賃貸で多い「音」の問題…、プロが防音について教えます!!

隣や上下の生活音に悩みたくはありません。反対にあなたが迷惑をかけている側かも知れません。賃貸マンションやアパートに住む上で、「音」への心配は尽きないものです。
そこで、賃貸でも防音性の高い物件を探すコツや、入居後の工夫で防音性を少しでも高めることのできるアイデアを紹介します。

 

防音性の高い構造

真っ先に気にされる方が多いのは建物自体の防音性でしょう。
構造上、防音性が高いのはSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)とRC造(鉄筋コンクリート造)です。次に鉄骨造(軽量鉄骨・重量鉄骨)、木造と続きます。

「 木造 < 鉄骨 < SRC造・RC造 」 

コンクリートそのものに高い防音性があり、「SRC造・RC造」は外壁にコンクリートを使用するので、外からの音が伝わりにくいのが特徴です。気密性が高く防音性・遮音性に優れるので、道路・駅・学校・幼稚園・保育園・公園などが近い場合にはSRC造・RC造を選びましょう。中でも分譲仕様の賃貸マンションは、通常の賃貸物件よりも厳しい建築基準法のもとに建てられているため、防音性能は格段に高くなります。

勘違いされている方が多いのですが、全てにコンクリートが使用されている訳ではありません。部屋と部屋との間にはコンクリートが使われていない場合もあるので、隣室の音まで防げるとはいえません。
また、気密性が高く防音性・遮音性に優れるということは、裏を返せば湿気が溜まりやすいということです。家賃帯もやや高くなるというデメリットもあります。

骨組みに鉄骨を使用する「鉄骨造」は、「軽量鉄骨」と「重量鉄骨」の2種類があります。

軽量鉄骨は小規模建築物や一般住宅で使用され、鋼材の厚さが6mm以下のものを指します。6mmを超えるときは重量鉄骨と呼ばれ、ラーメン構造(柱と梁を完全に固定した構造)やトラス構造(鋼材を三角形に組み合わせて用いられる構造)などの大規模な建築物に使用されます。
鉄骨造は木造よりも強度があるため、壁や床などを厚くすることができます。よって、木造よりは少しだけ防音性が高くなります。

「木造」は通気性が高い建物です。通気性が高いということは、防音性が低いということに繋がります。

構造面での防音性を簡単に説明しましたが、プロから言わせて頂くと建物の構造自体の防音性はあまり関係ないというのが正直なところです。

全く関係がない訳ではありませんが、いくら防音性が高い物件でも隣の部屋で叫べば聞こえます。壁を叩けば隣に聞こえます。上の階の方がジャンプすれば下に響きます。隣室・隣人や周辺の環境による影響の方が大きいのです。
木造や鉄骨造でも厚いガラスや二重窓になっている場合、壁と壁の間に断熱材がしっかり入っている場合には、防音性がSRC造・RC造よりも高いことがあります。構造だけで防音性は判断できません。

 

構造よりも重要な3つのポイント

上記でも述べましたが、いくら防音性が高い物件でも全く音がしない物件はありません。部屋で叫んだり、壁を叩いたりすれば必ず隣に聞こえます。
ここでは、構造以外に気を付けた方が良い点を紹介します。

隣室との位置関係

音を気にされる方は、隣に部屋がない角部屋、上に部屋がない最上階を選びましょう。家賃は高くなる場合がほとんどですが、数千円で快適な生活が送れるのだとしたら迷わず選んで良いかと思います。

文字では表現しにくい部分もありますが、部屋と部屋との間に共用階段が設けられ、全室角部屋になるよう設計されているアパートもあります。このような物件は、木造でも防音性能はあなどれません。
構造だけで判断せず、不動産会社にオススメ物件を聞きましょう。

小さい子どもがいる家庭、生活リズムが不規則な仕事をされている方は1階の部屋を選んだ方が良いでしょう。子どもが走り回る音は、下の階の方からすると騒音です。朝方や深夜の玄関の開け閉めは隣室どころかフロア全体に響き渡ります。まずは自分自身が迷惑をかけないようにする配慮が必要です。

部屋の間取り

あなたの部屋と隣接する、隣室がどのように接しているのかも重要なポイントです。
壁が薄い物件だとしても、あなたの部屋と隣室の部屋との間がクローゼットや収納になっていれば、分厚い防音壁の役割を果たします。設計上、騒音対策や防音性向上の工夫として、隣室との間にお風呂やトイレがある物件もあります。
自身の部屋だけでなく、アパート・マンション全体の間取りにも聞いてみましょう。

また、これを踏まえれば入居後にも自身の工夫で防音対策をすることが可能です。
音が気になる壁側に本棚を設置するだけで防音性能は上がります。テレビのような音の出る家具を隣室側に置くことも1つの方法です。隣室の生活空間と、あなたのベッドが隣接していないように置くことで、安眠を邪魔されることは少なくなります。

