物件購入前の調査で大家さんがチェックするべき3つのリスク要素

大家さんは、物件入手段階でのちょっとしたリスクの見落としが、不動産投資にとって命取りになることがあります。

そこで、物件調査の際にチェックしておくべきリスク要素の洗い出しについて、株式会社オーナー・インテリジェンス代表取締役で賃貸力マーケットアナリストの雨宮憲之さんに教えていただきました。

 

近隣の迷惑住人のタイプと存在の確認方法

物件の現地調査の際に、ほとんどの投資家の方がやっていないことに「近隣の迷惑住人」の存在のチェックがあります。

以前、関西のある地方に「騒音おばさん」という人がいました。ラップもどきの節回しで大声を出して、近隣住民に、嫌がらせ行為を働いていました。もし、こんな迷惑住人の騒動に巻き込まれたら、本当に面倒なことになります。

■近隣の迷惑住人 4タイプ

「近隣の迷惑住人の存在」といっても、いろいろなタイプがあります。

  • ゴミ屋敷の住人として、周辺環境を悪化させている
  • 騒音を起こして、近隣住民に迷惑をかけている
  • カラスの餌付けをして、フン害やゴミ置き場荒らしを発生させている
  • 何十匹もの犬や猫を勝手に飼育し、面倒を見られなくなっている

など、多岐にわたります。

それでなくとも入居者獲得が難しい時代になっているのに、賃貸のお客さんが内見に行ったら、物件の周りがカラスだらけ。エントランスもフンだらけで汚れていたら、完全にアウトです。また、運よくお客さんが入居しても、長続きせずに、退去されてしまうのがオチです。

 

存在確認は、近隣住民に聞くこと

こんなことは絶対に避けなければなりません。そのためには、事前の調査が大変重要です。住民や不動産業者でヒアリング調査を行うことによって、このリスクを格段に減らすことができます。そして一番大切なことは、

あなたの物件のそばに、

「迷惑住人」がいるかもしれないという前提で調査を進めること。

つまり、地元の不動産業者や周囲の住民に聞いてしまうことです。

この「近隣の迷惑住人」というポイントは、言われれば「そうですよね」という話です。でも、常に自分でこの意識をもっていないと、調査を行う際に、完全にスルーしてしまうポイントでもあるのです。

 

東京23区内にもゴミ屋敷はいっぱいある

テレビなどでゴミ屋敷の問題が報道されていることがありますが、意外なほどに身近に起こっています。アパートやマンションを購入する場合、近隣に〝ゴミ屋敷〟がないかどうかをしっかり調べておくことが重要になります。

せっかくセンスのいい物件を手に入れても、周囲にゴミ屋敷があると、入居者がすぐに退去してしまう可能性が高まってしまいます。そうならないためには、購入前に手間暇を惜しまず、周辺調査を徹底しておくことです。

物件の近くにゴミ屋敷があると、ときどき鼻をつく悪臭が漂ってきます。夏場になると、多くの害虫が発生して、近くの家々まで被害が及びます。大家さんが、ゴミ屋敷の存在をつかめず、何で入居者がすぐに退去してしまうのか、理由が分からなかったというケースもあります。

 

ゴミ屋敷は地図に載っていない

都市地図などに掲載されている火葬場などの忌避施設やゴミ焼却場などの〝迷惑施設〟と言われるものについては、地図などを使って事前に調べる投資家の方がいらっしゃいます。

でも、ゴミ屋敷は地図には載っていません。

だから、自分の足で見つけなければなりません。

 

ゴミ屋敷の住人が攻撃的なことも

さらに、ゴミ屋敷の住人が攻撃的な性格の場合、周囲の物件を入手してしまった投資家の被害はさらに甚大です。

数年前に東京のある区でありました。問題の住人が繰り返し、庭で自分の汚物を煮詰めるという行為に及びました。この地域では、あまりにも悪臭がするために、すぐそばの商店街で閉店に追い込まれる店舗が増えるという事態に陥ってしまいました。

現地での周辺調査をおろそかにすると、こんな恐ろしいことも待っているのです。

朝日新聞 夕刊 2006年7月10日付

 

 

賃貸に有利とされるプロパンガス物件の落とし穴!

