【取材】OYO LIFEが創造する賃貸不動産業の新しいカタチに期待せずにいられない
不動産関連のニュースは数多くありますが、特に最近、気になるのは【OYO LIFE】というサービスではないでしょうか。
ホテル事業を展開するインドの会社が日本に上陸。しかも、ホテルではなく賃貸事業?
その実態を知るために、さっそくOYO LIFEに取材を申し込み、CEOの勝瀬博則さんにお話をうかがってきました。
新しい着眼点で展開する、新しい賃貸事業がそこにはありました。
見せていただいた物件の写真を紹介しながら進めていきます。
運用をはじめると即満室。事前登録者数13,000人のサービスとは?
OYO LIFEとは、どのような仕組みでしょうか?
賃貸契約をスマホで契約まで済ませる、新しいサービスです。すべての部屋には必要な家電はもちろん、調理器具やタオルまで揃っていて、圧倒的な時間と手間を節約できます。
運用戸数はどれくらいでしょうか?
3月28日時点で、契約室1008戸。運用数が500以上あります。契約戸数と運用戸数の差は、現在準備中の物件です。今の稼働率は100%。また、入居に興味を持っている事前登録者数は13,000人になります。
借主さんの属性は、どのような属性でしょうか?
若い方が多いですね。18歳から45歳までいらっしゃいますが、いわゆるミレニアル世代と言われる方が中心です。男性も女性もいらっしゃいますが、比較的男性の方が多く、エンジニアなどIT系で働く方が多くなっています。ほとんどが独身の方です。
OYO LIFEは現在、中価格帯の物件を多く扱っています。大体12万円程度、安くても8万円から上と決して安い金額の物件は扱っていないので、お仕事をお持ちの方や会社がサポートしてくれるという方が多くなっているのだと考えています。今後は、お客様のフィードバックを検証しながら、様々なタイプの部屋を提供したいと考えています。
また、部屋の広さで言うと、1Kとか1 LDK。一人、もしくは二人で住むタイプのお部屋が多いです。地域としては、都内の6区 (渋谷区、目黒区、新宿区、中央区、文京区、千代田区)を中心に拡大してきましたが、徐々に拡大していく予定です。
ITが入っていなかった日本の不動産賃貸業界に感じた可能性
OYO LIFEはホテルの会社ではないのでしょうか?
当社は、ホテルの会社という印象を持っていらっしゃる方が多いと思うのですが、実は自分でホテルチェーンだと言ったことはないんです。では、なんと言っているかというと、「クオリティ・リビングスペースを提供する会社」と言っています。クオリティリビングスペースとは、
- 便利なロケーションで、
- 快適なデザインで、
- リーズナブルな価格なお部屋
と定義しています。
なぜ、不動産賃貸業界を選んだのですか?
それは、マーケット規模に違いがあったからです。ホテルマーケットと賃貸マーケットを比較すると10倍ぐらいの違いがありました。賃貸は12兆円もの市場規模があるわけです。これは魅力ですよね。
そして、ホテル事業に対して不動産賃貸業にはITが未導入だったことも大きいです。
不動産賃貸とITとは、具体的にはどのようなことでしょうか?
たとえば、ホテル市場ではスマホひとつで予約やキャンセルができ、宿に行くとすぐに対応してくれる。すぐに鍵を受け取ったら、部屋ですぐに一息つけてしまうわけです。これは、ホテルだと普通に期待すること。こうでなければ、怒るゲストもいるでしょう。
ところが賃貸市場にはITがありません。賃貸不動産でやっていることをホテルで例えるなら、インタ―ネットで予約しようと思ったら、「うちはネットでは無理です」と言われる。そして、実際に足を運ぶと、「今調べたら、その部屋のタイプは既に予約されていますね」と言われるわけです。「でも、似た条件のお部屋が、違うホテルにありますよ」と言われ、最初の希望と違う部屋を見せられる。こんなとき、お客さんだったら「最初に電話で教えてくれればよかったのに」と思いますよね。不動産事業者は多くは不動産情報取引サイトのレインズを使われていると思いますが、レインズは“不動産情報”のサイトであり、“在庫情報”サイトでありません。お部屋が空室なのかどうなのかはレインズだけは確認できないのでこのようなことが起きます。
さらに、契約しようすると、「1日しか滞在しない場合でも、最初に5日分の金額をもらいますよ」と言われます。これは敷金・礼金に当たるもので、先にお支払いいただきますと。「でも、ご心配なく。敷金分はチェックアウトの時にお返しする可能性もあります」と言われるわけです。そして、やっとの思いで契約をして部屋に入ると、部屋の中は空っぽ。自分で家具を入れるしかありません。さらに、「水道・電気・ガスはついていませんので、自分で契約してください。ガスは立ち会いが必要です」と言われる。これでは、不便ですよね。ベットだって、インターネットだって、電気・水道だって“絶対”使うってわかっているのですから初めからついていたほうが良いですよね。
そこにメスを入れたいと思ったわけですか?
