結婚後、最大級の問題である老親との同居問題……。夫婦仲が良くても、同居が原因で離婚に発展する夫婦は存在します。また、「久しぶりに会った親を見たときに、随分と年を取ったように感じる」「いつまでも生きているわけではないから親孝行をしたい」などと考える方も少なくないのでは?
そこで、今回は老親と同居をする上で注意することと二世帯住宅のタイプを紹介します。
老親と同居をする際に確認しておくべき5つのポイント
老親との同居で負担が増えるのは、自分だけではありません。一般的に、妻の負担が一番に増えて、子どもにも影響が出ます。
少しでも家族のストレスを減らすために、確認事項を見ていきましょう。
確認ポイント1.毎月の光熱費の負担割合
二世帯住宅について調べていくと、光熱費が下がったという意見がチラホラ。
しかし、よく調べてみると、負担割合を決めて支払うようにしていることが分かります。自分たち夫婦が一括して支払っているという方は、同居前と大きな違いはないか、増えている方がほとんど。
月々わずかな金額とはいえ、積み重なれば相当な額になります。小さいモヤモヤがくすぶり続けて、不満が噴き出すことも。光熱費は老親と折半をするか、人数割で負担するのがおすすめです。
確認ポイント2.食事はまとめて作る?それとも別々?
家族分の食事だけを作るのも、老親の分を含めて作るのも、手間はさほど変わりません。
食費を減らすならばまとめて作った方がいいのですが、食の好みが違う可能性も。作っても食べてもらえない料理は、作り手にとって精神的苦痛です。
食の好みが合っているなら、老親の分もまとめて作ってよいでしょう。しかし、食費は折半することをおすすめします。
また、外食をする日の夕食を用意するのどうかという点についても、あらかじめ決めておくと余計なストレスがかかりません。
外食しているのだから家で食べないでしょ? と思う人も多いと思いますが、家でおかずをつまむ感覚の老親が少なからずいます。
不要ないざこざを防ぐためにも、細かい部分まで決めておきましょう。
確認ポイント3.税金の問題
毎年かかる固定資産税は安い金額ではありません。トラブルを避けるためにも、登記方法と支払う割合を相談しておきましょう。
二世帯住宅を登記する場合、老親と子で1戸の住宅を共有して保持する登記方法(共有登記)と、老親と子がそれぞれ1戸ずつ住宅を保持する登記方法(区分登記)があります。
- 共有登記:二世帯住宅は1戸と数える
- 区分登記:二世帯住宅は老親と子で2戸と数える
おすすめは、区分登記です。
2戸計算される区分登記ならば、土地200平米までが小規模住宅用地として扱われます。課税標準額が6分の1に減税される措置です。2戸計算ですので、200平米×2戸で400平米までが小規模住宅用地になります。
住宅部分の税金については、新築ならば床面積120平米までが最初の3年間で半分に。区分登記なら2戸分なので、120平米×2戸で240平米まで軽減されます。
区分登記をすることで、土地にかかる税金と家にかかる税金が抑えられるのです。
しかし、いくら安くなるとはいえ、全額を子世帯が負担するのはいただけません。老親と相談しながら負担率についても話し合いましょう。
確認ポイント4.友人を招待できるかどうか
シェア部分を広く取っている住宅で多い悩みが、友人を招待しにくいというものです。
妻がママ友を家に招くにしても、夫婦共通の友人を招くにしても、老親がいると何かと気を使います。仮に招待しても、本音で話せない可能性があるでしょう。
そのため、家ではなくカフェやファミリーレストランで会うことになります。せっかく家があるのに……と感じる瞬間です。
確認ポイント5.趣味や生活サイクルの違い
カルチャーセンターなどが充実していて、年を取ってから趣味にのめり込む老親がいます。
1人で楽しんでくれればいいのですが、ほかの家族を巻き込むことも……。
- 行きたくもないキャンプに連れて行かれ、結果的に片付けを押し付けられる
- カルチャーセンターへの送迎を強要される
- 活動費用をせびられる
といったことが起こる可能性は、なきしにもあらずです。
事前に話し合い、協力する面としない面をはっきりさせておきましょう。
離婚率高し!夫の老親との同居は妻に寄り添うべし
夫の老親との同居を始めると、離婚率や別居率が跳ね上がります。
妻にとって、夫の老親は赤の他人。しかし、老親にとって息子の妻は他人ではありません。そのギャップが悲劇を生みます。
片方はお願いや意見があっても言いにくく、片や、してほしいことや思ったことがあれば何でも言える。しかも、年を取れば人は頑固になりやすいです。
妻のストレスは増すばかり……。
そんなとき、離婚を避けるためには夫の心配りが重要なポイントとなります。妻に寄り添い、代わりに老親に意見を伝えることが大切。
老親側に立ち、妻にさらなる負担を強いれば離婚の足音はすぐそこです。
妻の老親との同居はプライベート空間を確保しよう
共働き夫婦が増えてきたことに比例して、こちらも増えたマスオさん状態の同居。
サザエさん宅のような関係を築ければ問題ありませんが、現実には気の遣い合いが抜けません。四六時中、気を使うことは双方ともに疲れます。
そこで必要なのが、プライベートを確保できる空間。シアタールームや趣味に没頭できる部屋などが望ましいです。
夫が息を抜ける場所があることで、関係はうまくいきます。
老親との同居はどんなタイプの家がいいのか?
