地震保険が改訂されました。2019年1月改訂の3つの改定点
2019年1月、地震保険の改定がありました。みなさんは、ご確認されたでしょうか?
自分の住む地域の地震保険料がどう変わったのか?気になるところですよね。
今回の改定は2017年1月の改定に続く、第2回目の改定になります。どこがどのように変わったのか、再度確認、そして振り返り、今後どのような対策を考えたらよいのか、ぜひ参考にして頂けたらと思います。
地震保険の改定とは
「地震保険の改定」と聞いて、「自分の地震保険は影響があるのかな?」「私が加入している地震保険は変わるのかな?」と、疑問を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、まずは地震保険について、少し説明します。
そもそも地震保険は、保険会社ごとに保険料率が異なることはありません。どこの保険会社の地震保険に加入しても、地震保険料率は同じです。これは地震保険の仕組みに国が関与しているため、どこも同じ保険料率となっています。ですから、地震保険の改定となれば、「〇△保険の地震保険は改定されず現状維持になる」ということはなく、一律に改定されます。
今回は2017年の第1回目の改定に続く、第2回目の改定になります。この改定は2011年の東日本大震災から、震源モデルが見直されたために実施されるものです。改定は3回に分けて行われることが決まっており、今回ご説明するのは第2回目。第3回目の改定はいつとはまだ案内されておりません。また、この3回の改訂は「値上げ」です。一気に値上げすると負担が大きいので、3段階に分けて「引き上げ改定」するのです。
地震保険を決める2つの要素
地震保険の改定を確認するうえで、地震保険の保険料率はどの保険会社も同じであることをお伝えしました。この地震保険の保険料率を決める大きな要素は2つあります。
その要素は、対象の住宅がどの地区に建っているのか、また、その建物がどんな構造の建築物なのか、この2つです。よって、改定された保険料率を確認する際も、この2つの区分によって分けられていますので、よく把握しておきましょう。
地震保険料率を決める要素
- どの地域に住宅が建っているのか?
- どの構造で出来ているのか?
住宅の区分は1等地~3等地までの3つの区分があり、数字が上がると保険料は高くなります。また、住宅の構造はイ構造とロ構造の2つに別けられています。
地震保険の所在地区分
1等地<3等地
地震保険の住宅構造区分
- イ構造→コンクリート造、鉄骨造
- ロ構造→木造
都道府県 | イ構造 | ロ構造 | ||
保険料 | 改定率 | 保険料 | 改定率 | |
千葉、東京、神奈川、静岡 | 25,000円 | 11.1% | 38,900円 | 7.2% |
埼玉 | 17,800円 | 14.1% | 32,000円 | 14.7% |
茨城 | 15,500円 | 14.8% | 32,000円 | 14.7% |
徳島、高知 | 15,500円 | 14.8% | 36,500円 | 14.4% |
宮城、山梨、香川、大分、宮崎、沖縄 | 10,700円 | 12.6% | 19,700円 | 7.1% |
福島 | 8,500円 | 14.9% | 17,000円 | 14.1% |
岩手、秋田、山形、栃木、群馬、富山、石川、福井、長野、滋賀、鳥取、島根、岡山、広島、山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島 | 71,00円 | 4.4% | 11,600円 | 1.8% |
愛知、三重、和歌山 | 14,400円 | -15.8% | 24,700円 | -14.5% |
大阪 | 12,600円 | -4.5% | 22,400円 | -5.9% |
愛媛 | 12,000円 | 0.0% | 22,400円 | -5.9% |
北海道、青森、新潟、京都、兵庫、奈良 | 7,800円 | -3.7% | 13,500円 | -11.8% |
※一般社団法人 日本損害保険協会「2019年1月 地震保険制度改定の概要」参考
改定される保険料は3.8%の値上げ
今回の保険料率の値上げは全国平均で3.8%です。第1回目の保険料率の値上げが5.1%でしたので、やや小幅な引き上げ率となりました。また、3.8%の値上げはあくまでも全国平均。すべての地域で値上がりしているわけではなく、一部の地域では値下がりしている状況です。
表を見てみましょう。
イ構造、ロ構造、共に保険料が1番高いのは都心部である「千葉、東京、神奈川、静岡」ですが、イ構造では更にプラス11.1%上昇で25,000円。全国平均3.8%を大きく上回る改定率となっています。また、ロ構造でもプラス7.2%の改定率で、38,900円と全国トップの保険料は相変わらずです。
その「千葉、東京、神奈川、静岡」を追うような形で埼玉がイ構造でプラス14.1%の改定率で17,800。ロ構造ではプラス14.7%の32,000円。続いて茨城がイ構造でプラス14.8%の13,500円。ロ構造で14.7%の32,000円。東京、神奈川、千葉、埼玉と、関東勢が全国上位に目立つ形となりました。
