賃貸不動産経営管理士とは?不動産業における役割と資格の取得方法
- 2019/9/25
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宅建士や不動産鑑定士は知っているけれど、賃貸不動産経営管理士は聞いたこともないという方が多いのではないでしょうか。民間資格ではあるものの、不動産の賃貸管理業務において、様々な業務を遂行できる権限を得ることが可能です。ここでは、賃貸不動産経営管理士の不動産における役割や資格の取得方法について詳しくご紹介します。
賃貸不動産経営管理士とは
賃貸不動産経営管理士とは、賃貸不動産管理の専門家として、高度な専門知識と倫理観を有していることを証明する資格です。賃貸不動産経営管理士協議会が同資格の試験を実施しています。賃貸不動産管理の業務には、特定の資格を持たなければ遂行できない業務があります。
平成28年9月に賃貸住宅管理業者登録制度が改正され、賃貸不動産経営管理士が遂行できる業務が定められました。そのため、同資格の有用性は今後も高まっていくことが期待されています。
賃貸不動産経営管理士の不動産業における役割
賃貸不動産経営管理士が不動産業において、どのような業務を遂行できるのか詳しくみていきましょう。
家賃や敷金の受領
入居者から家賃や敷金を受領する業務を遂行できます。金銭に関わることは、専門知識だけではなく正しい倫理観を持つ人物が担当しなければなりません。賃貸不動産経営管理士であれば、金銭を扱う業務に適しています。家賃や敷金を回収できない場合の入居者への対応、大家への連絡など、複数の業務を遂行します。
賃貸借契約の更新
賃貸借契約書を更新する際には、書面の作成と交付が必要です。期限までに提出されるように、適切な文書を作成し、正しく交付しなければなりません。賃貸不動産管理における重要な役割と言えるでしょう。更新時には、入居者から家賃の交渉を持ちかけられるケースもあるため、空室リスクや予算を踏まえた論理的思考による対応が求められます。
賃貸借契約の終了
賃貸借契約を終了する際には、原状回復や敷金の返還・充当など、様々な業務を行います。ガイドラインを尊守し、適切な形で敷金から充当しなければ、入居者から訴訟をおこされる恐れがあります。また、場合によっては入居者と費用面の交渉が必要となり、双方にとってベストな位置に着地できるような対応が求められるのです。
賃貸不動産経営管理士であれば、このような難易度が高い業務でも適切に遂行できます。
重要事項説明と記名押印
賃貸借契約を締結する前に、重要事項説明を行う必要があります。重要事項の説明は、不動産関係の有資格者の中でも一部の人しか行えませんでした。現在では、賃貸不動産経営管理士も重要事項説明と記名押印の業務を遂行できるようになっています。
管理受託契約書への記名押印
管理受託契約書への記名押印も賃貸不動産経営管理士が遂行できる業務です。管理受託契約書とは、大家が管理会社に対して「この物件の管理を任せる」ことを契約するための書類で、賃貸不動産管理において最も重要な業務と言えます。
管理事務の説明
管理事務やサブリース契約などの説明業務を遂行できます。特に、サブリース契約は宅地建物取引士による重要事項説明の義務がないため、賃貸不動産経営管理士による説明がメインとなるケースも出てくるでしょう。
定期的な管理事務の報告業務
大家に対しては、定期的に管理事務の報告が必要です。管理物件でトラブルは起きていないか、家賃や敷金、礼金などは問題なく回収できているかなど、物件を管理する身として定期的に大家へ報告しなければなりません。問題が起きている場合は、どのように対処・対策していくのか、問題解決の進捗状況などを伝える必要もあります。
十分な説明ができていないと、大家との信頼関係が崩れ、契約解除につながる可能性もあるのです。このように、重要な業務も任されます。
賃貸経営に関する提案
予算計画書の作成や大規模修繕計画の提案など、賃貸契約に関わる提案を行います。直近で得られる利益だけではなく、長期的な戦略を考え、リスクを踏まえた提案が必要です。不動産投資の豊富な知識を持たなければ務まらない業務と言えるでしょう。
賃貸不動産経営管理士になる方法
賃貸不動産経営管理士は、不動産業界で働く人が必要とする資格ですが、不動産投資をしている方にもおすすめです。取得しておけば不動産投資の予備知識を得られます。また、今後不動産業界で働く予定がある場合は、取得しておくことで給与アップも期待できるでしょう。
それでは、賃貸不動産経営管理士になるには、どのような条件を満たせばいいのか、受験要件や試験形式、合格率などについて詳しくご紹介します。
受験要件と登録要件
受験要件は定められておらず、誰でも受験できます。賃貸不動産経営管理士の試験に合格し、次の条件を満たせば、登録が可能です。
- 宅地建物取引士に2年以上従事または従事していた
- 宅地建物取引業、不動産管理業、不動産賃貸業、協議会構成団体の会員・従事者・協議会が認めた者を「協議会が認める賃貸不動産関連業務の従事者」と定め、2年以上従事または従事していた者
なお、2つめの登録要件における「協議会構成団体」とは、日本賃貸住宅管理協会、全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会の3団体を指します。つまり、全く不動産業に関わったことがない場合には、賃貸不動産経営管理士に登録できません。
出題範囲と試験形式
試験形式はマークシート方式で、4つの選択肢の中から適しているものを選びます。合計40問が出題されますが、2020年から50問となります。
出題範囲は次のとおりです。
- 賃貸管理をするべき理由や役割と社会状況を絡めた問題
- 賃貸不動産経営管理士の役割や存在意義に関する問題
- 賃貸住宅管理業者登録制度に関する問題
- 管理業務の受託に関する問題
- 借主の募集方法などに関する問題
- 賃貸借契約に関する知識を試す問題
- 建物や設備に関する問題
- 企画立案や税金など不動産賃貸業のサポートに関する問題
試験実施日
2019年の試験実施日は、11月17日(日)の13:00~14:30です。ただし、2020年からは、試験時間が120分となります。問題数も増えるため、1問にかけられる時間が大きく延びたわけではありません。
試験会場
試験会場は、札幌、盛岡、仙台、大宮、千葉、東京、横浜、金沢、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、高松、福岡、熊本、沖縄の全国17会場です。近くの試験会場で受けられるため、交通費を抑えられます。
賃貸不動産経営管理士の合格率
平成30年の申込者数は19,654名、受験者数は18,488名、合格者数は9,379名です。合格率は、50.7%です。合格率は年々50%前後で推移していることから、勉強さえすれば合格は難しくないと言えるでしょう。
また、合格者年齢は最年少が18歳、最高齢は81歳、平均40.2歳であることから、不動産賃貸業の中でも中堅クラスの人が主に受験していると考えられます。
まとめ
賃貸不動産経営管理士は、賃貸不動産業の専門家として活躍することが期待されています。重要事項説明や金銭に関わる業務など、様々な重要業務を遂行できるため、これから知名度が上がっていくことでしょう。不動産投資をしている方にとっても、賃貸不動産経営管理士の資格を取得しておくことは、予備知識の充実につながるため、取得を検討してみてはいかがでしょうか。