浄化槽とは?トイレの処理方法と浄化槽の設置にまつわる補助金制度
地方への移住を考えていると、「トイレの浄化槽って何?」という疑問に行き着きます。そこで、今日は「浄化槽の設置には補助金が出ることもあるそうだけど、そもそも浄化槽って何?」という人のために、トイレの処理方法について解説します。
浄化槽の設置にまつわる補助金制度も紹介しますので、くみ取り式から水洗式のトイレに変えたい人や、浄化槽を設置したい人は参考にしてみてください。
トイレの処理方法と浄化槽設置の補助金制度
まずは、3つの処理方法について、それぞれの特徴や違いから解説します。
1.くみ取り式
最初に紹介する処理方法は、「くみ取り式」です。
くみ取り式とは、トイレ専用のタンクへ排せつ物をためる方法のこと。公共の下水道設備が整っていないエリアでは、くみ取り式のトイレが多く見られます。
くみ取り式は、「ぼっとんトイレ」や「ぼっとん便所」とも呼ばれるトイレの種類です。とはいえ、くみ取り式のトイレでも、和式から洋式に変えたり、簡易水洗式に変えたりすることで水洗トイレのような使い心地を得られます。
ただし、くみ取り式のトイレをリフォームする際には少し注意が必要です。せっかくお金をかけてリフォームしても、数年以内に今度は水洗トイレへのリフォームが必要になるかもしれません。というのも、くみ取り式のトイレを使用している場合は、「公共の下水道設備が整ったらなるべく早く水洗トイレへ切り替えなければならない」と下水道法で定められているのです。
もしもトイレをくみ取り式のままリフォームする予定なら、近隣で下水道設備の整う予定がないかどうかを自治体へ確認してから進めると良いでしょう。
なお、くみ取り式のトイレを水洗トイレに変える場合は、「下水道」と「浄化槽」どちらかの処理方法を選びます。その際は、トイレだけでなく、台所や風呂場などからの排水も全て「下水道」もしくは「浄化槽」へ流れるように設備を整えなければいけません。
では、「下水道」と「浄化槽」にはどんな違いがあるのでしょうか。
2.下水道(下水処理場)
「下水道」とは、生活排水を下水処理場で浄水する方法です。
私たちが使用した水は、全て下水道管を通って下水処理場へ流れていきます。トイレだけでなく、台所や洗面所、お風呂場などから排水する使用済みの水が、全て下水道管へ流れていくということです。
一方、公共の下水道設備が整っていない多くのエリアでは、台所やお風呂場などの排水だけが下水道へ流れ、雨水はそのまま用水路や川へ流れます(分流式)。
なお、下水処理場で浄水された水は海や川へ戻されます。
3.浄化槽
続いて紹介するトイレの処理方法は、「浄化槽」です。
浄化槽とは、その名の通り、生活排水を浄化する(キレイにする)設備のこと。分かりやすく言い換えるなら、下水処理場のミニチュア版といったところでしょうか。
浄化槽には「単独浄化槽」と「合併浄化槽」の2種類があり、合併浄化槽の設置には補助金を支給する自治体が多くあります。
まずは、単独浄化槽から解説しましょう。
・単独浄化槽とは
単独浄化槽とは、トイレの排水のみを浄化する設備のことです。その他の生活排水は、そのまま川へ流れます。
環境汚染を防ぐために改正された浄化槽法により、2001年4月から単独浄化槽の新設は禁止となりました。しかし、法改正前に設置された単独浄化槽を使用している家庭も多くあります。
浄化槽法では「単独浄化槽の使用者は合併浄化槽への転換に努めなければならない」と定められていますので、購入する中古物件に単独浄化槽が設置してある場合は合併浄化槽への転換を検討しましょう。
【単独浄化槽から合併浄化槽へ転換する場合の補助金制度】
単独浄化槽から合併浄化槽への転換にかかる費用については、多くの自治体が補助制度を設けています。
たとえば、徳島県の名西郡(みょうざいぐん)石井町では、対象地域で10人槽までの合併浄化槽へ転換する場合に、既存の浄化槽を撤去する費用を含めて最大で55万円の補助金を受けられるそうです(※1)。
また、埼玉県日高市では、50件を上限に転換費用の一部を補助してくれます(※2)。10人槽の合併浄化槽へ転換する場合の上限は、81万8,000円。実際の工事費と比べ、低い方の金額が支給されます。さらに、撤去処分費や浄化槽に接続する配管費の補助金も支給されるそうです。
