子育て支援型の賃貸物件に見られる3つの特徴&各自治体の認定制度
「子育て支援型」という新しいジャンルの賃貸物件が続々と増えていることを知っていますか?
子育て支援型の賃貸物件とは、その名の通り、子育てに適した設備や間取りを取り入れた賃貸物件のことです。
今日は、子育て支援型の賃貸物件に見られる3つの特徴と、こういった賃貸物件が広がるきっかけとなった制度をお伝えします。子育てしやすい物件に暮らしたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
子育て支援型賃貸物件に見られる3つの特徴
まずは、子育て支援型賃貸物件の特徴からお伝えします。
特徴1.コミュニティースペースがある
コミュニティースペースとは、子育て中の入居者たちが交流を図るために用意してあるスペースのことです。コミュニティースペースがあることは、子育て支援型の賃貸物件ならではの特徴といえるでしょう。
たとえば、東京都墨田区の「ネウボーノ菊川」の共用部分にはキッズスペースやパーティースペースが用意してあり、お父さんやお母さんたちは子どもたちの様子を見守りながら自由に入居者同士のコミュニケーションを図れます。さらに、子育て・保育経験のある管理人が物件内に常駐しているため、子育てに関する悩みも気軽に相談できるそうです(※1)。
また、入居者同士のコミュニティーをより活性化させるためにイベントを行う賃貸物件もあります。具体的な例を紹介しましょう。
旭化成不動産レジデンス株式会社の運営する「母力(ぼりき)」には、入居時に自動入会となる「BORIKI倶楽部(ぼりきくらぶ)」があります。「BORIKI倶楽部」とは、ウェブサイトや新聞でお役立ち情報を発信したり、子育て相談やコミュニティーサポートなどをしたりしてくれるサービスのことです。
このサービスへ入会すると、防災イベントや夏祭りといった定期的に開催されるイベントで入居者同士の交流を図れるほか、メールや電話で子育てや日々の相談にも乗ってくれます(※2)。
とくに都市部で子育てをする親御さんたちは、近くに身内がいないことで子育ての悩みを共有したり相談し合ったりできる相手がいないケースも少なくありません。そんな人たちがこういったサービスのある賃貸物件に暮らせば、きっと大きなメリットを感じられるでしょう。
特徴2.安全性に優れている
子育て支援型の賃貸物件では、子育てをするうえで必要な安全性についてもしっかり考えられています。
具体的には、
- 段差をなくす、手すりを付ける
- バルコニーや窓からの転落防止措置を講じる
- 防犯対策を施す
といった工夫を取り入れている物件が多いようです。
たとえば、東建コーポレーション株式会社の運営する「チャイルドキッズ」では、
- スライドドアにチャイルドロックが付けてある
- 折戸に指はさみ防止の対策が施してある
- 壁の角に丸みが持たせてある
- キッチンの包丁収納部分にロック機能が装備してある
- 浴槽の底面に滑り止めが付けてある
- 2階の階段ホールにベビーゲートを設置できる
- コンセントの差し込み部分に扉が付けてある
- 子どもも使いやすいようにと二重で手すりが設置してある
といった工夫により、お父さんお母さんが子育て中に危険だと感じる要因を徹底的に排除しています(※3)。
もちろん、子どもの年齢や特性によってこれらの設備だけでは足りない部分もあるでしょう。しかし、最初からこれだけの設備がそろっていれば、自分たちで用意するものは必要最低限に抑えられるのではないでしょうか。
特徴3.子育て世帯に適した間取り
続いて紹介するのは、間取りに関する特徴です。
子育て支援型の賃貸物件は、換気システムはもちろんのこと、採光や風通しを考えた間取りを採用している物件が多くあります。
また、子どもの様子を見守りながら料理ができる対面式のキッチンや、子どもと一緒に入っても十分な広さを確保した浴室やトイレなども、子育て世帯にピッタリの設備です。
具体的な例を紹介すると、ミキハウス子育て総研株式会社の考える「子育てにやさしい住まいと環境の認定基準」には「調理スペースの前が子どもの通り道になっていない」というものがあります。これは、冷蔵庫をキッチンの外側に設置することで、料理中にコンロの前を通ったり近寄ったりしなくても子どもが冷蔵庫を使えるようにと考えられた工夫です(※4)。
2013年作成の資料(※5)によると、「子育てにやさしい住まいと環境の認定基準」には
- キッチンからリビングやダイニングが見渡せる
- キッチンに幼児が入ってこないようスライド式のゲートを取り付けられる
- コンセントに感電防止策がなされている
- バルコニーに出る窓は鍵が高いところに付いている
- リビングには十分な採光がある
といった基準が設けられています。
では、このような特徴のある子育て支援型賃貸物件が、ここ数年でなぜ急増しているのでしょうか?
最後に、子育て支援型賃貸物件が広がるきっかけとなった制度を紹介します。
きっかけは「すみだ子育て支援マンション認定制度」
子育て支援型の賃貸物件が全国へ広がることとなったのは、2002年に東京都墨田区の始めた「すみだ子育て支援マンション認定制度」がきっかけです。この制度が誕生したことをきっかけに、ほかの自治体でも次々と似た制度が誕生していきました。
現在の墨田区では、集合住宅の居住に関するさまざまな機能についてとくに配慮された集合住宅を、「すみだ良質な集合住宅認定制度」で認定しています(※6)。
大阪府大阪市には、「大阪市子育て安心マンション認定制度」という制度があります。これは、子育てに配慮した仕様と子育てを支援する環境を備えた良質なマンションを大阪市が認定する制度です。この制度で認定されたマンションは、2019年2月の時点で4,182戸あります(※7)。
また、東京都では2016年に「東京都子育て支援住宅認定制度」が始まりました。「東京都子育て支援住宅認定制度」とは、居住者の安全性や家事のしやすさなどに配慮し、かつ子育てしやすい環境づくりに役立つ取り組みを実施している住宅を認定する制度のこと。この制度では、2019年7月に認定住宅の戸数が1000戸を超えたそうです(※8)。
そのほかの自治体には、
- 横浜市地域子育て応援マンション認定制度/神奈川県横浜市
- 一宮市子育て世帯向け民間マンション認定制度/愛知県一宮市
- 子育てスマイルマンション認定制度/広島県
などの認証制度があります。
似た制度ではあるものの、制度の名前や認定の基準は自治体によって異なり、中には賃貸物件だけでなく分譲マンションや戸建てを認定対象にしている制度もあるようです。
少子化対策の一環としても役立つ制度といえますので、今後もこういった制度を導入する自治体は増えるかもしれませんね。
まとめ
今日は、子育て支援型の賃貸物件について、特徴や誕生のきっかけとなった制度などをお伝えしました。
全ての都道府県で子育て支援型賃貸物件を見つけることはまだまだ難しい状況ではありますが、都市部を中心に物件の数は今後も増えていくと考えられます。安心・安全な子育てをしたいと考える人は、ぜひ転居先の選び方として1つの候補に入れてみてはいかがでしょうか。
【参考サイト】