もしも不動産が差押えられてしまったら、どう対処すればよい?取り返す方法はあるか?
病気をしてしまって働けなくなってしまった。転職したがうまくいかない。さまざまな理由で住宅ローンの支払いが滞ってしまったら、いきなりではありませんが、その先にあるのが「不動産の差押え(さしおさえ)」です。
では、不動産の差押えとは一体どういったもので、どうなるのか?
それに対処するのはどうすればいいのか?今回は、不動産の差押えについて、ご説明します。
差押えとは、財産を処分する権利を法的に失うこと
「差押え」とは、個人が財産の権利や処分を行うことを国が法的に禁止し、お金に変換出来る状態におくことを言います。
例をあげれば、転職をしたがうまくいかず、再び離職してしまい無職となってしまった。そのせいで収入が途絶えてしまい、住宅ローンが払えない状態に。その一方で、銀行は住宅ローンを組む際に、住宅と土地を担保としていたわけですので、その家と土地をお金に変える状態をイメージするとわかり易いでしょう。
差押えには3つの種類がある
差押えは3つあります。
- 刑事法上の差押え
- 民事法上の差押え
- 行政法上の差押え
刑事法上の差押え
テレビのニュースでみなさんも目にしたことがあると思います。警察官や検察官が押収品を詰めた段ボールを被疑者の自宅などから運び出すシーン。あれも差押えの1つです。
民事法上の差押え
これは私たちに深く関わってくる差押えです。身近なものとして、先ほど例にあげた住宅ローンが滞ったことからの不動産の差押えが、この民法上の差押えにあたります。私人と私人の間に民法が入り、債権者が損しないように計らう形になります。例で言えば、銀行と私たち住宅ローンの融資を受けた者の間に裁判所が入って、銀行が損をしない手筈を整えるということです。
行政法上の差押え
こちらの差押えも私たちの身近なもの。納税の滞納などによる差押えが行政法上の差押えにあたります。その際は、市区町村が債権者となって、債権回収にあたります。
このように、民法上の差押え、行政法上の差押えは私たちの身近なものであり、他人事ではありません。こうした差押えは、債務者の動きを制限して、債権者の不利にならないよう法的に取り計らいます。
- 財産隠しの防止
- 財産の勝手な譲渡
- 財産を処分して、債権者に不利にならないようにすること
- 債務返済以外の理由や使用用途で、資産処分しないようにすること
住宅ローンの返済が出来ないとき
住宅を購入する際は「銀行から融資を受け、住宅ローンを組む」のが一般的です。そして、住宅ローンを設定する際は、必ず住宅と土地を担保にします。抵当権の設定です。銀行との間に司法書士が入って、「抵当権設定登記」手続きを行います。
ですので、住宅ローンが滞ると、債権者は担保としている住宅と土地を売って、債権の取り立てに充てます。ただし、民法上のやり取りとなるので、銀行が直接、強制的に行うのではなく、間に裁判所が入り、住宅と土地が競売にかけられ、売却されます。抵当権の実行です。
差し押さえまでの流れ
住宅ローンが滞ってしまったら、住宅と土地が抵当権の実行ということで、差し押さえられると話しました。といっても、住宅ローンの支払い日を1ヵ月滞納してしまったら、競売にかけられるかといえば、そういうわけではありません。
2ヵ月、3ヵ月と住宅ローンの滞納が続くと、まずは「いつ支払いが行われるのか」、支払い計画を問い合わせる連絡が銀行からあります。そして、同時に住宅ローンを指定期日までに支払う旨の督促状が届きます。その督促状に応じない場合、おおよそ半月も待たずして、競売開始通知が送られてくるのが一般的です。
住宅ローンが滞る
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督促状の発行
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銀行が裁判所に競売の申し立て
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裁判所から競売開始通知が届く
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執行官と不動産鑑定士の調査訪問
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売却基準価格の公示
