地方投資のメリット・デメリット

2020 年の東京オリンピック開催決定もあって、首都圏の不動産投資が盛り上がっています。
サラリーマン大家さんを目指す人にとっては、都市圏だけでなく地方投資も非常に人気があります。ここでは、地方投資のメリット・デメリットについて解説します。

 

そもそも地方投資とは?

そもそも、地方物件とはどの地方を指すのかといえば、人によって解釈はまちまちです。一都三県(東京・千葉・埼玉・神奈川) 以外を地方と考える人もいれば、東京と大阪以外を地方という人、また「札幌・仙台・名古屋・大阪・福岡・広島は都市だ」という認識もあるでしょう。
ここでは、あえてどこが都市で、どこが地方なのかという定義づけをおこないませんが、「東京だけ人口が増え続け、それが以外すべて人口減っている」というのが共通の認識だと思います。
日本の人口推移でみれば、確かにその通りです。しかし、地方全部が人口減少しているわけではありません。大きな流れとして、地方から都市へ人が流れる傾向があります。それと同様に、地方であっても、県庁所在地や経済の中心地へ、それ以外の郡部から人が集まっているのです。
たとえ地方であっても、人が集まる地を選べば、都市部と変らない賃貸ニーズがあります。これは、地方だけではなく一都三県でもその傾向があります。
首都圏に住んでいて、遠隔地=地方という認識の方もいますが、首都圏といわれる場所でも、東京のはずれや、千葉・埼玉・神奈川のはずれとなれば、地方となんら変わりません。物理的に行きやすいというだけで、むしろ危険かもしれません。一律、一都三県だからと安心できない代わりに、地方だからといっても急激にすたれるということもないのです。
「地方だから人口減少で不動産賃貸業が立ち行かない」と断定するのは早計です。以下、地方メリットについてまとめました。

 

地方投資のメリット

都心部に不動産を持つことが難しい今、地方投資に注目が集まっています。地方投資には、次のようなメリットがあります。

 

◎都市部に比べて利回りが高い

都市圏に比べて利回りが高いことが大きなメリットです。都市圏が不動産投資ブームで過熱しているため、相対的に値段が上がっています。サラリーマン向けのアパート・マンションローンが出やすい現状ですが、売買価格が高いことで、返済比率も高くなりがちです。
一般的には金融機関にもよりますが、返済比率が家賃の6割くらいに設定されているところが多く、そこに満たない分を自己資金で用意しなくてはなりません。そこで、返済比率から計算すると、フルローンで融資を受けるためには、利回り9%から10%程度の物件を狙う必要があります。
現状で都市圏の利回りは6%から7%程度ですから、必然的に高利回りの地方投資をおこなうことになります。自ら「地方投資がしたい」というよりは、消去法で「地方投資しかなかった」というサラリーマン大家さんがほとんどです。

◎積算評価が出やすく融資に有利

利回り以外にも、融資が付きやすい理由があります。それは、積算評価(土地と建物を足した銀行評価額)が高く出やすい、ということです。
都市圏と地方では、「地価と相続税路線価の差」が変わります。相続税路線価というのは、その名の通り相続税を計算するためにありますが、実際の地価を元につくられているものの乖離が大きく、それは都市部に行くほど拡大する傾向にあります。
例えば、都内の一等地では、相続税路線価と地価に3倍の差があるエリアもあるほどです。それが地方になると路線価=地価となることが多いのです。金融機関はそういった乖離を考慮せず、一律、路線価もしくは路線価の何掛け、といった土地評価をおこないます。その結果、地方の方が高い銀行評価が出やすいのです。
建築単価についても、全国でかなりばらつきがあります。当然のことながら、労働対価の高い都市部が高くなりますが、エリアによって変わらず一律にしてあることが多いです。これも精算評価が高くなる理由のひとつです。
このように、地方特有の利回りと評価のギャップを利用して、短期間に複数棟の物件を購入するサラリーマン大家さんも増えています。

