テレワークが増え住宅に求める条件は確実に変わった。体験者に聞いた現在の家の問題

新型コロナ騒動で大きく変わったことのひとつにテレワークが浸透したことがあります。もちろんコロナの期間だけというところもあるでしょうが、「これを機会に本格的に導入しよう」という企業も多いようです。

こうなると家にいる時間が長くなるわけで、住宅に求めることも変わってきます。地方移住を…というのは極端としても、もっと身近な問題として、住みやすさと同時に働きやすさも重要な条件となるのではないでしょうか。

この記事では、コロナ禍にテレワークを体験した3人の生の声を交えながら、これから求められる住宅の条件について考えていきたいと思います。

テレワークとは?

まずは、テレワークとは何なのか、というところからおさらいをしてみます。

テレワークって何だと思いますか?

私は、以前まで主流だった電話(テレフォン)から出てきた言葉だと思っていました。だから、「今じゃ、テレワークで電話使う人なんていないのにね」と言っていたのですが、実際は違いました。

テレワークとは、「tele=離れた所」と「work=働く」をあわせた造語だそうです。時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を意味するそうです。電話は関係なかった…笑

テレワークでプライベートに変化があった人は6割

では、テレワークを導入したことで、プライベートに変化はあったのでしょうか?

これには、株式会社日本シャルフが行った調査が参考になります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000048506.html

6割もの人が変化があったと回答していますね。「家族と過ごす時間が増えた」「趣味の時間が増えた」「家事・育児や介護を両立できるようになった」など、人生にプラスとなりそうなものが多いのはうれしいことです。

とはいえ、これは数字の上での話。実際には、プラスを感じるためにいくつかの苦労もあったようです。

テレワーク体験者のリアルな声を聞いてみた

では、リアルな声を紹介しています。今回は私の身近にいる3人の例をあげてみます。

夫婦に24年。夫婦になって一番喧嘩をした

まず一人目の人は50代前半の男性(Aさん)です。奥さんも会社員で、大学生の息子さんもいます。
Aさんはコロナが本格化した4月から完全に在宅勤務が始まり、会社から電車に乗ることすら禁止されます。基本的には、同居の家族以外と会うこともはばかられる雰囲気だったそうです。

また、ほぼ同時期から奥さんもテレワークになり、息子さんも大学は実質休みで、5月になってからウェブで授業が再開されたそうです。つまり、何ヶ月にも渡って、家族3人が家にいる状況になったわけです。

大学生の息子はもともと自室があったので、そこで勉強(実際には遊び?)をしているので問題はなかったようですが、困ったのは夫婦。見られていると仕事がしにくいとのことで、 Aさんは寝室で、奥さんはリビングで仕事をすることになったそうです。しかし、寝室にはデスクが無く、仕事スペースの確保に苦労するAさんに対し、テレワークとは名ばかりの奥さんはあれこれと話しかけてくるそうでイライラ。奥さんが、「コーヒー淹れる?」という言葉にさえイラつくようになり、結婚以来、一番多く喧嘩をしたそうです。

子どもの声がうるさく、マンションの外廊下で商談をした

続いて紹介するBさんは30代のご主人で、奥さんと小学校の娘、保育園に通う息子が2人の5人家族です。奥さんはパートをしていましたが、子供の学校がなくなったことで仕事を休むようになりました。保育園はあいていたものの、仕事を休んだことで、息子たちも自宅で面倒を見るようになります。

この家族がどうなったかは、想像しやすいでしょう。いつも子供の声が聞こえる家では仕事に集中できるはずはなく、かといってファミレスやカフェなど人が集まる場所での作業は同僚によい目をされません。

社内の人には、「大変だね」と同情される程度でなんとかなったものの、取引先との商談の際にはパソコン片手に玄関を出て、外廊下で話をしたそうです。

一人暮らしだから仕事がしやすい…とはいかなかった

最後は一人暮らしだったCさん。彼女は一人暮らしです。じゃぁ、集中できたんじゃないか…というと、そうはいかなかったひとりです。

彼女の部屋はオタクグッズがあふれ、さらにかなり散らかった部屋。しかも彼女の会社は、ZOOMのような画像付きの通信システムに常時接続し、半ば監視されての在宅ワークだったそうです。部屋の一角をキレイにすれば何とかなりそうな話ですが、その場所さえないほどだったそうです(想像がつかないから写真を見せてと言ったら全力で断られました・笑)

部屋のあまりの惨劇と、気が付くとオタクグッズに手が伸びボーっと眺めている彼女に見かねた上司が、ホテル利用を提案。会社には、「Wifi環境が整っていない」と言い、アパホテルの5日連続で格安利用できるプランを利用することになったそうです。実際に、Wifiもあまりつながらなかったそうなのですが…。

ただし、電車に乗るのははばかられ、4つ先の駅まで毎日、自転車を飛ばしていたそうです。

テレワークを実際にやって、住宅選びの優先順位がかわった

では、この3人が何に困り、今後家選びをするときにどう言った点に重視すべきだと感じているのでしょうか?

