大家さん三世代座談会 世代を超えた共通点。本質はここだ!(前編)

今回は、静岡の元祖サラリーマン大家こと沢孝史さん。富山の大日本☆ふんどし王子こと、山屋悟さん。当「不動産の学校を」運営するHeartBrain合資会社の代表であるコテツこと、倉茂徹
それぞれ不動産投資をはじめた時期の異なる3人だけに、購入時の情報や市況、学んだことにも差があります。そこで、それぞれ当時の状況を振り返りながらの座談会を行いました!
融資の引き締めで、これから不動産投資のスタートは難しい・・・そんな風に感じている初心者に参考いただきたいです!

まずは、それぞれの経歴からご紹介します。

【第一世代代表】元祖サラリーマン大家 沢孝史氏
不動産投資家。1959年静岡県生まれ。法政大学卒業後、大成火災海上保険株式会社入社。1991年に退社し、コンビニ経営を始めるが半年で廃業、再びサラリーマンとなる。1998年に数百万円の元手から不動産投資を始め、現在の不動産収入は年間1億円を超える
著書:最新刊『株式VS不動産 投資するならどっち?』(筑摩書房)栫井駿介氏との共著のほか多数

【第二世代】元カリスマ不動産投資ブロガー コテツ(倉茂徹)
不動産投資家。1970年代 東京生まれ。 祖父がビジネスで成功して40歳でリタイヤを達成していたことから「みんな40歳くらいでリタイヤをするんだなー」と勘違いしながら普通のサラリーマンとなる。 しかし初任給を貰ったときに現実の厳しさを知りリタイヤするべく不動産投資に行き着く。 40歳になる前にセミリタイア実現。 現在は家族・自然・不動産・ビジネスを愛し魅力的な仲間に囲まれた幸せ大家を実践中。
著書:『儲かる新築アパート・マンションの作り方 (お宝不動産セミナーブック)』(筑摩書房)沢孝史氏、佐藤直希氏との共著

【第三世代】新時代の高卒投資家 山屋悟氏
1985年富山県生まれ。ブログなどで通称『ふんどし王子』として活躍中の34歳。14年間工場勤務サラリーマンをする傍ら不動産投資を行い2018年7月にセミリタイア。 中学3年生の時、兄に借りた『金持ち父さん・貧乏父さん』を読み、お金持ちになることを決意する。卒業後、地元の大手自動車メーカー系列の企業に就職。昼夜問わずの交代勤務の現場で働きながら1カ月に10万円ずつ貯金する。しかし、サブプライムショックの暴落に巻き込まれ株・FXで300万円以上を損失、現物のない投資の怖さを知る。その後、今度は手堅い不動産投資の勉強を開始。2009年、24歳の時に100万円を元手に2,500万円の2世帯住宅を新築し、不動産投資を開始。その後、中古アパート、マンション区分を中心に買い進め、さらに、独自の視点で高利回りのガレージハウス、65万円の廃墟戸建て等、ボロ物件への投資を行う一方、新築戸建てと新築アパート等の資産性の高い案件にも着手している。
著書:『高卒製造業のワタシが31歳で家賃年収1750万円になった方法!』(ごま書房新社)ほか
ブログ:https://plaza.rakuten.co.jp/yamaie/
健美家コラム:https://www.kenbiya.com/column/fundosi/

 

20年前はキャッシュフローの概念がなかった!?

コテツ
今回は不動産歴20年以上・15年・10年以内の現役投資家による座談会です。私は沢さんとお付き合いが長く、この「不動産の学校」の前身であるwebマガジン「満室経営新聞」でも大変お世話になっていた親しみのある大家さんですが、山屋さんからすると沢孝史さんは大御所というイメージでしょうか?

山屋
そのとおり! 沢さんや藤山勇司さん、それに吉川栄一さんたちは僕らにとってレジェンドメンバーですよ!

