資金調達のプロに聞く!不動産投資への融資が厳しい今、銀行へどうアピールするのがよいか? ~望月テツ氏インタビュー 

  • 2020/1/31
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不動産投資への融資が厳しくなっていると言われる昨今。
どのようにすれば銀行融資を受けることができるのか、またそもそも、銀行で行われる融資はどのように審査が行われているのか。知りたいことがいろいろあるのではないでしょうか。

そこで今回は、融資や事業型ファンドのプロフェッショナルとして有名な望月テツ氏に、今知るべき銀行の思考や、それに対抗する手段をインタビューしてきました。


融資実行までの流れと日数。支店決済の上限額は1~3億

――不動産投資家の関心はやはり融資ですが、どのように審査されているのかがわかりません。まずは、銀行内部での流れを教えてください。

不動産融資のお申し込みをいただくのは銀行の窓口ですが、まずは支店の融資係や融資課といったところで稟議をし、その後、「審査部門」と言うところへ行きます。支店長さんの権限で融資できる金額であれば、そこで完結しますが、それを超える金額になると本部での審査に進みます。

申し込みのときには「申込書」を提出いただきますが、後日、銀行から追加の資料を要求されたりして、資料をそろえてから正式な稟議となります。

その後、一応現地調査をすることになっています。省く場合もありますが、ここで確かに間違いないと言うことになれば融資の決裁が下り、融資実行の日程が決まります。融資実行の前には、「証書貸付」と言って、銀行と借主さんで、「金銭消費貸借契約書」を交わします。

融資実行までの期間は、初めて取引する銀行さんだと、申し込みから最低でも3週間は見ておいたほうがいいでしょうね。今は審査期間が長めになっているようです。

――支店で決裁できる金額の上限はどれくらいですか。

これは本当にまちまちなのですが、支店長さんが権限を持っているのは1億円から、時には3億円ぐらいの場合もあります。

――支店でOKが出た後、本店で覆ることはあるのでしょうか?

ありますね。やはり、本店の審査部は審査をすることがメインの業務ですから、営業部よりは厳しい目で見られます。融資をするというより、どちらかというとブレーキ役のようなイメージかもしれません。

――購入したい物件があり、融資特約付きで契約した場合、不動産仲介会社から、「内諾がとれたら教えてください」と言われます。この内諾とはどの時点のことなのでしょうか?

内諾の定義は、結構微妙ですよね。例えば、権限者である支店長さんからOKがもらえていうならば内諾と言えるでしょうね。支店長決裁ですから。

――なるほど。でもそのあと、覆ることがあるのですよね?

そうです。現実問題として、契約の稟議も下りて、銀行の中の稟議も決裁され、「融資します」ということになって、銀行と金銭消費貸借の契約書も交わしたのに、それでも融資実行日当日に入金されないことはゼロじゃないですよ。

――ええ!?当日にそんなことってあるのですか!

はい。ですから、「入金されるまでは安心できない」くらいに思っておいたほうがいいのです。

都市銀行、地方銀行、信用金庫。その違いと融資申込先の選び方

――銀行には都市銀行、地方銀行、信用金庫とありますが、それぞれの違いはどういったところでしょうか?

違いのひとつは、都市銀行や地方銀行など、「銀行」と名のつくところは株式会社だということです。そして、信用金庫は組合組織です。協同組合と呼ばれ、どちらかというと地域に貢献するというのが全面に打ち出されています。基本的には会員さん向けの仕事をすることになるので、出資金を払う必要があります。

――他に違いはありますか?

規模の違いがあります。都市銀行、いわゆるメガバンクは一番資金量が多いので、当然貸せる額も大きくなります。次に地方銀行さんで、それから信用金庫さん。もちろん信用金庫さんでも大きいところもありますがね。

この規模は借りるときにも影響しています。メガバンクは資金量が大きいので、担当のノルマ、分かりやすく言えば目標があり、ボーナスに関係してきますが、その目標額が大きいんです。大きいということは、大きい物件には関心を示すけど、小さい物件には関心を示さないことになります。

なぜかというと、稟議をする手間は、金額が大きかろうが小さかろうがあまり変わらないんです。つまり、目標を達成するためには大きいほうが、効率がいいと判断されます。ですからメガバンクさんは、よほど物件の所有が増え追加で融資をお願いするという方や、すでにその銀行と取引がある方以外は、初めての融資先としてあまりおすすめではないです。

