不動産関連の印紙代と軽減措置の内容をおさらい!貼らなかったらどうなるの?
不動産売買の折に必要な印紙代。どうして必要なのかご存じですか?
印紙を貼らないと一体どうなってしまうのでしょうか。
不動産売買だけでなく、建築工事や土地の賃貸借契約書など、他にも印紙代が必要な場面はあります。
今回は、不動産関連の印紙代と軽減措置について、その内容をおさらいします。
印紙代の対象となる文書、対象外の文書も整理しつつ、具体的にどのぐらいかかるのかを確認していきましょう。
不動産売買の書類に印紙が必要な理由と書類の種類
不動産売買の書類には、必要だからということで印紙を貼っているけれど、なぜ必要なのかと問われるとよくわからない、という人は少なくありません。ここでは、どうして印紙は必要なのか、もし印紙を貼らなかった場合はどうなるのかについて説明します。また、印紙を貼る必要のある文書とそうでない文書の違いについても解説しますので、この機会に確認しておきましょう。
印紙代は国へ納める「流通税」の一種
印紙代は、簡潔に言えば国に納める税金です。印紙を購入して、必要な書類に貼ることで、国に商取引に対する税金を納めることになります。印紙代は流通税の一種で、不動産取得税や自動車重量税も流通税の仲間です。
印紙を貼る必要がある文書は、すべて商取引に関係する文書なので、同じような売買取引でも、商売に関係しない私的な取引は印紙税を貼る対象ではありません。印紙は必要な書類に貼り、さらにその上から消印することで、初めて納税とみなされます。
印紙は、郵便局やコンビニ、金券ショップで販売されています。ただし、コンビニでは200円の印紙は売られていますが、高額の印紙は郵便局でしか取り扱いがありません。不動産取引に関する書類に高額印紙を貼りたい場合は、郵便局に行くようにしましょう。
印紙を貼らなかったらどうなる?
印紙を貼らないままその文書を使っていても、多くの場合その文書は税務署でのチェック対象なので、見つかると脱税とみなされます。その場合、必要だった印紙代の3倍を後から過怠税(かたいぜい)として徴収される可能性もあるので、印紙は必ず貼りましょう。もし印紙代の貼り忘れに気づいた場合、自主的に申し出ることによって、過怠税を1.1倍にしてもらえるケースもあります。
課税文書・非課税文書・不課税文書の違いとは
印紙代が必要な文書は「課税文書」と呼ばれ、印紙税法によって第1号文書から第20号文書まで、全20種類もの文書が課税文書として定められています。課税文書の中でも、軽薄金額が少ないなどの理由で非課税文書になるものがあり、各号に「主な非課税文書」という注釈がつけられています。印紙税法によって定めのない文書はすべて「不課税文書」です。まとめるとそれぞれ以下のようになります。
- 課税文書 :印紙税法に定められた課税対象の文書
- 非課税文書:課税文書の中でも経学金額が少ないなどの理由で課税対象外の文書、印紙は不要
- 不課税文書:印紙税法で何の定めもない文書で印紙は不要
では、具体的に不動産関連の書類で印紙が必要な文書について見ていきましょう。
不動産に関わる取引に必要な書類と印紙代
不動産取引に関連して印紙が必要となる課税文書は以下の通りです。
【第1号文書】
- 不動産売買契約書
- 土地の賃貸借契約書
- 金銭消費貸借契約書
【第2号文書】
- 建築請負契約書
- 工事請負契約書
【第17号文書】
- 不動産の売買代金の受取書
- 不動産の賃貸料の受取書など
それぞれについて、必要な印紙代をまとめましたのでご覧ください。
第1号文書の印紙代
第1号文書とは、不動産の売買や土地・金銭の賃貸借などに関する契約書が指定されています。文書の種類は以下の通りです。
- 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
- 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
- 消費貸借に関する契約書
- 運送に関する契約書
不動産取引で第1号文書に当たる書類は以下の通りです。
- 上記1に相当する文書:不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書
- 上記2に相当する文書:土地の賃貸借契約書、土地賃料変更契約書
- 上記3に相当する文書:金銭消費貸借契約書
第1号文書の印紙代をまとめると以下の通りとなります。なお、1万円未満は非課税文書となり、印紙代はかかりません。
記載された契約金額(税抜) |
印紙代 |
|
1 |
1万円以上 10万円以下
契約金額の記載がないもの |
200円 |
10万円以上 50万円以下 |
400円 |
|
2 |
50万円を超え 100万円以下 |
1,000円 |
3 |
100万円を超え 500万円以下 |
2,000円 |
4 |
500万円を超え1,000万円以下 |
10,000円 |
5 |
1,000万円を超え5,000万円以下 |
20,000円 |
6 |
5,000万円を超え1億円以下 |
60,000円 |
7 |
1億円を超え5億円以下 |
100,000円 |
8 |
5億円を超え10億円以下 |
200,000円 |
9 |
10億円を超え50億円以下 |
400,000円 |
10 |
50億円を超えるもの |
600,000円 |
ただし、第1号文書のうち1に相当する文書(不動産売買契約書など)は、2020年3月31日まで軽減措置が設けられており、印紙代は以下の通り軽減されています。
記載された契約金額(税抜) |
印紙代 |
|
1 |
1万円以上 50万円以下
契約金額の記載がないもの |
200円 |
2 |
50万円を超え 100万円以下 |
500円 |
3 |
100万円を超え 500万円以下 |
1,000円 |
4 |
500万円を超え1,000万円以下 |
5,000円 |
5 |
1,000万円を超え5,000万円以下 |