※藤山勇司さん
『サラリーマンでも「大家さん」になれる46の秘訣』(実業之日本社)をはじめ、著作25冊、累計50万部を誇る、元祖サラリーマン大家にして不動産投資の永世名人。現在10棟117室所有で年間のキャッシュフローは5000万円。
※吉川栄一さん
富山に住む著名不動産投資家。年収360万円から低位株投資で資金を貯めて、2001年にアパート経営を開始。新築アパートを中心に規模を拡大し、2006年にセミリタイア。株と不動産で増やした資産は2億円超。著書に『年収360万円から資産1億3000万円を築く法』(ダイヤモンド社)など13冊を出版。


正直いうと、もう次の若い衆たちにがんばってくれればいいやって感じ。世代的にも離れている俺たちがいくら説教したところで、やってきた投資の環境もちがうからね。だから、だんだん世代交代していってもらいたいと思ってるよ。

コテツ
とはいえ、今も講演会の回数は全く減っていないですよね。それは時代と共に内容をカスタイマイズされているからですか?


たしかに、ずっと同じテーマでやってきているけれど、ちょこちょこっと中身を最新のネタに毎回変えているんだ。いろんな環境変化が発生しているので、そこは常に更新していかないと。たとえば美味しいと評判のラーメン屋さんでも、時代に合わせて微妙に味を変えていくものだから

コテツ
山屋さんから見て、沢さんや藤山さん、最近はあまり表に出てこられないけれど山田里志さんに対しては、どんなイメージを抱いてるの?

※山田里志さん
都内の国立大学を卒業後、紙関連のメーカーに勤務する。静岡県内の支店に転勤となり、マイホームを他人に貸したことをきっかけに、副業としての不動産経営がスタート。その後、さまざまな試行錯誤を重ねながら、現在伊東市に一戸建てマイホームと草津温泉にリゾートマンションを所有し、賃貸用不動産を多数所有するまでに至る。2006年(平成18)3月、50歳で早期退職し、現在は専業大家。

山屋
先駆者である皆さんの全冊を読み、とても勉強させてもらったので御恩を感じております。
以前に沢さんご自身もおっしゃられていましたが、利回り13%や15%といっても、ものすごく高利回りではありませんが、それを10年も継続すると財産が築けるというメッセージだと受け取りました


筑摩書房から出た最新刊『株式VS不動産 投資するならどっち?』(栫井駿介氏、芦沢晃氏との共著)で、栫井くんも言ってるように株は派手なイメージがあるけれど、そう簡単に儲かる投資ではない。やはりよく理解している人は、株も不動産も時間をかける投資であり「放ったらかしで儲かりました!」というケースも珍しくない。
だから、これからも俺は「もっと地味に時間をかけてやっていくものなんですよ」と伝えていきたいね。それが最近は、一気に増やすことだけに注目されがち。いきなり稼ぐのは投資ではなく「投機」の世界だな。

山屋
「危なっかしいな」と警戒されていますか?


それもある。セミナーで俺が話してきたのは利回り○%、実質利回りは○%など、「物件価格を考慮しましょう」というのが基本だったんだ。そんなベースの話をしてきたなかで、今度はコテツの世代が満室経営新聞で「もうちょっとここは知っていたほうがいい」「あれも知っていたほうがいいぞ!」って肉付きされてきたよな。
そしてコテツの次の世代である、ふん様(山屋氏)になると、今度はベースの理論とある程度の知識、プラス自分のオリジナリティというのかな。自身が置かれた立場で何ができるのかを独自に組み替えていく。そこのバージョンが俺たちと違っているんだよね。

山屋
はい。すでに僕たちの世代は何百冊も本が出ていたので、それをたくさん読んで、その中から独自にカスタマイズしていく。AとBの良いところを組み合わせて、選択肢がどんどん増えていく感じですね。

 

時代と供に増えていった不動産投資の選択肢


これからどう進化していくのか俺には分からないけれど、より情報量が増えることだけは確か。ただし情報を受け止めるだけでなく、それを自分なりにどう工夫するかによってライバルと差別化できるんだよ。その辺をがんばって、ふん様以下しっかりした人がどんどん出てくるといいな。

コテツ
私の世代はまだ選択肢がなく、みんなが同じ本を読んでいました。新刊が出ると一斉に読んだものです。全ての本が読める時代だったけれど、最近は本の数が多すぎて追いつかないよね。でも、その当時は迷わなくてよかったです。自分がやれることと情報量がイコールだったから。
そういう意味で私たちの世代は決断さえすれば、あとは自分が突っ走るだけでした。今は情報量が多くて迷い込んでしまう人もいます。それが昔にはなかったから良し悪しです。行動力のある人にとっては今のほうが向いているかも知れないけれど、私なら思い切った決断はできない気がします。

