と子どもが2人いるとします。亡くなったときのマイホームの評価額は3千万、貯金が1千万円、合計4千万円の財産を残したとします。
この場合、配偶者は1/2の2千万。子どもたちは、1/4ずつですから1千万円の相続となります。

このような場合、配偶者はそのまま家に住み続けたいでしょう。ところが、貯金を子どもたちに渡したとしても500万円ずつにしかならず、不足することになります。もちろん、子どもが「それでよい」と言えば問題はありませんが、「相続分をちゃんと欲しい」と主張すれば、家を売らなければならなくなります。

こうなると、配偶者は住む家をなくすことになってしまいます。年老いた状態で相続トラブルにあい、さらに家族と疎遠になってしまうのはあまりに悲惨です。そうならないためには、遺言で「不動産は配偶者が相続する」と明記しておかなければなりません。

 

一人暮らしの場合

では、配偶者がいない場合はどうなるのでしょうか?

家や土地を売却するにしても、必要書類を揃えなければなりません。また、誰かに売ろうと言うことになった場合、家を片付けるのも大変です。その片付け費用に何十万円と費用がかかることもあり、「そんなに費用がかかるなら、できるだけ自分たちで片付けよう」と考えたあげく、精神的なストレスが原因で思わぬトラブルが起こってしまうこともあります。そんな危ない火種は、自分がいるうちに何とかしておきたいと考えるのは当然のことなのかもしれません。

それならばと、住み慣れたマイホームを自分の手で売却してしまい、そのお金を使って余生を生きるという選択もあります。家族に気兼ねなく暮らしたいと、有料の老人ホームに入るのもよいでしょう。また、子どもと一緒に暮らすためのリフォーム資金にするという人もいます。手続きや実務がややこしいマイホーム売却だからこそ、さまざなま選択肢を広く探す必要があると言えるのです。

これらの選択は、一人でできるものではありません。家族が集まる機会に、「自分がどうしたいのか」「家族はどう思っているのか」をじっくり話し合う機会を設けるのがよいでしょう。

 

 

「生前に家を売却し、住む家がなくなってしまうのは不安だが、亡くなった後は家族に家を残す気はない」と言う人は、リバースモーゲージという選択ができることがあります。これは、自宅を担保にお金を借り、亡くなった後に自宅を売却して現金化するし、それを使って一括返済するローンです。

リバースモーゲージは、自宅の担保価値に応じて借りられる額が決定するため、条件のよい不動産しか対象になりませんが、一括返済したときに貸した金額より売却した金額の方が多い場合、その差額は家族に支払われます。逆に、自宅を売却しても借りたお金を返済できない場合でも相続人に請求が行かない「ノンリコースタイプ」と呼ばれるものも登場しています。これであれば、これも新たな選択肢のひとつと言えるでしょう。

リバースモーゲージは、各都道府県の社会福祉協議会が行うほか、銀行や信用金庫もサービスを提供するようになってきました。自分の生活を安定させつつ、相続後の自宅がらみの手続きをできるだけ簡素にしたいと言う人が選ぶケースも出てきてますので、一度相談してみるといいかもしれません。

 

終活は、残された家族がずっとよい関係でいるためにやるべき、最後の仕事。自分の思いと家族の考えを両立させながら、ベターな落としどころを探るようにしてください。

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