仕事に集中できるスペースが欲しかった

彼らに共通していたことは、今までは部屋数は最低限あればよく、一部屋が大きい方が使い勝手がよいと思っていたが、テレワークと言う点ではそうではなかったということ。今回在宅ワークをしてみて、「せめて2畳ぐらいでいいからデスクがあって、静かなスペースが欲しかった」と言っていました。

これは、フリーランスとして働く私はめちゃくちゃ納得できる話。フリーランスになりたてのころは環境が整わず、「何なら、クローゼットの中でもいい」と思ったほどです、笑

ちなみに、小ぢんまりとした囲われた空間を海外では「ヌック」と言うそうで、世界中でニーズはあるということ。先日のYahooニュースで、2畳分の小部屋を15分で完成させる機能を持った家が紹介されてましたね。

新型コロナ対応の住宅人気 東北のメーカーが続々開発

また、広いリビングダイニングではなく、扉で仕切られていて、その扉は外して使っているという程度がちょうどいいのかなと思います。そうすれば、臨機応変に使えますし。

Wifiができるというだけでは不十分。これからは速度も重視

今回話をうかがったBさんとCさんは、「インターネット無料」が特徴のマンションに住んでいました。しかし、コロナ禍ではアクセスが集中し、通信速度が劇的に遅くなったとのこと。Bさんが速度計測をしたら0.3MBだったようで、ずっとイライラしていたそうです。

通信環境が整備されているマンションは魅力ですが、これからは速度もチェックしたほうがいいかもしれません。

駅近物件の魅力は半減した。距離があっても問題ない

今回は3人とも完全な在宅ワークとなった訳ですが、そこで感じたのは、「駅から近いという魅力はまったく重要ではなかった」ということ。駅からの距離は、毎日の通勤があってこそなわけで、当然ですよね。

特にBさんは、駅にも保育園にも近い場所を探し、予算オーバーしてまで選んだマンションだったそうで、今回は奥さんが働けなくなったことで、予算オーバーの恐怖を身に染みて感じたとか。予算オーバーの額は月に2万。

「子供ふたりを乗せられるリッチな電動アシスト自転車を買っても、一年でお釣りが来た。ミスジャッジだった」
と嘆いていました。

Cさんも、駅から近い物件を選んでいたそうですが、今回、毎日4駅を自転車で走ったことで、「普段から自転車に乗ればよかったんじゃん」と気がついたとのこと。駅から10分以上離れれば、確実に部屋は広くなったはずです。「次の部屋を探すときには、広さを優先する」と言っています。

引っ越しを決めた A さんが選ぶ条件 

Aさんはマンションの契約更新の時期が近づいていることもあり、引っ越すことを決めたと連絡がありました。大学に通う子どもにお金がかかるため、次の引っ越しは卒業してから…と考えていたようですが、予定を繰り上げての決断となったようです。

次に住むのは、部屋数が多い所。「納戸でいいので、いざとなった時に集中できるスペースがあるところを考えたい」ということです。「たとえコロナが収束しても、これから他のウイルスが来て、またパニックになるかもしれない。そうなった時にもめたくない」とのことでした。

また、「駅からの距離も、沿線も駅もどうでもよい」とのこと。彼の会社はコロナ後もテレワークが増えるそうで、奥さんの会社の沿線で、都心から離れたと場所も今回初めて候補に挙がってるそうです。新しい価値観が生まれたようです。

まとめ

「もうコロナ前と同じ環境には戻らない」と言っている専門家もいる今回の騒動。さまざまな部分に新しい気づきがあり、それに伴って生き方も変わってきそうです。これまで重要だと思っていたことがそれほど重要ではなくなり、また家の中にいる時間をいかに快適に過ごすのかというのが重要になるでしょう。その価値観の変化が、充実した人生につながるといいと思います。

原田園子

原田園子ディレクター

投稿者プロフィール

「不動産の学校」のディレクター兼ライター。
住宅メーカーや不動産業者をクライアントに持っています。
不動産関連の取材実績も多数あり。
不動産投資から日々の暮らし記事まで、幅広く担当します。

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