――不動産投資を始めるはじめの一歩としては、融資を受けにくいということですね。

そうなんです、ですから、最初なら地銀さんがいいと思います。もちろん信金さんでも対応してくださるところもありますが、「うちは資金量があまりないので、不動産投資向け融資は限界があります」と言われる場合もあります。

あともうひとつ。都市銀行や地方銀行は、営業エリアが決められていないんです。つまり、地方の銀行さんが東京や神奈川に支店を構えることができます。ですが、信用金庫は広域での営業ができません。つまり、不動産投資をする際、地方の物件で信用金庫さんの店舗から離れていると融資の対象外となります。

――なるほど。今信金さんでも遠方に融資しているところがあると耳にしたのですが。

それは合併しているケースですね。営業外のエリアの信金さんと合併、または業務提携している場合は、対応可能なケースもあります。

銀行の思考パターンを理解する。下手にせかすのはNG

――次に銀行員の方の思考パターンについて教えてください。何を重視するかということです。

前述の通り、メガバンクさんはなるべく手間をかけずに効率よく目標を達成したいということがあります。2番目として、融資して、こげついてしまっては困るなというのがチラッとあります。

――チラッとなんですか!

そうですね。営業からすると、とにかく成績をつくりたいので、融資することが優先になります。

――他にありますか?

3番目として、急かされると不安になる人たちがいるので注意ですね(笑)

金融機関全般に当てはまることですが、担当者から連絡が来ないと、「その後どうでしょうか」とたずねると思うのですが、あまりに頻繁にやると、「お金が回ってないのでは?」と心配するようになります。「資料は黒字だったけど、実はそうではないのかもしれない」とか、「不動産の収入は入ってきても、他で出て言っているのでは」とかね。ここの駆け引きが難しいところです。急かしてもよいのですが、上手くやらないといけない部分です。

――なるほど、やみくもにせかすと、勘ぐられるということですね。

そうなんです。「今月の月末までに」と言っていたのに、平気で翌月にすることもありますね。「ちょっと稟議が間に合いませんでした」などと、結構むちゃくちゃなこと言われるんです。また、「自己資金を融資金額の10%用意しました。それで融資しましょう」となっても、無理をして自己資金を集めたのではないかと思われ、返済能力を疑われることもあります。

わかりやすく言うと、やみくもにせかさないことがポイントとなります。担当者さんによってだいぶ違いますので、その方の資質を見つつというところもあるのですが・・・。

融資されやすい物件、されにくい物件とは?

――次に、銀行さんが嫌う物件、好む物件はあるのでしょうか?

やはり売りにくい物件というのは、ちょっと嫌かもしれませんね。もちろん、違法建築や容積オーバーは問題外です。他にも駅から遠いとか。

ただ、物件の善し悪しは二の次です。最優先は、その人の属性。要は、返済できる能力、あるいは収入があるかどうかが第1。極端に言うと、その方に返済能力があれば、物件がどうでもいいということです。

――では、積算法や収益還元法とか言いつつも、結局は属性ということですね。

銀行についてはそうですね。オリックスさんのようなノンバンクの場合は物件が第1なんですけどね。銀行に対して一番強いのは地主さんや資産家。あとは年収が高く、勤続年数がそこそこあるサラリーマンとOLですね。

――じゃあ、年収はそこそこで、これから不動産投資始める状態で実績はない。なおかつ物件が駅から遠いとなると難しいということですか?

その状況だと今はかなり厳しいですね。
属性を上げるのはなかなか難しいですが、すでにいくつか物件をお持ちの方であれば、キャッシュフローをよくするようにしてください。

アポイントは事前に取るべき。銀行では融資担当者か確認を

――では、いよいよ銀行へ面談に行くとき、アポイントは必要でしょうか?

突然訪ねていくこともできます。ただ、最近は事前にアポを取らないと会ってくれないことがあります。あるいは、ご担当の方も忙しく、席にいないこともあるので、やはり電話などでアポを取ったほうがいいですね。

ただ、それでも、初めての人からいきなり融資の話となると警戒します。なぜかというと、「他行で断られてうちに来たのではないか」と考えるからなんです。ですから、そこは相手の顔色を見ながら判断するようにしてください。

――他にポイントはありますか?

