【連載】コロナ禍で拡大するペット需要! 「ペット飼育可」で高稼働を狙う際の注意点

  • 2021/3/31
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アートアベニューの伊藤と申します。弊社は首都圏の賃貸物件約6800戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響から、犬や猫などのペットを飼う人が増えているという報道を、近頃よく目にするようになりました。確かに、けがや病気の治療費に備えるペット用保険の最大手3社は、コロナウイルスが国内で流行し始めた2020年4月~9月の6ヶ月間の契約件数が約11.5万件(2社は半期で過去最高値)に達したと発表していますし、一般社団法人ペットフード協会も、2020年中に新たに飼われた猫は前年比で約6万7000頭も増えたと発表。大手不動産会社では猫にシャンプーをするための「猫専用のユニットバス」の発売を決定するなど、コロナウイルスをきっかけに各業界でペット需要が拡大していることが伺えます。

ご存じの方も多いと思いますが、賃貸住宅市場ではペット飼育可能物件が少ないため、空室対策としての「ペット飼育可への変更」が効果を発揮するケースが多々あります。
実際に(株)リクルート運営の「SUUMO(スーモ)」でペット飼育可物件を検索してみる(※2021年2月20日時点)と、東京23区の募集物件総数:約243,000件に対して、「ペット相談可」の物件は約44,000件と、全体の2割程度しかありません。ペット飼育可に変更することで競合物件を8割減らすことができるなら、たしかに有効な空室対策と言えそうです。

しかしながら、「ペット飼育可」が万能の空室対策かというと、ここはあくまで一長一短、ペット飼育可への変更にも課題はあるのです。

注意したいポイント①「既存入居者からのクレーム」

新築で最初から「ペット飼育可」の物件であれば、ペットを連れていない人であってもペット連れの入居に理解を示してくれますが、ペット飼育「不可」だった物件を途中から「可」へ変更する場合には、当然ながらそれなりの配慮と注意が必要です。
たとえば、ペット共生になったことで既存入居者から「動物アレルギーを発症した」と、治療費や引越し費用の損害賠償を求められるケースも起こらないとは限りません。また、騒音(鳴き声)や飼い主のしつけ不足についてクレームを言われてしまうこともあるでしょう。既に住んでもらっている入居者は、もしかしたら「ペット不可」だから部屋を借りてくれているのかもしれないのです。彼らへの配慮を怠った結果、対策前より空室が増えてしまったのでは元も子もありません。

こうした事態への対策としては、まずは入居者へのアンケート(添付資料)が有効です。

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ペット可へと変更する前にアンケートをとることで、「アレルギーのある入居者」の事前チェックが叶うことに加えて、クレームを減らす効果・反対意見への対策を用意できる効果が期待できます。また、アンケートの結果が「賛成寄り」であれば、安心してペット共生へ向けて準備を進められるでしょう。

余談ですが “アレルギー”については、「アレルギーのある入居者の居住を認識していたにもかかわらず変更を推し進めた」といったケースでない限り、入居者から治療費等を請求されたとしても、損害賠償しなければならない可能性は低いようです。

注意したいポイント②「原状回復費用が高額になりやすい」

猫や犬などのペットを飼うことで、内装(壁紙、床材など)が爪で傷つけられてしまったり、臭いがしみついて張替が必要になり、貸主の費用負担が思いのほか高くなってしまうケースは少なくありません。特に古い壁紙を使いまわしている場合は要注意。耐用年数がオーバーした壁紙は、たとえ破損の要因がペットにあったとしても、その張替費用のほとんどは入居者に請求できず、貸主負担で原状回復をすることになります。

この問題の対策としては、契約時に予め入居者の負担金額を設定しておくことが有効です。特約に「退去時に消臭施工費○万円を支払う」といった条項を盛り込み、借主から同意を得ることで、最初から借主の負担分を確保しておくのです(ただし、目的が不明確だったり、妥当でない金額の請求は無効になります)。また、敷金について「償却」「敷引き」を設定し、一定額を原状回復費に回せるよう備えておくことも有効でしょう。

この春は緊急事態宣言の影響により、短期的に外国人需要が減少しているのに加えて、テレワークやリモート通学の影響で社会人、学生の動きが鈍くなり、想定外の苦戦を強いられているエリアが散見されます。今回のコロナショックのようなことが今後も起こらないとは限らない以上、“今”物件の稼働を支えてくれているターゲットの需要が減少したとしても、別のターゲットで補えるよう、先手で開拓しておくことが今後も必要となるでしょう。
コロナをきっかけとした賃貸需要の変化。“今”が物件の強みを改めて考える良い機会なのかもしれません。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

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