補助金の内容や条件は自治体によって異なりますので、合併浄化槽を設置したい人は一度チェックしてみてください。
・合併浄化槽とは
続いて、合併浄化槽について解説します。
合併浄化槽とは、トイレだけでなく、家庭からの排水を全て処理する浄化槽のことです。
公共の下水道設備が整っていないエリアで水洗式のトイレを使いたければ、合併浄化槽を設置するしかありません。
合併浄化槽には、「高度処理型浄化槽」という種類もあります。高度処理型浄化槽とは、微生物の働きによって浄水された水から、さらに「リン」を除去する浄化槽のことです。
【合併浄化槽を新設する場合の補助金制度】
合併浄化槽を新設する場合にも補助を受けられる制度がありますので、いくつか紹介します。
1つ目は、兵庫県神戸市の「浄化槽設置整備事業(※3)」です。この補助金制度では設置する浄化槽の容量によって補助金額が決まっていて、10~50人槽までの浄化槽に対しては117万円の補助を受けられます。
次に紹介するのは、静岡県駿東郡(すんとうぐん)小山町(おやまちょう)の補助金制度「小山町合併処理浄化槽設置奨励補助金(※4)」です。この制度では、処理対象人員10人以下の合併処理浄化槽を設置する場合に、最大で54万8,000円の補助を受けられます。
どの自治体も補助金には細かい条件がありますので、担当窓口へ問い合わせてから工事の手続きを進めましょう。
なお、高度処理型浄化槽を設置する場合、一般的な合併浄化槽を設置する場合よりも補助金が多くもらえる自治体もあります。
■番外編:エコ性能ナンバーワンの「バイオトイレ」
最後に、番外編として「バイオトイレ」を紹介します。
「バイオトイレ」とは、微生物の働きによって排せつ物を分解するトイレのこと。「コンポストトイレ(コンポスト=堆肥)」と呼ばれることもあり、水を使わないため節水トイレよりもエコだと言われています。
このトイレに使用するのは、おがくずや木製のチップのみです。手動のハンドルを週に1~2回まわしてタンク内をかき混ぜていれば、1か月ほどで堆肥が出来上がります。(電動タイプもあり)もちろん、堆肥として使用せず、そのまま使用し続けることも可能です。その場合は、年に数回おがくずやチップを交換します。
意外なことに、バイオトイレや完成した堆肥には臭いがほとんどありません
さらにうれしいのは、維持費が安いこと。くみ取り式であればくみ取り料金がかかりますし、水洗トイレであれば水道代がかかります。しかし、バイオトイレにかかるのは最初の設置費用と、おがくずや木製チップの購入費のみです。
※水洗タイプや電動タイプを選べば、ここに水道代や電気代が加わります
水道も電気もない場所に設置できることから、災害時にも利用できるトイレとして注目され始めているバイオトイレ。移住後に農業を始めたいと考えている人にも、バイオトイレのエコな機能が役立ちそうですね。
まとめ
今日は、「浄化槽って何?」という人のために、トイレの処理方法と浄化槽の設置にまつわる補助金制度について解説しました。浄化槽を転換する際には補助金が出ても、新設する際には補助金が出ない自治体もあります。公共の下水道設備が整っていない地域への移住を考えている人は、事前にしっかりチェックしましょう。
(※1)平成31年度の浄化槽設置整備事業補助金の申請受付を開始しました|石井町役場:https://www.town.ishii.lg.jp/docs/2018032800022/
(※2)平成31年度合併処理浄化槽転換補助金制度|日高市役所:https://www.city.hidaka.lg.jp/life_procedure/8/2/3385.html
(※3)神戸市浄化槽設置整備事業(補助金事業)|神戸市役所:http://www.city.kobe.lg.jp/life/recycle/environmental/cleanup/jokaso/hozyo.html
(※4)合併浄化槽設置補助金|小山町:http://www.fuji-oyama.jp/kurashi_04_jokasohojokin.html