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入札開始
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売却
自宅が差押えられてしまったら
残念なことに住宅ローンが支払えず、住宅と土地を差押えられてしまっても、売却となるまでその住宅に住むことは可能です。売却されるまでは、所有権は債務者のもとにあるからです。住宅を人に貸している場合は、当然売却されるまで所有権はありますので、賃料を受け取ることも出来ます。
ただし、売却されてしまえば、当然のことですが所有権は購入した人へと移るので、住むことも賃料を得ることも出来なくなります。考え方によっては住宅を差押えられたからといって、すぐに住宅を明け渡さなければいけないわけではないので、競売にかけられた際のメリットととれなくもありません。
任意売却と競売
どうにもこうにも住宅ローンを払い続けることが出来ない場合、競売に住宅と土地がかけられ、売れた代金で銀行に返済する形も1つの選択肢ではあります。ですが実は、競売に住宅がかけられる場合は、市場相場のおよそ7割前後の値段で売買されるのが一般的。それよりも、任意売却と言って、競売ではなく第三者に売却する方が高く売れる傾向にあります。
任意売却とは、債権者と債務者の合意に基づいて、第三者間との間で住宅や土地を売却することを言います。どうせ競売にかけられるという状況の場合は、競売よりも任意売却で不動産を売却する方が、高値で販売出来るので得と言ったら言葉に語弊がありますが有利です。
競売申立の取り下げ
任意売却する場合は、競売を取り下げてもらう必要があります。これを「競売申立(けいばいもうしたて)の取り下げ」といい、債権者(住宅ローンであれば銀行)に任意売却で返済する旨を伝えて、競売にかける申立を取り下げてもらうことが出来ます。ただし、申立の取り下げは、売却前であればすんなりと取り下げることが可能ですが、売却後の場合は買った人の同意が必要となり、そうなった場合はほぼ不可能と考えた方が妥当でしょう。
税金の未納による滞納処分
住宅ローンの返済はなんとか出来るようになり、差押えは免れそうとホッと一息ついたとき、固定資産税、国民健康保険料、地方税、など、税金関係はどうなっているでしょうか?
よく耳にするのは、こうした税金関係の未納と住宅ローンの支払いは密接な関係にあり、どちらかだけきちんと支払いを続けるといった状況は難しいと聞きます。
納税の滞納による処分も住宅ローンを例にしたとき同様、最初は督促状が届き、今後の支払い方法について、市区町村と相談、決定をしていきます。その支払い手順も踏めない場合、差押決定通知書が届けれ、市区町村の場合は公売にて不動産を売却する形になります。
不動産の差押えで困る事とは
不動産の差押えで困る事は多数あります。
- 資産の消失の前段階であること
- 登記事項証明書に記載されるため、社会的信用がなくなる
- 売却されてしまえば、住む場所がなくなること
- 当然、他の融資を受けることが出来なくなること
住宅ローンの返済、納税の滞納、いずれの場合にせよ差押えをされたら、そのデメリットは大きいものと捉えるべきでしょう。要は契約不履行からの強制執行ですので、そのような場面に立たされた場合は、弁護士に相談して、ベストな返済方法を検討するのが望ましいです。
差押えの解除、抹消の仕方とは
住宅ローン滞納による差押えを解除するには、返済計画を債権者にきちんと示す必要があります。資金繰りが計画立てて履行出来る場合はその旨を伝え、競売申立の取り下げをしてもらう形になりますが、そこまで進んでいる段階の場合は、大方、返済は任意売却か競売で返済する形になるのが現実的です。
また、行政法上の滞納による差押えも同様に、解除するには支払いが基本となり、また、以下の場合でも、差押えは解除されます。
- 滞納分を完済
- 一部の弁済を話し合い、支払い分を軽減してもらい、支払い計画を立てる
- 差押え不動産の価値より、滞納分が少ない状態まで支払う
- 滞納処分の執行停止したとき
まとめ
差し押さえに関する基本的情報を得ることは出来ましたか?
差し押さえが現実となるとき、冷静な判断と対処が求められます。まずは弁護士に相談したうえで、すみやかに対応しましょう。そして、少しでも明るい未来へと、前進することをおススメします。