不動産王としてのトランプ大統領を再確認。資産を増やした戦略に学ぶ
第45代アメリカ合衆国大統領であるドナルド・ジョン・トランプ氏。彼は世界屈指の不動産実業家として知られ、大統領になる前から成功者であり、「アメリカの不動産王」と言われていました。
今回の記事では、先代の戦略から大きな方向転換をして成功を手に入れた不動産王としてのトランプ氏の活躍を見ていきます。
トランプ・オーガナイゼーションが所有する不動産リスト
まず最初に、トランプ氏の会社、トランプ・オーガナイゼーションが所有する主要な資産を列挙してみます。
- トランプ・タワー (ニューヨーク、マンハッタン区ミッドタウン5番街)
- トランプ・ワールド・タワー (ニューヨーク、マンハッタン区ミッドタウン1番街)
- アクサ・フィナンシャル・センター(ニューヨーク、マンハッタン区ミッドタウンの6番街)
- トランプ・ビルディング・40 ウォール・ストリート(ニューヨーク、マンハッタン区ウォール街)
- トランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワー (シカゴ)
- トランプ・ホテル・ラスベガス(ネバダ州)
- トランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワー (ニューヨーク)
- パーム・ビーチ・エステイト(フロリダ州パームビーチ)
- セブン・スプリングス (ニューヨーク州ウエストチェスター郡)
- トランプ・インターナショナル・ホテル(ワシントンD.C.)
- ウォルマン・リンク – セントラル・パーク内のスケートリンク
- トランプ・ワイナリー(バージニア州シャーロッツビル)
他にも、アメリカ東沿岸地帯やスコットランド、アイルランドに15のゴルフコースを持っています。
ちなみに、上記以外にも不動産ライセンス契約をしており、トランプ氏の所有でないにもかかわらず、「トランプ」と名前のついた不動産が多く存在します。
すごいものです。
素行が悪くて軍隊式の学校に転校。そこで学んだのは「強いものこそすべて」
では、生い立ちを見ていきましょう。
1946年6月14日、トランプ氏は不動産会社の社長フレッド・トランプ氏の第4子として誕生します。生まれたのはニューヨーク州。お父さんは不動産会社経営をしているので、ある程度恵まれた環境で育ちます。
父親であるフレッド氏は、子どもたちに競争心や闘争心を持つように育てたそうです。闘争心…笑
中でも期待を寄せたトランプ氏には、「お前は食う側になり王になるのだ」と言っていたそうです。こんなに親が育てたとおりに育つとは、ある意味、素直なのかもしれません。
その後、名門の学校に入学するものの素行不良で、ニューヨーク・ミリタリー・アカデミーという、軍隊式教育で知られる学校に転向したそうです。そこで、規律正しくなった・・・かと言うとそんなことはなく、「弱者は虐げられ、強いものこそすべてだ!」という感覚になったそうです。
経営権を父から譲り受け、大きく方向転換
大学生になったドナルド青年は、不動産関係の学科がある名門大学・ペンシルバニア大学ウォートン・スクールに進学し、経済博士号を取得します。元々はフォーダム大学に進学したそうですが、不動産を学ぶために籍を移したそう。卒業後は大学院に進んでMBAを取得。学校で不動産の勉強をしながら、週末は実家で家業の手伝いをしたそうです。卒業後、本格的に不動産の道を歩き始めます。
トランプ氏は最初、父親が経営する会社に入ります。ところが、父がやっていたのは中低所得層向けの不動産会社であり、アパートや団地を手掛ける事業。トランプ氏はスケールの大きな事業を好み、中流・上流層向けのオフィスビルやホテルや商業施設へと方向転換をします。そして、1971年に父から経営権を与えられ、社名を「エリザベス・トランプ・アンド・サン」から「トランプ・オーガナイゼーション」に変更します。
そして、1980年代から90年代ごろには大規模な不動産を次々に買収。ドナルド・ジョン・トランプの名が全米各地に広まることとなります。
トランプ・オーガナイゼーションはどんなビジネスモデルなのか?