二世帯住宅には主に4つの種類があり、それぞれ快適に暮らせるよう考えられています。
タイプ1.互いにあまり干渉しないことが前提の完全別離型
引用元:重量木骨の家
完全別離型の住宅は、必要以上に干渉しないことを条件に建てられる二世帯住宅です。
夫婦でさえ共に暮らせば問題が起こるのに、さらに他人の老親との同居は難しいのが現状。
この家は、手助けが必要なときには声をかけられる位置にいて、必要ないときには核家族として暮らせます。
また、老親が亡くなった後には空いたスペースを賃貸として貸し出し、収入を得ることもできます。2戸ともシェアハウスとして貸し出して、自分たちはもっと利便のいいところに引っ越すのも手。
売却も比較的スムーズにいくと評判です。
タイプ2.シェア空間で繋がっている隣居型
引用元:セキスイハウスの二世帯住宅
子世帯の住居部分と老親の住居部分がシェア空間でつながっているのが、隣居型の特徴です。
それぞれの生活が守られつつ、シェア空間で見守ることができます。とはいえ、なかなかうまくいかないケースもあるのが現実です。
シェア空間はテラスのような部屋だったり、リビングのような部屋だったり、さまざまです。忙しくても、顔を合わせれば会話をしないわけにはいきません。生活サイクルの違いも顕著に表れます。
老親と鉢合わせしたくない妻が耳をすまして忍者のようにシェア空間を移動している瞬間を、目撃するかもしれません。
タイプ3.出入り口だけで共有している玄関共有型
1階を老親が使い、2階を子世帯が使うという横割り型で、玄関だけを共有しているのが玄関共有型です。
老親に1階で暮らしてもらうことで、将来的に介護がしやすくなります。
お風呂やトイレ、キッチンは1階・2階それぞれに備えられており、その点においては不便を感じません。
問題は、生活音です。マンションやアパートのように、洗濯をする音、料理をする音、足音などが聞こえてくるため、生活サイクルが違うと余計に気になります。
タイプ4.介護がしやすい完全共有型
家・部屋を全く分けず、1つ屋根の下で暮らすのが完全共有型です。
すぐにでも介護が必要な老親との同居には、このタイプが便利。
しかし、将来的には介護が必要だからと、早いうちからこのタイプの住宅にするのはおすすめしません。子家族への干渉から生活サイクルの違い、子の生活を無視した「お願い」などが考えられるからです。ヘタをすると、介護が必要になる前に離婚か別居になるかも……。
完全共有型の二世帯住宅は十分にタイミングを図りましょう。
まとめ
今は元気でも、いつかは年を取り、子の助けが必要となる老親との同居問題。簡単な気持ちで同居をスタートして、離婚だ、別居だとなっている例は後を絶ちません。
一方、完全別離型の二世帯住宅なら、まだうまくいっている家族が多いです。これからのお金の支払い方なども確認しつつ、老親との同居も考えてみてはいかがでしょうか?