10,000円 |
6 |
5,000万円を超え1億円以下 |
30,000円 |
7 |
1億円を超え5億円以下 |
60,000円 |
8 |
5億円を超え10億円以下 |
160,000円 |
9 |
10億円を超え50億円以下 |
320,000円 |
10 |
50億円を超えるもの |
480,000円 |
第2号文書の印紙代
第2号文書は、作業の請負に関する契約書が指定されています。不動産関連で第2号文書に当たる書類は以下の通りです。
- 建築請負契約書
- 工事請負契約書
第2号文書の印紙代をまとめると以下の通りとなります。この印紙代は、2020年3月31日までの軽減措置によるものですのでご注意ください。なお1万円未満は非課税文書となり、印紙代はかかりません。
記載された契約金額(税抜) |
印紙代 |
|
1万円以上 100万円以下
契約金額の記載がないもの |
200円 |
|
1 |
100万円以上 200万円以下 |
400円 |
2 |
200万円を超え 300万円以下 |
1,000円 |
3 |
300万円を超え 500万円以下 |
2,000円 |
4 |
500万円を超え1,000万円以下 |
10,000円 |
5 |
1,000万円を超え5,000万円以下 |
20,000円 |
6 |
5,000万円を超え1億円以下 |
60,000円 |
7 |
1億円を超え5億円以下 |
100,000円 |
8 |
5億円を超え10億円以下 |
200,000円 |
9 |
10億円を超え50億円以下 |
400,000円 |
10 |
50億円を超えるもの |
600,000円 |
なお、建設業法第2条第1項に規定する建設工事の請負にかかる契約に基づき作成されるもの(建築請負契約書や工事請負契約書など)は、2020年3月31日まで軽減措置が設けられており、印紙代は以下の通り軽減されています。
記載された契約金額(税抜) |
印紙代 |
|
1 |
1万円以上 200万円以下
契約金額の記載がないもの |
200円 |
2 |
200万円を超え 300万円以下 |
500円 |
3 |
300万円を超え 500万円以下 |
1,000円 |
4 |
500万円を超え1,000万円以下 |
5,000円 |
5 |
1,000万円を超え5,000万円以下 |
10,000円 |
6 |
5,000万円を超え1億円以下 |
30,000円 |
7 |
1億円を超え5億円以下 |
60,000円 |
8 |
5億円を超え10億円以下 |
160,000円 |
9 |
10億円を超え50億円以下 |
320,000円 |
10 |
50億円を超えるもの |
480,000円 |
第17号文書の印紙代
第17号文書は、代金の受け取りを示す受取書・領収書に相当する書類です。不動産関連では、以下のような受取書が大17号文書になります。
- 不動産の売買代金の受取書
- 不動産の賃貸料の受取書など
第17号文書には軽減措置がありません。以下の印紙代が定められています。
記載された契約金額(税抜) |
印紙代 |
|
1 |
5万円以上100万円以下
受取金額の記載のないもの |
200円 |
2 |
100万円を超え200万円以下 |
400円 |
3 |
200万円を超え 300万円以下 |
600円 |
4 |
300万円を超え500万円以下 |
1,000円 |
5 |
500万円を超え1,000万円以下 |
2,000円 |
6 |
1,000万円を超え2,000万円以下 |
4,000円 |
7 |
2,000万円を超え3,000万円以下 |
6,000円 |
8 |
3,000万円を超え5,000万円以下 |
10,000円 |
9 |
5,000万円を超え1億円以下 |
20,000円 |
10 |
1億円を超え2億円以下 |
40,000円 |
11 |
2億円を超え3億円以下 |
60,000円 |
12 |
3億円を超え5億円以下 |
100,000円 |
13 |
5億円を超え10億円以下 |
150,000円 |
14 |
10億円を超えるもの |
200,000円 |
*5万円未満は非課税文書となり、印紙代はかかりません。
印紙を使用するときの注意事項
印紙代は基本的に作成者が負担
印紙代は、基本的に書類の作成者が負担します。ただし、不動産売買契約書のように売主と買主が共同で作成する場合は、それぞれが1通ずつ計2通作成し、それぞれが印紙代を支払うのが一般的です。
売主は必ず不動産売買契約書を保存している必要はないため、売主側が単なるコピーとして不動産売買契約書を持つ場合は、印紙代は必要ありません。
しかし、コピーとして保管した契約書には、契約の証明能力は「ない」とみなされます。もしその契約内容などで訴訟が起こった場合、何らかの問題が起こる可能性がある点には注意してください。
契約を電子文書ですべて行う場合印紙代は不要
契約の書類や署名などをすべて電子データで行う場合、紙媒体としての契約書はありませんが、この場合印紙代はかかるのでしょうか。電子データでの契約書について、印紙税法に明確な取り決めはありません。ただし、国税庁サイトに掲載されているにより、FAXや電子メールで電子データを送付するだけなら、課税文書の作成には当たらないので印紙税はかからないと明記されています。
電子データでの契約は、電子署名法および電子帳簿保存法に則って作成されていれば、書面の文書と同等の法的な効力が認められます。多くの不動産取引をする場合は、電子契約に切り替えることで印紙代だけでなく郵送代なども節約可能です。
まとめ
不動産取引における印紙代について解説しました。不動産取引に関する主な課税文書3種類について、契約金額・受取金額ごとの印紙代を一覧形式でご紹介しました。2020年3月31日まで軽減措置のある文書もいくつかあり、特に第1号文書に当たる不動産売買契約書は不動産取引の要となる書類なので、印紙代を間違えないように注意しましょう。