2017年4月に都市ガスの自由化がスタートしましたが、賃貸経営においては、「都市ガスとプロパンガスのどちらが有利なのか」という点が、昔から大きなポイントとなっています。

カリスマ大家さんの書かれている書籍などの影響で、一般的には、賃貸経営を行ううえでは、プロパンガスの方が有利と考えられています。その理由は、プロパンガスの場合、ガス設備や器具のメンテナンスで、大家さんがガス会社からいろいろな便宜を図ってもらえるからです。

私の物件もすべてプロパンガスを使っています。確かに、給湯器が故障して交換しなくてはならない時に、無料や低額で交換してくれていたりします

 

入居者のガス料金が安く設定されている場合、大家さんの便宜がないことも

しかし、有利な条件を受けられない物件もあるので注意が必要です。

例えば、入居者のガス料金が安く設定されている場合、大家さんの便宜がないこともあります。そのため、物件購入の際に、売り主さんに入居者のガス料金に加え、大家さんが受けられるメリットなどガスの供給条件を聞いておくことが重要です

 

プロパンガス料金にはバラツキがある

プロパンガス料金は、どの会社も、基本料金と、使用量に応じて課金される従量料金から構成されているのは同じですが、料金は自由化されバラバラです。関東地方でも、基本料金が1500円~1800円、従量料金が1㎥あたり、300円~600円とかなり違います。そして、ガス会社の決定も、料金設定の交渉権も大家さんが持っています。

入居者が支払う料金の設定が低いと、ガス会社の儲けが減りますので、大家さんへのメンテナンス無料サービスなどができなくなってしまいます。逆に、入居者の設定料金が高ければ、大家さんはガス会社から大きなメリットが得られますが、入居者からは、料金が高いとクレームが来るおそれがあります。

入居者も大家さんもメリットを受けられるように料金設定するバランスが重要になります。

 

プロパンガスと都市ガスを選択できる地域で注意すべきこと

また、都市ガスもプロパンガスも選べる地域の物件は少々注意が必要です。

カリスマ大家さんの中には、中古物件を買った場合に、都市ガスだったら、プロパンガスに変えてしまった方がいいと言っている方もいますが、そう簡単なものではありません。というのは、

賃貸のお客さんの中に、「プロパンガスは高いので、都市ガスの物件がいい)という方が一定数いるのです。

ファミリー向け物件の場合は、賃貸物件を選ぶ際に、家計をやりくりする奥さんが「都市ガスの方が経済的だ」いう意識を強くもっていることが多いのです。

つまり、

メンテナンス費用の点で言えば「プロパンガスが有利」、

客付けの点からは「都市ガスの方が有利」

となるのです。

 

不動産業者に都市ガス希望者の比率を聞く

私が、都市ガスとLPガスの両方の供給がある地域のエリア調査を実施するときには、周辺の客付け不動産業者で必ずヒアリングをしています。いろいろな話を聞く中で、「光熱費の点から、都市ガス物件を希望する方は、来店されるお客さんのうち、どのくらいの比率でいらっしゃいますか」と質問しています。

私の経験上、ガスの種類を気にする方の比率は、2割~3割くらいです。

今後、ガス供給の混在地域では、都市ガス業者が、入居者獲得マーケティングの点から攻めてくるかもしれません。「経済的な都市ガス物件です」のようなツールを製作して大家さんに提案してくるかもしれません。あなたのプロパン物件の隣のアパートにこんな看板が立つかもしれません。これを見た内見者は、お隣のアパートを選択するかもしれません。

 

なんとなく狭く感じる和室は畳のサイズに理由がある

最近、和モダン調のおしゃれな和室の良さが見直されていますが、昭和の時代に建てられた古い木造アパートなどの和室は、ただ古臭い印象で、お部屋探しのお客さんからは、相変わらず不評です。

ただ、高利回り物件を探されている投資家の方の中には、一定数築古物件の掘り出しものを探されている方がいます。そんな築古物件の和室には注意が必要です。

 

狭いと感じたら計ってみること

いろいろと見ていると、同じ広さとされるお部屋でも、何となく広く感じたり、狭く感じたりすることがあります。もちろん、天井の高さや内装の色などによって、印象が変わる場合もあるのですが、実は、同じ6畳間や8畳間であっても、畳の大きさが異なり、本当に広さが違う場合があるのです。

我々は、基準は一つと決めてかかっていますが、

もし狭いと感じたら、自分の感覚を信じて測ってみてください。

 

畳の規格いろいろ

もともと畳の規格を紹介します。

  •   関東や東日本で採用されている江戸間(880㎜×1760㎜)
  •   関西など西日本で基準となっている京間(955㎜×1910㎜)
  •   名古屋を中心とした中部地方で使用されている中京間(910㎜×1820㎜)
  •   公団住宅などの賃貸住宅で使われている団地間(850㎜×1700㎜)

6畳間で考えると、京間であれば10.9㎡もあるのに、団地間になると8.7㎡です。同じ6畳間でも2.2㎡も差があるのです。

最近は、新建材の普及で、畳のサイズのバラツキは少なくなりました。江戸間サイズに統一されてきています。ただ、団地間の畳はまだ使用されているようです。

実測して本当に狭かったら、内見に訪れた賃貸のお客さんも同じ印象を持つ可能性が高いです。築古物件を購入する場合には注意が必要です。

 

※本コラムは、2016年10月10日配信の満室経営プレミアム 賢人コラムから抜粋・加筆・修正したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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