老後2000万円問題をクリアする資産形成 ~ファイナンシャルプランナー佐藤麻衣子さん

老後資金の問題がマスコミを騒がせています。
十分な老後資金は2,000万円とも言われますが、その老後資金を貯めるにはどのようにすればよいのでしょうか?
今回は、ファイナンシャルプランナーとして活躍されている佐藤麻衣子さんに、明るい老後に向けての資産形成の組み立て方について寄稿していただきました。
最後に、佐藤さんのプロフィールも記載しています。

 

資産形成をするには、自分サイズの備えを知ることから

私は普段、企業型の確定拠出年金の導入支援や、ライフプラン研修・投資教育などの仕事をしています。働き方もライフスタイルも多様化している時代。資産形成をするときもライフプランをベースに自分の年金額を把握し、「自分サイズの備え」を知ることが大切です。今回は、多くの人に取り入れやすい資産形成の組み立て方を整理します。

 

まずは、ライフプランから逆算してみる

シンプルですが「ライフプランから逆算して仕組み化すること」です。

マラソンと同じで、大きな目標を達成するために、どのくらいのペース配分でいけばいいのかを知っておくことが大切。「なーんだ、そんなこと?」と思うかも知れませんが、実は自分に必要な貯蓄のペースを把握していない人は多いのではないでしょうか?

老後まであと何年か、自分が毎月捻出できるお金はどのくらいか、どのくらいの利回りで運用できたらいいかを組み立ててみると「何をしたらいいのか」がわかり、行動につながっていきます。

 

老後になって「お金がない!」とならないための3つのポイント

成功するポイントは3つです。

  • ライフプランをイメージすること
  • 無理のないペース配分
  • 仕組み化

まずは何のためにやっているのか、目的や意義が明確になっていること。

これは一度ライフプランをたててキャッシュフロー表を作成してみることで認識できるようになります。今は困っていなくても、無職の年金生活を想定したケースで老後までにいくら必要かを数字で見ることで、「このままじゃ将来まずいぞ」と目的や必要性が明確になります。

支出には、生活するために最低限「必要」なものと、あったらいいなという「欲求」を満たすためのものがあります。必要を満たしたうえで欲求を満たすことにお金を使うというのが家計管理の基本的な考え方。

長い期間をかけてお金を貯めていると「あの服欲しいなぁ・・・老後の貯蓄から数万円だけ引き出しちゃおうかな、あとで足せばいいよね」といったように、決心が揺らぐことが多々あります。これが一番注意したいところ。

老後働けなくなったときに「必要」なお金がないという状態になることと、今「欲しい」服を手に入れることを天秤にかけるイメージを持てるかどうかが大切です。
通帳の残高が数百円になり、食べたいものを食べられず、電気代が惜しくてエアコンもつけられず、病院に行くこともできない―――不安で悲しい気持ちになりますよね。

現役時代は体力も収入もあり痛みを感じないと思うのですが、人生という長いスパンで「必要」を満たすために、将来の自分へ「必要」なお金を仕送りする気持ちで、老後資金用の口座をつくり仕組み化することが大切です。

 

30歳の会社員、iDeCoとつみたてNISAを活用したモデルケース

60歳までに2,000万円貯めることを目標に、30歳の会社員のケースで考えてみましょう。万が一の時の流動性も考えて、毎月1万円をイデコに、1万円をつみたてNISAに、1万円を貯金に合計3万円を貯めることをベースに、組み立てていきます。

積立の計算において、ファイナンシャルプランニングでは「年金終価係数」というものを使います。これは、一定の期間、同じ利率で複利運用にて積み立てた場合、最終的にいくらになるのかを計算するもの。(今はネット上の積立計算サイトなどで簡単に計算できるのでサイトを使うことをおすすめします)運用できる期間と利率からどのくらいの収益が期待できそうかを把握することが大切です。

まずはこの考え方で、毎月の積立で形成できる金額をざっくり把握します。

元金 期待される運用収益等
iDeCo 1万円×12か月×30年=360万円 想定利回り2%:約133万円軽減される税金(所得税10%、住民税10%と仮定):約72万円
つみたてNISA 1万円×12か月×30年=360万円 想定利回り2%:約133万円
貯蓄 1万円×12か月×30年=360万円 0とする
合計 1,080万円 338万円

