【連載】不動産投資の成功の鍵は「家賃査定」と「建物診断」にあり Part.2
(株)アートアベニューの片平と申します。弊社は首都圏の賃貸物件約6500戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。
本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。
前回の「賃料査定」に続き、「建物診断チェック表」の中から代表的なチェック項目を見ていきましょう。
最寄り駅から物件まで、自分の足で歩くべし
建物診断をする前に、まずは最寄り駅から物件まで「周辺の調査」から始めます。ここで大切なのは、駅から物件まで、入居者が歩くであろうルートを自分の足で確かめてみることです。思っていたより坂道がキツイ、交通量が多くてうるさい、怪しい施設があって怖い…など、入居者と同じ景色を見て初めて気づくことがあるはず。肌で感じた雰囲気も購入時の大事な判断材料です。
ゴミ置き場で入居者のモラルを確認
物件に到着したら「敷地内の調査」を行います。トラブルが多いゴミ置き場は要確認箇所です。
まずチェックしたいのはゴミ置き場の容量。単身物件なら30L×世帯数、ファミリー物件なら45L×世帯数は少なくとも確保したいところです。
合わせてゴミ置き場の散らかり具合を確認。入居者の分別マナーが悪いとゴミが回収されず、ゴミ置き場が荒れた状態になってしまいます。毎回処分するにも費用がかさみますし、何より物件のイメージが悪いと、入居者募集や入居者の質にまで悪影響が及びます。ゴミ置き場の状態が悪い場合は、ゴミストッカーの設置や、分別マナーの育成によって入居者のモラルを改善する必要があるでしょう。
将来のメンテナンス費用を知っておく
いよいよ建物本体の診断に入ります。特に、メンテナンスの行き届いていない中古物件を購入する場合には、雨漏りや設備故障が発生する可能性が高くなります。建物の劣化状況を確認し、大規模修繕工事や設備交換工事の時期と費用を予め知っておくことが重要です。
建物をパッと見て「外壁塗装に400万円、屋上防水に100万円、給水ポンプ交換に100万円。その中で急を要するものは…」と見当がつけば良いのですが、なかなかそうもいかないでしょう。信頼できる不動産会社や工事会社、ホームインスペクター等の意見を聞くのが有効です。
水染み跡には要注意
室内の調査では、天井や壁に水染み跡やたわみがないかよく確認します。これらの異常は、雨漏りや水廻り設備からの漏水の可能性を教えてくれます。
ただ、リフォームによって壁や天井を塗装していたりすると、この異常のサインが見つけられないこともありますので注意が必要です。点検口から覗いて鉄部に錆が発生していないか、湿気を強く感じないかを確認することも有効です。
プラス要因を見つける意識が重要
建物診断をする際にはどうしてもマイナス要因に目が行きがちですが、図面や資料に載っていない「プラス要因」を見つける努力もしたいものです。
重要なのは、その手間と費用を許容できるか否か
物件購入前の建物診断は、将来発生しそうな課題や、その対処方法とコストをある程度教えてくれます。中には解決できない課題もありますが、多くは手間と費用をかければ解決できるものです。購入時には、こうした課題と投資計画とを比較することになりますが、たとえ手間と費用がかかったとしても、それが投資計画の許容範囲内であれば(許容範囲に収められる金額以下で買えるならば)購入しても良いと判断できると思います。
前回もお伝えした通り、不動産投資の成功は、ほぼ買った時点で決まると言っても過言ではありません。「賃料査定」と「建物診断」のコツが、皆様の不動産購入時のお役に立てば幸いです。
株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/