◎賃貸経営のレベルで差をつけやすい

メリットは購入時だけでなく、その後の管理運営にもあります。それは、大家さんの経営レベルのばらつきです。
実際には、都市圏、地方は関係なく、それぞれに差があるものですが、都市部は地方に比べて賃貸ニーズがあることから、経営レベルがさほど高くなくても入居が決まりやすいのです。
しかしながら、需要の少ない地方では、適当に経営している大家さんの物件に入居者はつきません。情報をしっかり取り入れて勉強している、行動力のある大家さんの物件には価値が高まって、入居がつきやすくなります。努力と行動を起こすことで、賃貸ニーズ自体は劣るものの、都市部の平均以上の入居率を維持することが可能なのです。実際に、みずから動くことによって、高稼働を実現するサラリーマン大家さんはたくさんいます。

◎エリアによるニーズのムラがある

入居者のニーズも都市部に比べるとムラがあります。先述した通り、地方でも人が集中するエリアがあります。そういうところは、都市部と変わらない入居率がありますが、遠隔地に住んでいると、なかなか掴みにくいという実情があります。
ポイントは、東京などの都市圏と違って、「駅から近い」というわかりやすい指標がないことです。
例えば、通勤に便利な道路に出やすい、ショッピングモールや大型店舗が立ち並ぶ街道へ出やすい、といったことが求められるのですが、こういった街道沿いは道が渋滞して、休日は騒がしくなるため、「ショッピングモールに近ければいい」という話でもありません。
また、ファミリー層は学区について気にします。この学区であれば、必ずファミリー需要がある……という地域もあります。
このように都市部とは違った賃貸ニーズがありますので、これらをきちんと押さえることで、都市部より安い価格で、有利な融資を受けて、高利回りの入居率の高い物件を購入することができます。
地元の投資家やそのエリアに詳しい投資家はよく事情がわかっていて、物件購入するときは立地選定をしっかり考えています。その都市のどの地域で購入するのかまでリサーチすることで、投資の成功率が高まります。

 

地方投資のデメリット

このように成功の余地のある地方ですが、当然のことながらデメリットやリスクもあります。

◎入居率が少なく、需給バランスが変わる可能性がある

転入数が東京とは比べものにならないほど少なく、入居率そのものが少ないのが地方です。ひとつの市町村の中、1日1人も転入してこないこともあります。東京では、渋谷に1日に1人も転入者がないことは、過去10年今後10年ありえません。しかし地方では、自治体によっては、その日、誰も入居が決まらないこともあります。
そうなれば、大家さんの努力でいかに魅力的な物件を作っても意味がありません。そういう需要の少なさは大きなデメリットです。
大学、工場の閉鎖や移転による空室問題は、たまにニュースに取り上げられますが、そもそも賃貸ニーズのパイが小さいため、ひとつの要因で需給関係が簡単に変わることもあります。
また、よくありがちなのは、大型商業施設が新たにできることで需給関係が変わる、ということです。例えば、JRの駅の西側に官庁があるような市で、西側が市の中心となっている場合では、その逆側である東側の地価が安いです。この地価の安い駅の東側に、イオンのような大規模商業施設ができて人流れが変わり、駅の東と西の需給関係にも影響を及ぼすというケースです。
また大学の近くに地元の不動産会社が、100 戸単位の新築物件を建ててしまうことがあります。地方は土地が余っているので、分譲マンションのような規模の賃貸物件が建ってしまう可能性があるのです。
その他にも、地主さんが相続対策で、ハウスメーカー製の新築アパートを建てることも一般的です。新築が建ったとしても設定家賃が高いため、築古物件を所有する大家さんであれば、価格が違うため競合しません。むしろ競争力のある築浅の物件を持っている人ほど、競合して家賃下落する可能性があります。