近隣の住民

まずは不動産会社に「どんな人が住んでいますか?」と質問しましょう。個人情報も含まれるので詳しくは答えられませんが、答えられる範囲、あるいはわかる範囲で答えてくれるはずです。隣に騒音を発するモンスター住人がいるとわかっていたにも関わらず、隠していた場合は不動産会社の過失となります。

不動産会社に質問するだけでなく、周辺の環境から想像することも必要です。
保育園・幼稚園・小学校・公園などが近い物件には、付近に「子ども」が比較的に多くいる可能性が高いと想像できます。大学が近いワンルームのアパート・マンションには「大学生」が、飲み屋街の付近では「夜間勤務」の方が当然に多くいます。

そして、以外と盲点なのが家賃帯での客層・客質の変化です。
私の経験上、家賃帯が低い物件は音の問題が起きるリスクが高いです。たとえば、大学が近いワンルームのアパート・マンションでは、家賃帯が低いところに「大学生」が集まります。しかし大学が近くても、家賃帯が高くなるほどに「大学生」が入居している確率は低くなり、音の問題も起きにくくなります。

所得が高い方は、仕事上で責任ある業務を担当されている場合も多いため、私生活においても周囲に配慮している方が多いからです。
家賃帯を少し上げて物件を探すことも、防音への対策になるかも知れません。

 

実際に住んでみないとわからない点が多い

どんなに良い構造・材料・設備・間取りだとしても、音に関しては住んでみなければわかりません。物件を決める前であれば、気になる方は早朝・夜間の時間帯に実際に行って確かめることをオススメします。

次に、アパート・マンションに子どもがどれくらいいるのか、ペットを飼っている方がいるのかなど、不動産会社に確認しましょう。ただ、賃貸は家主の意向によって方向性が180°変わることもあり、ペットがNGだった物件が急にOKになることもあります。

複数の不動産会社から入居を斡旋している物件に起きやすい問題で、もともとペットNGだった家主へ、A不動産会社から「ペットを飼えるなら入居したいお客さんがいる」と連絡があったとします。家主としてはお客さんに入居してもらいたくてOKしてしまうケースがあり、その時点で物件自体がペットOKの物件に早変わりしてしまいます。すると、それを知らないB不動産会社がペットNGを前提として別なお客さんに紹介してしまい、入居してからとんでもないクレームに発展することもあるのです。
将来のことについては不動産会社もわかりません。ペットNGの物件であっても、とりあえず「今は」大丈夫という認識でいた方が良いでしょう。

住んでみなければわからない1番の問題がSRC造・RC造の音の反響です。
私自身が、RC造10階建て、4階の中部屋に住んでいたときの話です。夜23時前後になると定期的に上から楽器を叩く音が…。さすがに堪えかねて、真上の部屋に文句を言いに行きました。ノックする前に念のため玄関ドアに耳を当ててみると、不思議なことに中から音がしません。一度自分の部屋に戻りましたが、叩く音は続いていました。
実は、真上から聞こえていた音の原因は、真上ではなく左上の部屋でした。コンクリートを伝って反響するので、隣室・上下だけの問題ではないということです。

RC造4階建てで、2階・3階から「上がうるさい」とクレームが相次ぎ、原因がなんと1階の工事の音だったという話もあります。
SRC造・RC造は、あくまでも外からの音に対しての防音性能が高い構造です。過度な期待はしないよう、注意してください。

 

まとめ

さいごに、ここまでの話をまとめると、

  • 防音性能は構造・材料・設備・間取りだけでは判断できない
  • 全く音がしない物件はあり得ない
  • 角部屋、最上階、または全室角部屋設計のアパート・マンションが無難
  • 家具の配置で騒音対策が可能
  • 家主の意向の変化、音の反響など、住んでみなければわからない

ということです。あなたが騒音の原因では本末転倒ですので、まずは自分が近隣に迷惑をかけていないか、迷惑をかける可能性があるのか見つめ直しましょう。

関連記事

会員登録・ログインはこちら

最新記事

  1. 限界集落と聞くと、かなり田舎~に限定される話に聞こえますが、実は都会でも、というか、23区内でも限界…
  2. いきなりですが、筆者は関西人です。そして同級生の子どもが、昨年の春、東京に就職しました。 22…
  3. ビルオーナーや一棟マンションのオーナーなどは、持ち物件に防犯カメラを設置したいと考えている方も多いと…
  4. 先日、「不動産投資(大家業)は絶対にすべきではない」と力説する方に出会ってしまいました。不慮の事故み…
  5. 先日、友人と、あるミーティングに参加させられました。テーマは、「資産を増やす」というもの。 た…
ページ上部へ戻る