【連載】インフレ社会と今後の日本の不動産価格想定
- 2020/6/19
- 不動産投資
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こんにちは。ふりーパパです。
ニュージーランドは、1990年からインフレ政策をとるようになりました。インフレ政策とは、緩やかなインフレ(年率2~3%)を起こして、物価を上げていくような政策です。そのためには、必要な貨幣を刷って、国民に供給し、また、国民の収入となる最低賃金なども少しずつ上げていきます。結果として、現物資産である株式とか不動産は、過去30年で8倍以上になっています。一方で、貨幣価値は、1990年頃の価値の30%程度になっています。
日本でも、2013年からアベノミクスが開始され、リフレーション政策(流通する貨幣量を大きく増やして貨幣価値を下げる)という政策を取るようになりました。そのために、金融市場で取引されている国債や上場株式を日銀が買い、金融機関に対して売買代金として、現金を大量に供給して、融資や投資等に使われるように金融機関に仕向けるという状況が続きました。
その中で、個人の不動産投資家への資金が大量に供給されるようになり、その典型の金融機関が、スルガ銀行でした。これによって、個人投資家が不動産投資市場へ大量に参入してきたこともあり、主要都市圏の不動産は、値上がりを見せるようになりました。ところが、2018年1月に「かぼちゃの馬車」のような、投資物件自体に欠陥があるような投資物件まで供給される事態となり、また、銀行のローンを引き出すために、投資家の属性や保有資金の証拠までもねつ造するような不正が行われるようになったのです。
2018年3月以降、金融庁がこのような個人投資家の不正などが横行していた不動産投資家向けの融資を大幅に絞るように、金融機関を指導したことから、急激に投資不動産市場は冷えていきました。また、少子高齢化による賃貸需要の減退なども影響して、大東建託などの個人にアパートやマンションを建てさせて、賃貸運用する市場も縮小してきています。
このような状況下で、新型コロナウイルスによるパンデミックショックが発生して、不動産市場に大きな影響を及ぼす状況となっていました。日本でも緊急事態宣言が発令されて、会社への出金や必要以外の外出の自粛や飲食店の営業が自粛されていました。
パンデミックが穏やかなインフレを実現するのではないか
このような恐慌ともいえる経済状況下で、日本政府は、給付金や緊急融資などという名目で、50兆円~100兆円近い資金を、日本国民に流すようになりました。この資金は、緊急事態宣言時の国民の生活費や企業赤字などの補填に使われる目的ですが、これらの余剰資金は、株式投資や不動産投資に回ってきている可能性があります。
日本も、緩やかなインフレ政策を推進するために、2013年からリフレ政策を取るようになってから、株式市場や不動産も大きく値上がりするようになりました。今回のパンデミックショックがもたらすものは、緩やかなインフレ社会の実現ということになるのではないかと思われます。日本政府は、消費税増税などを実施して、実質的な金融引き締めをして、実質的にインフレ社会を抑えるような行動をとっていました。
日本政府は、今後も2025年までに政府の財政均衡策を取ろうという姿勢はみせていますが、国民がこれを許さない状況になる可能性が高くなってきているようです。今回の国民一人当たり、10万円の給付金を出しても、国家財政に大きな影響を与えないことが国民のコンセンサスになりつつあるからです。
また、緊急事態宣言による日本経済の疲弊を補うための政府の第二次の補正予算においても、大量の資金が国民や中小零細企業へ供給されることになりそうです。このように国民に大量にお金が供給されても、現在の恐慌下の状態では、インフレは起こらないと想定されます。しかしながら、日本経済が正常化してくる1年~2年後には、インフレになってくる可能性が高まっていると考えたほうがよさそうです。
日本では、2013年に開始されたリフレ政策ですが、今回のパンデミックショックが、本当のインフレ政策の時代に変化していく可能性が高まっています。アベノミクス開始された2013年から株式指数は3倍(日経平均8千円→23千円)近くになり、また大都市圏の不動産価格は、平均して1.3倍程度まで価格が上昇しています。
既に、代表的な株式指数である日経平均株価は、パンデミックショックの大暴落レベル(16800円)から暴落前のレベル(22000円程度)まで回復してきています。このことが示唆するものは、今後はインフレ効果によって、株式も不動産価格も上昇していく可能性が高まっているということです。
パンデミックが落ち着けば不動産価格は上昇に転じる
今回のパンデミックショックで、今後数年間、不動産価格が下落すると想定している不動産評論家も多いのですが、私は、当面は下落局面になるかもしれないが、半年もすれば、不動産価格は回復して上昇に転ずるという想定をしています。
2025年頃には、現状よりも2割程度は不動産価格が上昇していることを想定しています。今後も少子高齢化のシナリオが続いたとしても、都市圏の人口は増えていくことが想定されており、都市圏の不動産価格は上昇していくという想定をしています。まだ、東京都の郊外の中古不動産などは割安に放置されているので、そのような物件を買って住んでいても、将来的には値上がりが期待できると想定しています。
単純に貨幣価値の下落が進んでいくと、中長期視点からみれば、現物資産で需要のある資産として不動産の価格は上昇していくという想定をしておかないと、2030年頃になって、家賃の高騰などで、不動産を買っておけばよかったと後悔してしまう可能性が高くなっているということかもしれません。
今回のパンデミックショックで、製造業のサプライチェーンの観点からも、日本への工場の回帰なども起こりやすくなってきているのも不動産価格が上昇する材料となるかもしれません。日本の田舎で、安くて大きな土地を確保して、工場を建てて必要な製品を製造するような方向に変わっていけば、田舎の不動産価格も上昇する可能性も高まってくるということになります。
結論を言うと、日本でのリフレ政策の効果が、パンデミックショックで増幅されて、世の中が大きく変わっていくという想定のもとに、行動する必要がでてきているということです。国民生活に必須である居住目的の不動産も「賃貸」という選択肢から「所有」しておいたほうがよいという方向に転換していく可能性があるということです。