◎家賃収入に対する運営コストの比率が高い

購入後の話になりますが、都市圏と地方では賃料単価に大きな差があります。
東京都のワンルームは、20㎡程度で7万円以上の家賃も珍しくありません。対して、例えば編集長けいすけの持っている北陸地方のワンルームは、おおむね3万円台です(満室経営新聞プレミアムで詳細ご覧いただくことができます)。
このように家賃が倍以上違っても、かかる経費はさほど変わりません。エアコンの値段は東京であっても、北陸であっても同じです。クロスの値段についても、労働単価は地方が安いとしても、材料費は変わりません。固定資産税も土地は安いですが、建物の評価は変わらず収入に占める割合が高いのが特徴です。とくにRCの一棟マンションは高く、固定資産税が賃料の1カ月半程度かかります。
その他、エレベーターのメンテナンス費用、共有部の電気代、清掃費用など、家賃収入に関わらず、同じように固定費がかかり収益を圧迫します。
一般的な不動産投資の本をみると、「諸経費が15%から20%」とシミュレーションされていることが多いのですが、地方の融資評価がでやすい(積算評価の高い)RCマンションでは25%になることも珍しくありません。

◎優秀な管理会社が少ない

賃貸需要、経費のほかに、運用面でもリスクがあります。それは管理会社、客付会社の数が相対的に少ないことです。つまり、管理会社を選ぶことができません。地方であっても優秀な管理会社はたくさんありますが、東京のように客付専門、管理専門とわかれている会社は少なく、管理会社が客付をやっているのが一般的です。
そして、優秀な管理会社ほどしっかりエリアを限定しているため、自分の物件がある地域に頼れる管理会社がなければ、客付に弱く伸び悩むことが予想されます。
地方物件を買うときは、どの管理会社に委託をするのか、あらかじめ調査する必要があります。

◎融資がつきにくい

「融資がつきにくい」ということは「買いにくく、売りにくい」という話になります。現状では融資は緩く買える人が増えています。そのため、不動産投資ブームが盛り上がっている側面があります。それが10年、20年経って、売却を視野に入れたときに、今と同じ融資状況とは限りません。むしろ、同じ状況であることの方が珍しいと思われます。
融資がつきにくくなれば、地元の人しか買えません。当然のことながら、地元の人の方が選別眼は厳しく、「出口で収益がとれない」という状況にもなりかねません。
融資の状況については、将来を予測することはできませんが、積算評価が高い物件を購入することで、ある程度のリスクヘッジは可能です。

 

地方投資に向いている人の「3つの条件」

このように、地方にはたくさんのメリットがあり、その反面、地方特有のデメリットもあります。自己資金が乏しく、融資に頼らざるを得ないサラリーマン投資家にとって、短期間に規模拡大するには地方投資が最適です。しっかりリスクを把握したうえでチャレンジしてください!
最後に、地方投資に向いている人の「3つの条件」をまとめます。

◎その地域の知識が豊富

「土地勘がある」というと、一時的に住んでいた、親戚がいる、といった親しみのある場所を指します。エリア選択では、そういった土地勘に頼りがちですが、一般的な土地勘は賃貸経営に役立ちません。たとえ地元に住んでいたとしても、「このエリアはシングル向けに需要ある」といった詳細な情報は、賃貸業をやっていないとわからないものです。ですから、そういった土地勘より、需給関係を把握する方が大事です。どの辺に会社が多くて、どの辺から通勤しているのか……そういう知識が必要です。

◎管理会社と円滑なコミュニケーションがとれる

地方でうまく行っている人は、優秀な管理会社とよい関係を築いています。管理運営面で遠隔地に住んでいることはメリットになりませんが、管理会社が一生懸命やってくれる大家さんになることで、デメリットは払拭できます。都心など情報を取りすいところに住んでいるメリットを活かして、地方の管理会社に情報提供するよう大家さんもいます。

◎フットワークが軽い

地方投資で成功している大家さんだからといって、頻繁に現地に行くことはありません。とはいえ、必要があればすぐ出向けるフットワークの軽さは必須です。隣町に行くような感覚で、飛行機に乗ってでもすぐに駆けつける行動力が求められます。
これは管理運営だけでなく購入時にも大切です。融資評価の出る物件情報がきたら、その週末にはすぐ行けるようなフットワークの軽い人は成功しているものです。
今は海外投資をおこなっている人もたくさんいます。パスポートがないと行けないところで投資をおこなう投資家がたくさんいる中、東京に住んでいれば日帰りで行けない場所はほとんどありません。遠方でも必要とあらばすぐ行動する、という心構えは必要です。

 

※本コラムは、2015年12月15日に配信された「満室経営新聞」を抜粋・加筆・修正したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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