また福島は震災の影響もあり、イ構造でプラス14.9%の10,700円。ロ構造ではプラス14.1%の17,000といった改定。他の地方都市に比べて、若干高めな保険料なのは仕方ない部分がありますね。
逆に下がったのは、北海道、青森、新潟、岐阜、京都、兵庫、奈良、大阪、愛媛、愛知、三重、和歌山県と、かなりの都道府県です。それでも、それ以外の県の改定率が軒並み2ケタであるために、平均すると3.8%の改定率上昇といった状態に落ち着きます。
また、2018年には大阪でマグニチュード6.1、震度6弱の「大阪北部地震」、北海道でマグニチュード6.7、震度7の「北海道胆振東部地震」があったにも関わらず、北海道、大阪、両者共に保険料がイ、ロ、両構造において値下がりしている点が目を引きます。これは、ベースとなる数値が2017年6月に提出されているためです。その後、大阪や北海道には大型の地震が実際に生じたものの、これらが加味されているわけではないのです。
長期係数の改定
第2回の地震保険の改定では、保険料率以外にも、長期係数の変更もありました。長期係数とは、地震保険を2年以上の複数年契約する際の係数のことをさします。
例えば、地震保険を2年契約する場合の2年分の保険料を計算するときに、1年分の保険料」×2(2年分だから)と単純計算で2倍とはならずに、(1年分の保険料)×1.9(2年の場合の長期係数)で計算することになります。更に、3年契約ならば改定後は2.8倍で計算、4年は3.7倍と年を重ねるごとにお得になる計算です。地震保険は最大5年で契約することが出来るので、長期契約した場合、お得になるのがこの長期係数を用いた計算です。
保険料 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | |
長期係数 | 改定前 | 1.90 | 2.75 | 3.60 | 4.45 |
改定後 | 1.90 | 2.80 | 3.70 | 4.60 | |
改定率 | 0% | +1.8% | +2.8% | +3.4% |
※一般社団法人 日本損害保険協会「2019年1月 地震保険制度改定の概要」参考
今回の改定では、2年契約時は改定に変更がないが、5年契約時の4.60から4.45への改定は振れ幅が若干大きく、長期契約のメリットが薄れた形になります。
地震保険割引の確認資料の改定
地震保険割引は住宅の築年数や耐震基準が一定に達していたら、保険料が割り引かられる制度があります。割引は10%~50%とさまざまです。「建築年割引」、「耐震等級割引」、「免震建築物割引」、「耐震診断割引」といったものがそれにあたります。これらの割引を受けるには、それぞれを証明する書類が必要となりますが、今回の改定ではその確認する資料の適用範囲が広がりました。
保険会社から契約者あてに発行する満期案内書類、契約内容確認のお知らせも、更新前の契約もしくは現在の契約に各種割引が適用されていることを確認出来るものがあれば、確認資料とすることが出来るように改定されました。
また「建築年割引」においては、公的機関以外が発行する資料として、宅地建物取引業者が発行する不動産売買契約書や賃貸住宅契約書、建築工事施行者が交付する告示完了引渡証明書(建物引渡証明書)も、所定の項目が確認出来た場合は、確認資料とすることが出来るようになりました。
地震保険見直しのポイント
地震保険は途中加入、途中解約が可能な保険となっています。また、地震保険は火災保険に入っていないと加入できません。ですから、火災保険の加入時期、更新時期に合わせて地震保険の加入、更新を付属して考える、といった捉え方が望ましいでしょう。
そして、実は火災保険の改定が2019年秋に実施予定とされています。その改定され、引き上げられる保険料率は参考純率の平均値で5.5%です。参考純率とは保険料率のうち、事故が発生したときに保険会社が保険金に充てる部分の参考値です。もちろん、この数値も平均値であり、大幅に上昇するところもあれば、下がるところも。且つ、地震保険とは変わりますが、住宅の区分と構造により保険対象エリアは分けされ、構造区分によって、それぞれの改定率となります。出来れば、この火災保険の改定に合わせて、ベストな地震保険を見直していきたいですよね。
さいごに
2019年の5月28日に損害保険料率算出機構より、地震保険の基準料率改定の届け出が金融庁に提出されました。これは3回に渡って行われる改定の最後の改定になります。第1回目が2015年9月に提出され、2017年1月に適用。第2回目が2017年6月に提出、2019年1月に適用と、どちらも提出から適用されるまで約2年ほどの期間がかかっています。そのことを踏まえると、今回は2019年5月に提出されたので、2021年前後には適用となるのではないでしょうか?
そのことを踏まえて、2019年秋の火災保険の改定も頭に入れつつ、少しややこしくはなりますが、地震保険の加入年数を見直すことをおすすめします。