そもそも、不動産融資に慎重になっていると、電話の段階で断られることもあります。そこで一番有効なのは、人の紹介となります。「この人からの紹介だからお会いしましょう」というのは金融業界では結構あることなんです。ですから、可能であれば紹介してもらうのがいいでしょうね。

あとは、実際にアポを取って訪ねたときに名刺交換をすると思いますが、その方が融資係かどうかを確認する必要があります。営業の人が融資をやっているケースもありますが、それは稀。面談する人が融資係ではないと全然話が進みませんからね。窓口に行くときも同じで、融資担当か探ってみて、違った場合は、「融資係の人にちょっとご挨拶だけしたいのですが」と伝えて名刺交換するのも1つの手ですね。

面談の秘訣。資料の作成と想定問答のロールプレイングが重要なわけ

――面談のときには物件資料などを持っていったほうがよいのでしょうか?

実際に見せるかどうかは別として、ひとまず持っていくようにしてください。というのは、「あとで資料を送ってください」というケースや、忙しいから見てられないという雰囲気のときもあるからです。また、聞かれる質問としては、不動産投資にどれぐらい経験があるか。経験のある方とそうでない方だと全然違いますね。

あとは、なぜうちに来たのかという点。これは遠回しなことも、直接的なこともあります。なぜ聞くのかというと、ほかでさんざん断られまくって仕方なくうちに来たのかを知りたいからです。

逆に言うと、銀行を訪ねるときには、なぜそこの銀行に行ったのかというかという回答を、自分の中で決めておくといいですね。例えば、「長年預金取引している銀行さんなので」とか、「近くなので」とか、「人の紹介」だとか。人の紹介がなければ、「大家仲間から、対応が良く安心してお任せできる銀行さんだと聞いたから」とか。理由を明確にしておくようにします。

――他に持っていくと印象がよい資料などはありますか?

すでに複数の物件をお持ちの方ならレントロールですね。実際、どのように回っているのかを見てみたいでしょうから。そのレントロールは家賃収入だけでなく、どの場所にあって、購入時期、規模感も入れておいたほうがよいです。銀行員は忙しいので、1枚で所有物件の収入や概要が分かるようになっているほうが望ましいですね。あとは他に借り入れがあれば返済予定表も持っていくといいです。

――融資のときにプレゼン資料を持参する方もいますが?

残念ながら、あまり見られないです(笑)

銀行というのは過去の数字しか見ないんですよ。決算だったら決算期、前の決算期末までのところ。そこから先の将来の構想を聞いても右から左に抜けていく感じです。ですから、プレゼン資料よりは、所有物件の管理をしっかりやっていることをアピールしたほうがよいです。「賃貸運営は管理表を作り、数値をきちんと把握しながら堅実に運営しています」と見せるとか。

――では、これから始める人はどうすればよいでしょうか?

物件を買おうとしている理由やエリアのリサーチを語れるほうがいいですね。間違っても、「不動産屋に勧められたから」と言わないように(笑)

とっさに聞かれると、人間って答えに詰まってしまいます。事前に想定問答を作って、自分の中でロープレしておきます。銀行は面談したときに必ず記録をとる組織です。そのため、「あのときこう言った」と記録され、次に会ったときに違う回答だとマイナスな見方をされます。一貫性がないとネガティブな評価になるんです。

――その銀行に定期預金や給与振り込みしたほうが審査のプラス要素になるのでしょうか?

審査については全く関係ありません。その方がご担当とかその支店の印象はよくなるし、コミュニケーションが取りやすくなるという事はあるかもしれません。でも先ほど申し上げたように、営業のセクションと融資を審査するセクションは別ですから。ただ、既に所有物件がある場合、「家賃の収納口座を移しでもいいですよ」というのは駆け引きになるかもしれません。

――銀行さんによっては、金融商品を勧められた方もいるようですが。

勧められた商品を申し込まないと融資に不利なのかもと考える人はいると思います。しかし、本人がもともとやりたかったならともかく、融資に不利になると思ってやるのは意味がありません。

もし万が一、融資担当の方から、「融資の判断材料にする」と言われたら、「それで大丈夫ですか?」と聞いてみるのがよいかもしれません。それは二重の意味があって、「その希望に応えたら融資出ますか」というものと、「それって独占禁止法の優越的地位の乱用に当たらないか」というものです。あなた銀行内で、そんなこと言っちゃって大丈夫ですか、というニュアンスです。

借り換えを検討する際の基準とコツ

――借り換えについて、どれくらいの残高や金利差があると借り換えを検討したほうがよいでしょうか。

絶対の正解はないのですが、一般的には残高が500万円以上、金利差が1%以上あること。また、融資の残存期間が10年以上あること。この3つがそろった場合は借り換えたほうが有利と言われています。