1,418万円ほどになりそうだとわかりますね。あとは不足する約600万円をどうするか。

600万円を30年で割ると毎年の不足は20万円、これを追加で貯められれば2,000万円に届きそうです。毎月の生活費に余裕があればiDeCoなど税制優遇の受けられる口座を優先して積立額を増やしてもいいですが、余裕がなければ「ボーナスから貯蓄する」「収入を上げられるようにする」「副業で捻出する」「退職金で賄う」など年20万円/総額600万円をクリアする方法を自分のやりやすい方法で組み立てていけば、無理なく達成できるのではないでしょうか。

 

リスクや非課税枠を考えた出口戦略を立てる

iDeCoやつみたてNISAを活用した運用では、必ずしも期待した利回りが得られるとは限りません。使う時期が先であれば多少相場が動いても運用を続けていいと考えますが、リスク資産での運用は減る可能性もあることは忘れずに、50代を超えて使う時期が近づいてきたらリスクを抑えた運用に切り替えるなど、出口戦略も考える必要があります。

iDeCoであれば退職所得控除や公的年金等控除の対象になり、つみたてNISAには20年という非課税枠の期限があります。こういった税制の条件も整理して、ライフプランに適した取り崩し方を考えていくことがポイントです。

 

時間がないなら別の打ち手でカバーする道もあるが、できるだけ早く始めるのがベスト

収入や生活水準、資産の状況によって人それぞれなので一概に何歳からが始めたらいいとは言えないもの。ただ、せっかくの税制優遇も枠を使わなければ時間とともにどんどん消えていってしまいます。できるだけ早くできる範囲のことをするのがベストといえるのではないでしょうか。

前述の事例では30歳から資産形成を始めましたが、もし50歳から始めれば、毎月の積立額が多くなり使う時期も近いために無理な運用はできない、税制優遇の恩恵を受けられる期間が短い、といったように資産運用のハードルは高くなります。

準備が間に合わず、貯蓄だけでは老後の生活費を賄えなければ、長く働くことや、同居などで生活費を大幅に削減すること、医療や介護の費用が掛からないよう健康に気を付けて生活するなど、別の打ち手でカバーする道もあるので、スタートが遅いからと言って諦めず、自分なりのベストなプランを考えてみることが大切です。悩んだら、ファイナンシャルプランナーに相談するのもいいでしょう。

 

困るのは自分自身。大人として社会の仕組みを知り、生活の見通しを持っておくことが大切

「全員」と言いたいところなのですが、ゴールへの道筋がわかっている方が行動しやすいと感じる人、計画的に物事を進めることに安心感を持つ人だと思います。
ライフプラン研修をしていても感じるのですが、「計画的に生きるのは性に合わない」という人もいます。計画をたてなくてもたくさん稼げて無駄遣いせず暮らしていけて、実際に生活に困っていないならそれでもいいのかもしれません。

ただ、計画性がなかったために生活が破綻して生活保護などに頼るとしたら困るのは自分自身ですし、社会保障や税負担などでそのしわ寄せが来るのは次世代の子供たちです。
「こんなはずじゃなかった」とはならない程度に大人として社会の仕組みを知り、ざっくりした生活の見通しを持っておくことは必要です。

ライフプラン研修や確定拠出年金の仕事を通じて「このペースで貯蓄ができれば大丈夫」という見通しが持てると、不安がなくなるだけでなく心の平安や自信が生まれてくると感じます。計画的に無理なく備えて、老後の不安なく毎日を前向きな気持ちで過ごせることが何よりも価値のあること。一度時間を取って将来設計に向き合ってみてはいかがでしょうか?

佐藤麻衣子さん
ウェルス労務管理事務所 代表
社会保険労務士
CFP認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
成城大学卒業後、上場企業の経営企画室にて主にIR(株主向け広報)業務、信託銀行にて、窓口における預金、投資信託・保険などのコンサルティングセールスに従事。退職後、税理士事務所、社会保険労務士法人等勤務を経て2015年に独立。
社会保険労務士業務のほか、年金・資産運用の知識を活かし、企業向けにDCの導入や加入者教育のサービスを提供している。
ウェルス労務管理事務所 https://wealth-sr.com/

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