【連載】新型コロナパンデミックによるロックダウン(非常事態宣言)とテナント家賃
- 2020/5/7
- 不動産投資
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こんにちは。ふりーパパです。
日本では、ようやく国会などで、緊急事態宣言中などのテナントの家賃の支払いについて検討されているようです。ニュージーランドではどのような扱いになっているかを記載しておきます。
コロナ禍のニュージーランド
ニュージーランドでは、ロックダウン宣言レベル3(レベル3、4が、外出禁止や店舗の営業禁止を伴う非常事態宣言)が、3月23日に発せられ、その二日後のロックダウンのレベル4となり、戦時体制のように、飲食店やサービス業の店舗閉鎖が命じられています。開いているのは、生活に必要なスーパーマーケットとコンビニとガソリンスタンド程度となりました。外出も、生活必需品の買い物や、一日2度程度の散歩などを除いて、原則、外出禁止となり、家にいなければなりません。その後、4月28日からは、レベル4からレベル3にレベルが下げられています。
店舗やオフィスを構える商業テナントとしては、家賃の支払いは大きな経済的負担を伴うので、社会問題となっています。住居用の家賃の支払いの延滞(3カ月後の支払い)やローンの元利金の支払いの延期等の政策はすでに施行されていますが、商業用の物件の家賃については、政府の施策は発表されていません。但し、商業物件のオーナーの元利金の支払いについては、銀行とオーナーが元利金の支払い猶予を交渉できる状態となっています。
ニュージーランド在住の多くの日本人が、日本食レストランなどを経営していますが、このロックダウン中のテナント家賃の支払いをどうするかということで、頭を悩ましています。まず、①ロックダウン中の家賃の支払いは、原則停止する。加えて、②ロックダウン中(店舗閉鎖中)の家賃については、オーナー(物件所有者)と話合いをして、いくらにするか決めるというような取り決めで動いています。5月12日には、ロックダウンがレベル2(レベル1か2になれば、ほぼ通常の生活が可能。)まで下がり、飲食店やサービス業の通常営業が再開される見込みです。この時点で、オーナーと家賃についての何らかの取り決めが必要となります。
この国の商業用の賃貸契約書の中には、ロックダウン中の家賃の支払いなどについての条項が盛り込まれているものが大半です。2011年2月に発生したクライストチャーチにおける大震災時以降、政府指導によるビルの使用禁止などが発令されたこともあり、必要な条項として、賃貸契約書に盛り込まれているのです。但し、ロックダウン中の家賃の支払いや金額の減額については、テナントとオーナーにて、個別に話し合いにて決めるような条項となっています。
↑強制閉鎖に関する条項のサンプル
このような状況下、ロックダウン明けにも、政府がある程度の商業物件の家賃の支払いや減額についての指針が示されるという話もあります。個別に交渉していると、双方の意見がまとまらず裁判所などへの訴えが大きく増えてしまい収拾がつかない可能性もあるからです。今回のロックダウンは、ニュージーランド全国の問題であり、クライストチャーチの大震災のような同市の少数の個別問題ではないからです。
既に、ショッピングモールなどに入っている著名な大手のテナント(例えば、大手のアパレル販売の店舗)は、ロックダウンによる店舗の強制閉鎖中のテナント料は、支払わないような宣言をしている会社もあります。中小のテナントの場合には、オーナーに対しての力も弱く、今後のテナント料の交渉がどうなるのかという不安を抱えているのが実情です。
既に、日本では、とんかつ屋さんのオーナーが、今後を悲観して半分自殺したのかと思われるような状態で、火災現場から死体で発見されるような痛ましい事件も発生しているようです。
政府の緊急事態宣言によって、自粛を迫られている飲食業やサービス業を営んでいるテナントにとっては死活問題です。実際の状況をみていると自粛といいながら、実際には政府ないしは都府県からの強制のようになっています。日本でもテナントにとっては、家賃の支払いが大きな負担となっており、早めの対処をすべきなのですが、日本政府の対応はかなり遅れているようにみえます。
この記事を書いている時点(5月5日)で、安倍首相は、5月末までの緊急事態宣言を延長することを発表していますが、このような商業テナントの家賃などに対する施策も発表せずに、延期をしたことについては、今後大きな批判に晒されてしまう可能性が高いとみています。また、日本の商業用の賃貸契約書の中には、このような条項が含まれているのかは、疑問が残ります。
ニュージーランドは、経済規模は、日本の1/25程度の規模であり、迅速な対応が可能であったのですが、政治も経済も大混乱している経済大国日本で、どのようなことが起こるのか心配しています。私自身も、商業テナント物件を保有していますがローン等はほとんどないので、テナントからの要請があれば、家賃の分割や延払い等に応ずる方針ではいますが、ローンを抱えているオーナーにとっては頭の痛いことになるのは間違いありません。
このような想定できないような事態に遭遇した際にも、冷静に対処できるようにするというのが、賃貸物件のオーナーとしての役割であり、リスクであることも理解しておくことが重要なのだということを再認識させられています。昨年の大型台風による物件の被害もありましたが、不動産オーナーにとっては、災難続きなのかもしれません。