――例えば、金利の高いところで、フルローンで借りている物件がある場合、大きな借り換えメリットがあると思ってネットで借り換え審査をしても、「借り換え不可」と出てることがありますが。

借り換えできないケースはあります。確かに今は、フルローンで対応しているところはほぼありません。最低でも自己資金は10%必要です。さらに、借り換えのときの運営状況ですよね。利回りが取れているかや、そのときの収入状況などを見られます。

ただし、ネットの借り換え審査は、あまり鵜呑みにしなくてよいかと思います。それが駄目だからNOということもないですし、逆に、YESだから借り換え可能ということもありません。1つの目安だと考えるといいですね。

――では、借り換えを進める場合、どのようにすればよいのでしょうか?

借り換えよりも、まずお取引している金融機関さんに金利のご相談をする方が手っ取り早いです。既におつきあいあり、コミュニケーションが取れていて、返済実績も見せているわけですからね。1つの手として、他の金融機関に打診してみて、どれぐらいの金利で対応できそうかを聞いてみて、それを交渉材料にするとよいと思います。

不動産向け融資が厳しい状況は必ず改善される

――いま、融資が大変厳しくなっていると言われていますが、この状況はまだまだ続きそうですか?

残念ながら、しばらくは続くと思います。というのは、地方銀行のS銀行さんやS信金さんがニュースになり、その後、金融庁からいろいろと指導が入りました。金融機関としては、指導は回避したいんです。

例えば、「当行ではこういう改善策をとっています」「このような厳格な審査段階を踏んでいます」「既に融資したお客様に対しても、キャッシュフローが回っているかどうか定期的にチェックしています」「コミュニケーションをとって直接ヒアリングしています」などといった報告をしなくてはいけなくなります。この報告をうまく書けないとなるといろいろ指摘が入るので、各金融機関は慎重にならざるをえないわけです。

しかも、地価が高止まりしています。東京圏はもちろん、大阪も東京並みに上がっていますから、賃貸運営として回らないじゃないかという話になり慎重になってしまいます。ですから、この状況はしばらく続きますね。

――事業融資も厳しいのでしょうか。

いや、そうでもないですね。中小企業が減ってしまうと雇用も失われてしまう。国は将来性がある中小企業さんは何とか残したいと思っています。いわゆる事業承継というもの、あるいは個人の場合で言えば相続。そこに資金を付けようという動きになっています。

資金を付けるとは、事業承継する際に借金があると、その負担が重くなり躊躇してしまいます。そこでお金に困らないように、融資をしやすい仕組みを整えています。そこは不動産融資とは違う部分ですね。

――これから不動産投資を始める方や、これから会社を始めたい人が元気になるお話はないでしょうか。

銀行が融資をしたがっているのは事実です。不動産には慎重にはなっていますが、将来的にずっと排除するつもりはないですし、銀行にとっても不動産融資は大きな金利収入につながるわけです。

また事業融資で言えば、創業したてで、これから伸びていきそうだと見込める場合は、なるべくいい面を見て融資をしようという動きになっています。これも金融庁から、担保とか保証を前提にしない融資にもっていかなきゃ駄目だという風に言われているので、そっちに目が向いています。

今は、銀行が金利収入や手数料収入が減って苦しんでいます。ですので、とにかく融資を増やしていきたいというのは本能的にあるはずなんです。それを考えれば、このままの状況が続くわけではないので、必ずしも悲観的な要素ばかりではありません。

さらに言えば、今後は金融機関にも、どんどん人工知能が導入されてきます。窓口に行かなくても、ネットだけで完結する融資もおそらく増えていくでしょう。そうなると、金額は大きくないかもしれないけれど、融資してもらえる機会は増えてくると思います。

――あまり悲観的になる必要はないと言うことですね。厳しい局面の今は不動産投資の収益性を上げ、銀行さんにアピールできるようがんばります。今日はありがとうございました!

<プロフィール>
早稲田大学政経学部卒業後、農林中央金庫(我が国を代表する投資銀行)やその後に転職した三菱商事の新規事業開発コンサルティング会社で法人融資や事業ファンドのプロフェッショナルとして今日にいたる。
この間、大蔵省出向以来の知見と人的ネットワークにより、金融行政・産業金融にも通じている。三菱商事の組織再編後は中小企業・零細企業専門のコンサルティング会社に加わり、直接指導60社のほか電話、面談で延べ1,500社の資金繰り向上の経験を有す。
その後、独立して現職。

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