そうです。今までは、需要が供給を上回っていたので、そのことに気を使わなくても成り立っていましたし、儲かっていました。お客様も、これを当たり前と思っていました。しかし、そうではない便利なサービスもあるんですよと提案すれば、お客様は利用していただけるのではないかと考えたわけです。
Amazonを参考に、3つの特徴を掲げる
これからの賃貸事業は苦戦するのではないでしょうか?
日本は、3年前から人口減少が始まりました。2019 年は30万の人口が減ります。これは、地方の県庁所在地ぐらい、例えば、秋田市の県庁所在地の全人口がいなくなってしまうのと同じです。日本全国で広く薄く減っているので人口減については茹でガエルみたいにジワジワと感じ始めているというのが今の状況です。
その一方で、新規の住宅着工数は90万戸くらいあります。これを単純に差し引きすると、その差は120万戸にも及びます。この人口減少率はもっと大きくなる可能性があり、家余りが起きるのは確実です。2年ほど前になりますが、みずほが出したレポートによれば、2040年には全国の賃貸住宅の4割が空き家になると言われています。
そうなると、賃貸住宅のあり方も変わる必要があります。では、今はまだ無い賃貸住宅サービスを誰が提供していくのかと考えたとき、僕らがやりましょうというふうに考えました。
具体的にどのように仕掛けていくのでしょうか?
一言で言えば、Amazonの賃貸不動産版だと思っていただけるとよいですね。Amazonで売っている商品はどこでも買えるものです。ドンキホーテでも、スーパーでも、家電店でも買うことができます。それでも利益を出しながら、高い株価を維持しています。そこには3つのポイントがあります。
1つ目は、売り方が違います。アマゾンではインターネットやアプリを通じて買うことができます。さらに、Amazon EchoというスマートスピーカーやDush Buttonがあり、Kindleを使えば本で注文ができる、Amazon Fireを使えばテレビで発注ができる。Amazonがやっているのは今までにはなかった便利な販売の仕組みです。それがユニークであり、大きな差につながっています。OYO LIFEでは、スマホやパソコンさえあれば、不動産会社に行かなくても、自宅でも外出先でも契約ができてしまいます。この利便性は大きな差につながると思います。
2つめは、Amazonは世界最大の倉庫を持っている点です。倉庫を持つこと自体は契約店から商品を届けるのに比べて経済効率性がよくありません。送料も手間もかかってしまいます。では、なぜそんな面倒くさいことをするのかと言うと、欠品やトラブルを起こさないためです。
では賃貸不動産はどうかというと、業界レベルでの在庫管理システムはが無いので、物件情報はあるけれどもリアルタイムで在庫の有無が分からない。だから客付不動産店舗は「ひとまず来てください」と言う。でも実際に行ったら在庫がなく、他のものを提示して、「今日契約しないと、またなくなっちゃうかもしれませんよ」と言う。これは、お客様の方からすると、決してよろしくはないですよね。OYO LIFEは自社物件のみを掲載していますから在庫管理は完璧です。在庫管理ができていれば、申し込めばその場で回答ができる。そして、契約もできてしまいます。
そして、3つ目は、Amazonプライムです。これに入ると、音楽聴き放題、スマホの写真ストックし放題、映画見放題となります。会費を取っているとは言え、高い金額ではありません。では、プライムは何のためにやっているのかと言えば、お客さんが離れないように、ずっと満足を提供しているのです。Amazonを買っていない時でも、ずっとサービスを提供し続けることが魅力なんです。
これに変わるのが、OYOパスポートというものになります。これは入居者の方々にさまざまなサービスを提供するもので、例えば、動画配信サービがタダで見られるとか、洗濯代行が無料で受けられるとか、車がタダで借りられる、化粧品のサンプルが毎週届きますといったものです。入居者がOYO LIFEで入居契約をすることは最初だけですが、OYOパスポートがあれば我々はお客様との接点をより長く、より頻繁に持ち続けることができます。地道なサービスですが、今までの大家さんは提供していなかったサービスです。
大家さんとの連携にも専用のシステムを使い、スピード対応
大家さんからの物件調達はどのようにしているのでしょうか?
物件調達について管理会社様やオーナー様に対して、非常に地道にやっています。オーナー様は大事な資産を預けるわけですから、資産の保全を気にされて当然です。そのため、いきなり電話がかかってきて、「OYO LIFEに貸しませんか?」とお声をかけたとしても聞いていただけませんし、逆に不信感を持たれてしまいます。そのため、私たちが行っているのは、直接お会いして信頼を獲得して託していただくということ。これを地道にやる必要があると思っています。それは、効率が悪いと思われるかもしれませんが、あらゆることを試してやっていく必要性を感じています。
不動産賃貸には、オーナーがいて、借主がいて、仲介・管理会社があります。その誰もが困らない仕組みを作るのが私たちの役割だと思っています。オーナー様は、物件をどなたかに貸していらっしゃるわけで、それをOYO LIFEに貸してくださいと言う話です。100%空室保証をします。家具はすべてOYO LIFEが入れますし、様々な対応も全てOYO LIFEがやります。大家さんは負担が全くありません。賃貸先のオプションの一つとOYO LIFEを考えていただければよいというわけです。
現在のオーナーさんの属性は、どのような方々でしょうか?