山屋
昔の沢さんが書かれた本には利回り13%で金利2%という基準がありましたが、これが最近では、「利回り8%の物件、金利4.5%でローンを組みましょう!」と当然のように書いてあります。読者が「ああ、そういうものなんだ?」と信じて、その人の基準が確立されてしまうと恐ろしいですね・・・。


俺たちの時代は勉強したくても参考になるものが無かった。とりあえず物件を買ってはみたものの、「果たしてこれでよかったのかな?」と疑心暗鬼だったね。だけど1棟目って、今のように何億円もするものではなかったよ。積水ハウスでファミリータイプのアパートは、築5年の4000万円だった。

コテツ
それならマイホームを買うのと変わらないですよ!


でも、そのときは不動産投資でキャッシュフローが出て、それで資産を増やしていくところまで頭が回らなかったな。とりあえず借金を全て家賃で払えて、上手に運営してオマケがつくなら御の字。そんなイメージで最初のアパートを買ってみたんだ。

コテツ
私の時代になると、投資で一番重要なのがキャッシュフローという概念がありました。それは『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』の影響が大きいですし、金森重樹さんや今田信宏さんの光速不動産投資法も投資家たちにインパクトを与えました

※金森重樹さん
1970年生まれ。東大法学部卒。ビジネスプロデューサー。不動産投資顧問業・株式会社金森実業代表取締役。物件情報の提供から、融資付け、賃貸募集の支援まで行う会員組織「通販大家さん」を運営し、会員が億単位の資産形成をするのをサポート(会員数3万5000人)。読者数14万5000人のメールマガジン、「回天の力学」の発行者として、マーケティング業界でも著名。著書に『改訂版 不動産投資の破壊的成功法』(ダイヤモンド社)などがある。

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※今田信宏さん
1964年山口県生まれ、岡山県育ち。岡山大学工学部卒業後、地元メーカーに就職し、商品開発業務に4年間従事。その後、大手機械メーカーに転職。商品開発業務に従事し、その後、国際マーケティング、海外大手企業との業務提携、M&Aに携わる。2004年に不動産賃貸業を開始。2006年、株式会社アセンティアを設立。著書に『アパ・マン137室入居率97.4%の満室経営バイブル』(かんき出版)などがある。

 

今よりもっと融資が厳しい時代


当時の俺はキャッシュフローなんて期待せず、ただただ借金を早く返したい一心だったんだ。世代的に「借金は速やかに返すもの!」と体に染み込んでいるから。自己資金もある程度まで入れて15年で返したよ。本業で商売しながら不動産をやっている人は、10年ローンで組むケースが多いね。
そもそも俺は10年間勤めた損害保険会社を32歳で退職し、コツコツと貯めた1000万円を元手にコンビニ経営に手を出した。それをわずか4カ月でつぶしちゃう。泣く泣くオヤジの町工場に転がり込んで、また一からお金を貯めて不動産投資をはじめたんだ。
融資を受けたのは中央信託銀行。仲介会社さんから「物件まで来てください。支店長が付きますから!」と言われた。その支店長が俺のことをジロジロと見るんだよ。まるで珍しいものでも見るように(笑)。
それで次に買った物件が界壁のある、まだ誠実だったころのレオパレス。そのころは「家賃保証付で利回り10%!」と謳っていたな。20年ローンが組めて金利も2%台だからお金が残ると確信できた。ようやくそこで、「あれ? もしかして、これがキャッシュフローなの?」みたいなレベル。そこからキャッシュフローも大事だと考えて買うようになったんだ。

コテツ
当時の私もキャッシュフローには神経質にならなかったです。とにかく借金を返せればいいやって感じですね。それより重視していたのは表面利回りでした。私も最初に買ったのも沢さんと同じ4000万円弱の3750万円。金利4.5%で15年の返済ですが、スルガ銀行ではないですよ。


借りたのはノンバンク?

コテツ
はい、ジャックスです。最初から使いたかったわけではなく、20数行にアタックするも全滅して・・・。

山屋
朝日生命にお勤めだったのに残ったのがジャックスですか?

