ゴミだらけの汚部屋になった事情と脱出するまでの話を聞いてきました[40代女性の場合]

  • 2021/5/28
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コロナ禍で精神的に不安定な人が増えているそうで、ゴミだらけの部屋、いわゆる「汚部屋」も増えているそうです。

実は私は片付けが大の苦手なのですが、それにしてもテレビや動画で紹介される汚部屋はレベルが違う!

そこに住む人は、どういう精神状態なのだろう?と前々から気になっていました。そんな話をしていると、仕事つながりの人経由で当事者の方にお話を伺う機会があったので、ここに紹介したいと思います。

元々はきれい好きだった

紹介するのは遠藤佳奈美さん(仮)。40代の女性です。元汚部屋だったのは千葉のマンション。駅近のオートロックで、「なかなか高級そうなマンション」だそうです(リフォームして今でも住んでいます)。

驚いたことに、遠藤さんは元々はとっても綺麗なお部屋をキープする方だったそうです。お母様が非常に厳しい方だったとのことで、片付いているのが当然という環境で育ち、彼女自身もそれが気持ち良い状態だったそう。そんな遠藤さんが上京したのは22歳の頃。最初は、普通のワンルームに住んでいました。

「私が千葉のマンションに住むようになったのは、祖父に生前贈与をうけたのが理由です。祖父は一代でそれなりの財産を作った人だったのですが、そのうちのひとつがこのマンション。愛人を囲うために買ったとか親戚は言ってました。縁起が悪いという人もいましたけど、角部屋で12畳のLDKに8畳の寝室。広いベランダと広いお風呂があれば、断るはずはないですよね」

かくして彼女は29歳で自分名義のマンションを持つことになりました。最初は自分の家だというのがうれしくて、壁紙を変えたりして楽しんでいたそうです。

自分の現状に不安を感じだしたのは同級生の結婚式

そんな彼女に転機が訪れたのは36歳のとき。

仕事はそれなりに楽しかったそうですが、実家の友達が授かり婚をし、結婚式を終えた帰りの新幹線で、突然、焦燥感に襲われたそうです。

「とても仲が良かった友達が結婚し、子供まで授かったことで、私だけ取り残されたような気分になりました。このまま仕事をして一生結婚しないかもしれないけど、それって私の望んできた生き方だっけ?と、漠然とした不安だったように感じます。そう感じた背景には、職場で守られてきた年功序列がなくなって下克上が始まり、年次が低い人が出世をはじめていたこともあります。仕事をバリバリやりたくて上京してきたはずなのに・・・と、それまで見ないようにしていたものが一気に見えてきてしまって、恐くなったのを覚えています」

それでも一時的な不安だとがんばって仕事を続けますが、身が入らなくなっていきます。

最初に乱れたのはトイレだった

ヘトヘトになって帰宅した後、何もできないまま時間が過ぎていくようになった結果、最初に汚れだしたのはトイレだったそう。

「以前であれば、トイレットペーパーを買ったら棚に並べていたのに、袋のまま床に置くようになり、次に女性用の汚物入れがいっぱいになっても上に積むようになりました。誰にも見られないし、いいやと思ったのかもしれません。そのうち、洗濯物を取り込んでも畳むことがなくなり、どんなに量が少なくてもきっちり出していたゴミ出しが、週に一度になり、2週間に1度になり、月に1度になり、そのうちベランダに放置するようになりました」

ゴミをベランダに置くことで、見えなくするようになったのかもしれません。付き合っている人がいるわけでもなく、ちょっとぐらい部屋が汚くても誰にも迷惑をかけない。ちょっとくらい・・・を繰り返すうちに歯止めが効かなくなり、気が付くと部屋にまでゴミ袋をそのまま放置する状態になったそうです。 

またこの頃、それまでは家で沸かしていた麦茶を沸かさなくなり、お茶のパックを買うようになります。夏場は2日に1本ぐらい消費していたそうですが、そのパックを潰すのがめんどくさくてしょうがなく、部屋の片隅にどんどんと積んでいった結果、お茶パックタワーができたそうです。

「生まれてから29歳まで、息をするように家を片付けてきたはずでした。それなのに、部屋がとんでもないことになるのは本当に一瞬で、自分でも何とかしなければいけないと思いつつ、ゴミが溜まれば溜まるほど、きっかけを失い、その一方でストレスが大きくなってきていました」

