施設賠償責任保険とは?補償内容から適用されるケースまで解説
物件の維持管理は、管理会社に任せている大家さんが多いのではないでしょうか。しかし管理会社の業務は、あくまでも維持管理です。そのため、建物の問題によって事故が起きても、管理会社には被害者への示談交渉や裁判手続きなどをしてもらえません。そこでおすすめなのが、入居者や周辺住民に被害を与えたときに備えるための「施設賠償責任保険」です。
ここでは、施設賠償責任保険の補償内容や、保険金が支払われないケースなどについて詳しくご紹介します。マンションやアパートなどの大家さんは、ぜひ参考にしてくださいね。
施設賠償責任保険とは
施設賠償責任保険とは、建物の欠陥や管理の不備などで起きた事故による損害を補償する保険です。
他人にケガをさせたり他人の物を壊したりした場合、損害賠償請求をされる場合があります。与えた被害の程度によっては、数百万~数千万円もの損害賠償金を支払うことになるでしょう。そのため、施設賠償責任保険に加入し、万一の事態に備えることが大切です。
施設賠償責任保険の補償内容
では早速、施設賠償責任保険の補償対象について解説します。
1.事故による損害賠償金
施設賠償責任保険は、契約で定めた金額を上限として、損害賠償金の支払いを補償してもらえる保険です。
例えば、1,000万円まで補償する保険に加入している場合に400万円の損害賠償請求をされても、全額を保険金でまかなえます。
構造上の欠陥や管理の不備などで起きた事故によって他人にケガをさせたり他人の物を壊したりした場合、物件の所有者は損害賠償を請求される可能性があるため注意しなければいけません。このときの損害賠償額は、損害の程度や被害者の収入など、さまざまな項目を踏まえて決まります。
多額の損害賠償請求は今後の人生を左右しかねない事態のため、施設賠償責任保険で十分に備えることが大切です。
2.事故が起きたときの応急手当にかかる費用
事故で被害者がケガをしたときの応急手当や護送にかかる費用も、施設賠償責任保険で補償してもらえます。
応急手当や護送にかかる費用は、数万~10万円程度です。
3.裁判にかかる費用
施設賠償責任保険は、裁判手続きや弁護士への相談費用、着手金、成功報酬などの費用も補償してくれます。
損害賠償請求をされた場合、示談するか裁判で争うかを決めます。裁判で争う場合は弁護士に代理人を依頼することが一般的ですので、施設賠償責任保険に加入していれば費用面も安心ですね。
4.再発防止対策にかかる費用
再発を防ぐための対策を立てるときにかかる費用も、施設賠償責任保険が補償してくれます。
例えば、廊下が滑りやすいために入居者が転倒してケガをした場合は、滑りにくい素材へリフォームすることが大切です。この場合の費用はリフォーム箇所や施工方法で異なりますが、大体10万~50万円程度は必要でしょう。
保険金が支払われることでリフォームに十分な費用をかけられるため、再発を防げる可能性が高まります。
ケース別「施設賠償責任保険の必要性」
施設賠償責任保険は、全ての大家さんに必要なわけではありません。
ここからは、「必要性が非常に高いケース」「必要性が高いケース」「必要性が低いケース」の3つに分けてご紹介します。
必要性が非常に高いケースとは
施設賠償責任保険の必要性が非常に高いのは、不特定多数の人が出入りしたり、資材や工具など危険な物を保管していたりするケースです。
マンションやアパートでも、企業や個人のオフィスとして利用できる場合は不特定多数の人が出入りします。人の出入りが多ければ多いほどに事故の発生リスクが高まるため、施設賠償責任保険への加入を前向きに検討しましょう。
必要性が高いケースとは
不特定多数の人が出入りしなくても、マンションやアパートの大家さんは施設賠償責任保険に加入した方がいいと考えられます。
マンションやアパートで起こり得る事故でよくあるのは、
- 外壁の落下による歩行者のケガ・死亡
- 破損した床につまずいたことによる転倒
- エレベーターの破損が原因で起こるケガ
- 床が滑りやすいために起こる転倒
- 非常口や避難経路の不備で逃げ遅れたことが原因のケガ・死亡
などです。
損害が発生する原因は1つではありませんので、施設賠償責任保険で十分に備えることが大切です。
必要性が低いケースとは
大家さんが頻繁に物件の状態を調査できるのであれば、施設賠償責任保険の必要性は低いでしょう。
破損や問題のある箇所をいち早く突き止めて修繕できれば、事故を未然に防げます。ただし、絶対に防げるわけではありませんし、破損の発見から修繕までの間に事故が起こる場合もあるかもしれません。
そう考えると、施設賠償責任保険へは可能な限り加入しておくべきといえるのではないでしょうか。
保険金が支払われない5つのケース
続いて、施設賠償責任保険の保険金が支払われないケースについて詳しく見ていきましょう。
ケース1.告知義務や通知義務の違反
保険会社への告知や通知を義務づけられている内容を伝えなかった場合、保険金を支払ってもらえない可能性があります。
契約違反にあたるため、十分に注意しましょう。
ケース2.保険金が他社からすでに支払われている
複数の施設賠償責任保険に加入しており、既に他社から保険金が支払われている場合は、重複して保険金を受け取れない可能性があります。
ただし、他社から受け取った保険金から損害額を差し引き、残額を補う形で保険金を受け取れる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
ケース3.自分や同居親族が損害を受けた
施設賠償責任保険は、他人が受けた損害によって発生した損害賠償金や裁判費用などを補償する保険です。
そのため、自分や同居家族、親族が受けた損害は補償の対象外となります。
ケース4.天災によって生じた損害
地震や台風などで起きた損害は、補償の対象外です。
ケース5.その他
保険会社によっては、上記の他にも保険金を支払われないケースがあります。
例えば、
- 施設の工事によって起きた損害
- 雨や雪の吹き込みや侵入によって起きた損害
- アスベストやその代替物質が持つ発がん性による損害
- 他人との特別の約定によって加重された賠償責任
などです。
保険金の支払い条件は契約書に記載がありますので、事前に確認しておきましょう。
また、特約を付けることで補償範囲が広がる場合もあります。ただ、特約を付けるほどに保険料が高くなるため、十分に検討してください。
施設賠償責任保険の補償額を決める方法
中には、施設賠償責任保険の補償額をできるだけ抑えたいと思う方もいるでしょう。しかし、補償額が低すぎると加入のメリットが少なくなります。
例えば、施設の不備が原因で結果的に他人を死亡させた場合、数千万円の損害賠償を請求される可能性があります。この場合、補償額を1,000万円に設定していて3,000万円の損害賠償請求をされると、2,000万円は足りません。これまでせっかく月々の保険料を支払ってきたのに、結局は2,000万円ものお金の用意が必要になるのです。
十分に備えたければ、1億円以上、もしくは無制限の施設賠償責任保険に加入しましょう。
まとめ
施設賠償責任保険は、マンションやアパートの大家さんなら加入を前向きに検討することをおすすめします。損害賠償請求をされたり裁判に持ち込むことになったりした場合、多額の費用がかかるからです。施設の維持管理や修繕にかかる費用などの負担に加え、さらに損害賠償請求までされると、資金繰りが難しくなる可能性もあるでしょう。
不動産経営のリスクを抑えるためにも、施設賠償責任保険の加入を前向きに検討してください。