コテツ
そこしか貸してくれなかったんです。今のように1億円を超える物件を買う発想なんてなく、高くても4000~5000万円でした。家賃年収が1000万円を超えると「すげえ!」と驚かれた時代です。
それがマイナス金利政策以降になると、桁違いに融資が出るようになったのだから驚きの連続! 融資が付きやすい=物件が高くても売れるということですね。つまり安く仕入れづらくなったので、それは自分にとってもよくないと思います。

山屋
僕がスタートした10年前は厳しい時期で、今の状況とそれほど変わりません。逆に、日本政策金融公庫から2300万円も出たとき、「24歳で融資が付くんだ!」と周囲から驚かれたくらい。フルローンやオーバーローンが当然のように出るようになるのは僕より後の世代になります
今は融資状況が悪くなったと言われますが、10年前も同じように悪かったので僕にすれば元に戻った感じですね。なにしろボロ物件でも築古戸建にしても1戸さえ持っていたら、毎月自由に使える5万円のお小遣いが手に入るのだから、それだけでも人生が変わる。やはり不動産投資をお勧めします。

コテツ
私が始めた頃よりはまだいいですよ。なにしろジャックスだから銀行ですらない(笑)。じゃぶじゃぶ融資が出ていたのを見ていた人からすれば、融資がまったく出ない今はチャンスがないように思えるかもしれないですが、環境は絶対に変わっていきますから! それに合わせて自分も変えられる人がいるし、できない人はお休みするなり止めてしまう。それは個々の判断で仕方のないこと。いつの時代もそうなんだろうなという気がしますね。

情報収集、物件はどう探していたか?


不動産投資を始めたのは、俺の置かれた境遇がマスオさんだったから。自分の家を建てられなかったので、それなら投資物件でもいいから不動産を持ちたいと思ったんだ。それを1戸だけ建てても意味がない。ローンを払ってでも家は欲しいけれど、それで紹介してもらったのが積和不動産の営業マン。しかし、どうも話がうまく伝わらなくて、自宅用の中古戸建の案件を持って来たんだね。そうではなく、「ローンを払えるアパートを持ってきてくれ!」と説明し直した。
当時はネットでも、投資用のアパートは「その他」の扱いで、事務所や工場と同じ扱い。今のように「収益不動産」という項目すらなかったよ。紙媒体なら静岡新聞の不動産の欄に載っていたな。小さくて薄っぺらいけれど、地域の不動産情報誌が載っているので注目していた。あとは仲介会社さんのほうから、相続で困った人の情報が入ってきたのでそれを買ったかな。

山屋
まだインターネットも普及していないから、人と人が向き合って繋がっていた感じがします。僕なんて不動産屋さんに電話をかけるだけで緊張しました。絶対に騙されてハメられると。ハメられるほど与信もないのですが。

コテツ
私の世代になるとネットで情報が出始めたころですが、まだまだ紙媒体が主流でした。今は無きリクルート出版の『週刊住宅情報』という、あの分厚い冊子の最後のほうに収益不動産の情報が雀の涙ほどですが出ていましたね。
「マイホーム」「マンション」と色分けされているんです。その最下部にある「その他」の欄に収益物件情報と競売情報が載っていて、5ページくらいだけど穴が開くほど読み込んだものです。そうこうするうちに収益専門サイトが出てきました。健美家と楽待ですね。

健美家 https://www.kenbiya.com/
国内最大級の不動産投資と収益物件の情報サイト。2004年4月健美家有限会社設立(資本金300万円)同年5月システム開発開始。11月より収益物件検索サイト「健美家」試験運用開始。
楽待 https://www.rakumachi.jp/
月間188万人が訪れる利用者数No.1の不動産投資サイト。2005年8月会社設立、2006年3月に収益物件・不動産投資のマッチングサイト「不動産投資の楽待」をリリース。

山屋
お2人ともスタートされた時期で情報量の違いがよくわかりますね。それに比べて僕らの世代は、スタートの時点からネット情報で気軽に物件探しができます。僕なんか健美家さんの不動産投資コラムを読んで勉強してきましたが、今はそこのコラムに執筆させていただいているのですから、それこそ健美家さんに育ててもらった健美家世代の申し子です!

★後編に続く

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