そうしてどんどんと精神的に追い詰められ、さらにやる気を失い・・・という状態を繰り返したそうです。

「幸か不幸か、それなりのお給料をもらえる会社だった上に、おじいちゃんから家をもらっているので家賃の負担もなくなり、自由になるお金がドンと増えました。その増えたお金で洋服を買うことができたんです。スーツはクリーニングに出し、下着類はいつか洗おうと思いつつ、手元の分がなくなると買っていました。洗濯機の周りは洗われることのない洗濯物があふれていたんです。そのうち感覚が麻痺していき、私は使い捨てで下着を買い換える女だというところに、不思議な安心感のようなものを感じるほどになっていました。明らかに病気だったと思います」

完全なセルフネグレクト状態へ

とはいえ、このころになると、お風呂の中にもゴミが散乱しているので入浴がまともにできなくなったそう。数日に1回の割合で汗は流していたそうですが、髪は常に脂ギッシュ。そのうち、スーツにシミがついていても気にならなくなり、会社の中ではちょっと危険な人と思われ出したそうです。

「かなりヤバイ感じになっても、ごまかせている自信があったんです。においが自分でも気になるので、アロマオイルをやたらと焚いたり、安い香水をやたらとつけたりしていました」

ところがあるとき、新しく配属された人に、「あの人のニオイが辛い」と教育係を変えて欲しいと言われ、それをきっかけに部内で厄介者扱いされていることに気づきます。

「ニオイをニオイでごまかせば、やばいことになりますよね。きっとこの頃は本当にやばかったと思います。私の黒歴史。仕事はできていたつもりですが、実際にはできているはずはなかったと思います」

そしてあるとき、いろいろなストレスが重なって、一時的な健忘状態になります。何もかも忘れ、意味不明なことを言い、人事部の人に精神科に行くことと、休職を進められます。

「ウツじゃないかというのは、ある程度予想していたんですよね。でも、それを認めたくない自分がいた。仕事も休みたくなかった。汚部屋の室内が一番のストレスでしたから。その一方で、ウツだと診断されるとほっとする部分があったのも事実です。薬を飲めば何が変わるきっかけになると思ったからです」

そして彼女は、心療内科の先生に相談し、「もう、自分だけで何とかできるレベルではないから、誰かの手を借りるべき」と言われ、はじめて親戚に頼ることになります。

「それでも母親を呼ぶことはできなかった。そこで、小さいころから仲の良かった、歳の近いいとこに電話し、涙ながらに助けて欲しいと言ったんですよね。すると、すぐに飛んできてくれて、家を見て声もでず、清掃業者に依頼してくれました」

再出発の費用は100万円

ゴミ処理費用とハウスクリーニングは、 1DK にもかかわらず、約60万円かかったそうです。さらに最初に気に入って張り替えた壁紙も、フローリングも、カビが発生していたこともあり、全て張り替えることに。この費用に約35万。合計、約100万円の費用をかけ、部屋を再生したそうです。

「部屋がすっきりすると、もやがかかっていたような頭もすっきりしだし、まともに生きる気力がまた湧いてきた気がしました」

遠藤さんは今でも一人暮らしを続けていますが、シンプルライフを心がけ、余計な物を置かない生活をしているそうです。そして会社は辞め、フリーランスとして無理のない生活をしています。

シンプルな暮らしにはお金もかからないですし、家賃がいらないので、無理をして働かなくてもいいかなと思っています。結婚はあきらめたわけではないけど、子供はもう無理な年齢になり、妙な焦りもなくなりました」

今の家の中の写真を見せていただきましたが、汚部屋だったとは思えないほどシンプルでキレイに片付いていました。ちなみに、いとこは誰にも喋らずにいてくれたことで、母親は娘が修羅場を生きてきたことは今でも知らないそうです。

最後はハッピーエンドな話で、よかったなと思います。

それにしても、片付け好きな人でもヤバイほどになるわけですから、片付け嫌いな私だったらどうなることか・・・。恐いです!

ちなみに、もうひとかた、お話を伺えそうな汚部屋の元住人がいるので、その方のお話をうかがったら、また紹介したいと思います。

原田園子

原田園子ディレクター

投稿者プロフィール

「不動産の学校」のディレクター兼ライター。
住宅メーカーや不動産業者をクライアントに持っています。
不動産関連の取材実績も多数あり。
不動産投資から日々の暮らし記事まで、幅広く担当します。

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