では、トランプ氏がどのようなビジネスをしていたのかを見ていきましょう。
まず、重要視するのは立地の良さ。これは、ニューヨークの五番街に建つ高層ビルのトランプ・ワールドタワーやハワイにあるトランプ・インターナショナルホテル、ゴルフコース・トランプ・ナショナルGCロサンゼルスなどを見ればわかりますよね。世界でも有数の好立地の土地です。ちなみに、トランプ・ワールド・タワーは高さ861フィート(262m)、72階建て、完成当時は世界一高い居住用ビルでした。家賃は月650万円だそうです。
郊外やアクセスの悪い場所などには魅力を感じないようで、アメリカのラスベガスやニューヨーク、ワイキキ、アトランティックシティなど、世界中でも有数の超都心と観光地のしかも好立地にのみ不動産を所有します。
しかも、中古ではなく新築がほとんど。住居用にしろオフィスビルにしろ、とにかく都心に新築物件を建設する傾向がとにかく強いんです。アクセスが良く新築となると入居率は高くなります。しかも、超都心なので賃料も高めとなると、入居者も上場企業や高所得者ということで収益性も安定させやすいんですよね。
もちろん、都心で新築物件を…となると、土地を購入するのにハードルが高くなるし、取得や建築に費用もかかるわけですが、そこには資金力と交渉力が効いたんでしょうね。
またトランプ氏は、現地調査も重視。現地に足を運び、周辺の人の意見も聞き、投資対象として魅力があるかどうかを判断したそうです。
早いうちから有名な不動産王に。有名な映画の敵役モデルにも
ところで、一世を風靡した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画をご存知でしょうか?
あの映画の敵として、ビフ・タネンという大柄な男性一族が登場します。1989年に公開されたPART2でビフは「ヒル・バレー」という街でカジノを併設する27階建ての高層ホテル「プレジャー・パラダイス」のオーナーとなっているわけです。この高層カジノが、トランプ氏がアトランティックシティに建てた「トランプ・プラザ・ホテル・アンド・カジノ」(37階建て)じゃないかと映画ファンの間で噂になったわけですが、このとき脚本家が認める発言をしています。
ビフは敵役ですから、いかにも傲慢な経営者と贅を尽くした生活をするわけですが、それがトランプ氏のイメージと合っていたのかも知れません。
それにしても、トランプ氏が父から経営権を与えられたのは1971年のことですから、そこから20年(PART1なら15年)も立たないうちに、不動産王の代表格としてみんなが知られる存在となった点は、すばらしいとしか言い様がありません!
4度の破産から民事再生で立ち直った不屈の男
では、トランプはひたすらに成功だけを手にしてきたかと言うと、決してそうではありません。トランプ氏は、4度の破産経験者。1991年、1992年、2004年、2009年に子会社が経営破たんするなどでして厳しい立場に立たされます。しかし、民事再生を行い、会社を復活させています。
一時期は負債が約9億ドル、日本円にして約1000億円もあったそうです。
普通だったら1度でのダウンしてしまいそうですけど、、、さすがです!!
精神力が強すぎる!
(まぁ、強靱な精神だから大統領時に強気すぎる発言が出たわけですけど)
復活の背景はもちろんいろいろあるでしょう。基本に忠実に不動産に向き合って、這い上がったのもあるでしょうが、それだけではないですよね。
大統領の時に見せた強気な発言と巧みな交渉能力もトランプの才能です。そして、敏腕経営者によくあることですが、タイミングも味方します。1990年代後半に再び起きた不動産ブームで、見事に復活し、現在に至るわけです。
メディア戦略と本当の姿?
さらにもう一つ。トランプ氏の注目すべきブランド構築戦略があります。それは、自身がメディアに露出することで、「不動産王 トランプ」というブランドを浸透させていったことです。
この最大の存在が、『アプレンティス』という番組。トランプ氏がホスト(司会者)を務め、2004年1月の第1シーズンから2012年の第12シーズンまで続いています。
この番組の成功が不動産王であり、アメリカの成功者のイメージを定着させ、大統領への道筋を作ったと言われています。その一方で、この番組出演でトランプ氏が稼いだ額は4億3700万ドル(約461億円)。このお金を何に使ったのかと言えば、カジノの赤字補填とゴルフ場の投資に使われていたとか。これにより、過去15年間のうち10年は所得税を支払っていなかったことや、トランプ氏自身は認めていないものの、「トランプ氏、16年と17年に納めた連邦所得税750ドルとの報道否定」なんて話もあります。現実はこれから明るみに出るのかも知れません。
しかし、これが現実であったとしても、決してずるいことをしたわけではなく、税法にのとって納税した結果がこうであっただけで、不動産王なことに変わりはないでしょう。また、現役大統領であったことで、十数件の裁判が中断されているという話もあり、これからも一波乱ありそうです。
最後に、トランプ氏の言葉を。
「仕事と遊びのバランスを取ろうと思うな。それよりも仕事をもっと楽しいものにしろ」
人々の不満を直球で代弁したトランプ氏は、多くの人に嫌われながら、熱烈な支持者も多くいました。今までの偉業と共に、過去最高の得票数を得ながら敗北した大統領として、歴史に名を刻んだことは間違いありません。不動産投資家として、また経営者として、トランプ氏の考え方や手法は、参考にすべき点も多いはずです。