オーナー様は、さまざまな方がいらっしゃいます。データは取っていませんが、個人オーナー様もいれば、ファンド、企業などです。また、全棟一括でということも、一部だけということもあります。
今後は大規模なセミナーやウェブでのプロモーションを展開します。オーナー様が参加してみたいと思った時には、まず、これらのセミナーやウェブから申し込んでいただければと思います。そこに情報入れると、担当者から連絡をし、システムを説明します。その後、契約の手続きに入ります。賃貸契約にあたっては、直接契約でも構いませんし、仲介不動産を通しても問題ありません。それは、オーナー様に決めていただければと思います。
条件は、オーナーの希望を言えるのですか?
弊社では査定システムを使っています。アプリなのですが、そこに所定の情報やGoogleマップで場所を設定すると、その場で契約可能かどうかが判断できるようになっています。そのため、その場で回答ができます。「持ち帰って上司と相談して、また連絡します」というようなことはありません。
条件は、まずオーナー様にご提示いただきます。その上で、査定システムの条件と照らし合わせて判断します。時には、「初期費用5ヶ月は無理なので、3ヶ月でどうでしょうか?」とか、「家賃を下げていただければ、5ヶ月で契約できます」などと交渉をさせていただくことはあります。その条件は、ITでしっかりと基準を明確にしていますので、即答できます。
最後に聞きたい法律と将来のこと
日本の法律の壁が厚いと感じることはありませんか?
法律の部分を課題とは思っていません。サッカーをする時に手を使わないことはルールであり、守るのが当然です。手を使えないことがサッカーの課題かと言われれはそれは違いますよね。ルールの中で、どこまでお客様に寄り添うことができるのか?と言うことが課題です。
オーナー様と管理会社様は、出来るだけ慣れ親しんだ今の契約方法が変わらない方が良いと思っていらっしゃいます。ですので、できるだけ変えないようにしています。一方、借主様は今までの契約方法からより便利に変わって欲しいと思っている人が多くいます。ですので、借主様へのサービスはより便利に変えていきます。その両者を埋めるため、オーナー様からはマスターリースとして契約し、借主にサブリースの形で貸します。
また、オーナー様は、敷金や礼金は最初にほしいものです。でも、借主様は一括で払いたくないと考えます。そうであるなら、私たちが先に借りて支払ってしまい、借主様からは割賦でいただいています。
私たちが入居者と契約をする際は、31日以上90日までのご契約の場合は一時使用契約を適用しています。例えば家の建て替えをやっていて、継続して住む予定ではなく、一時的に借りるときなどに適用されます。 一時的な反復しない賃貸契約は基本的には借地借家法の適用になりません。そのため、スマホ上の契約で書面がなくても問題ありません。
最初から5か月ぐらいの契約が必要だと考えている借主様の場合は、最初から定期借家制度を活用します。このときは書面で行います。
そしてもう一つ。ハイブリッドの契約があります。まずは、とりあえず3ヶ月住む一時使用契約をスマホ上で結びます。その後、状況が変わり、もっと長く住みたくなったという場合は、一時利用契約を取り消し、新たに定期借家契約を書面で契約します。
OYOパートナー不動産についてうかがえますか?
はい。OYOパートナー不動産は不動産業界初のフランチャイズ料、加入料、システム利用料、手数料などが全くかからない不動産フランチャイズチェーンです。既存の不動産店舗でも簡単にOYOパートナー不動産になれます。
これにより既存の不動産店舗様はOYO LIFEという新しいサービスアパートメントという商品を取り扱うことができ手数料を稼ぐことができるようになります。例えば、OYO LIFEのサービスを受けたい借主様がご来店された時、まさに旅行代理店みたいな感覚で、面倒な契約作業なく、すぐに貸し出し、手数料を稼ぐことができます。
御社が考える日本の賃貸の未来像について教えてください。
弊社では「旅するように暮らす」というキャッチフレーズを使ってます。これは、今までのなかったジャンルではないかと思っています。陽の長い夏は海の近くに住み、冬場は通勤時間の短い会社の近くに住む。そんな2拠点生活があると日々の生活も楽しくなりますよね。もしくは、子供が生まれた3ヶ月空気のきれいなところでゆったり過ごしたりとか。 子供が夏休みの時だけ田舎に住んでみるとか。そんな時に選択できるオプションはありませんでした。今までの賃貸住宅契約は敷金、礼金があるので、本来10万円で住めると言われても、契約時に支払う初期費用がとても高いです。その点OYO LIFEだと、初期費用を貯める必要もなくスマホで契約を終えて、その日の夜に入居できてしまいます。知らず知らずのうちに不動産に縛られて、契約に縛られていた生活から解放できるのがOYO LIFEではないかと思うわけです。
こうなってくると、身の回りのものを減らすことができるかもしれません。今は、服も靴もいっぱい持っている。でも、使わないとどんどん溜まっていくだけ。それなら、エアークローゼットを契約する。そんなサービスをOYOパスポートで使いやすくすれば物を持たずにいることの快適さのほうがいいねって新しい価値観が生まれることもあるともいます。私たちは、そんな新しい生き方を定義したいと思っています。