【連載】「保証会社の審査が通ればOK」は危険!? 大家さんにも見つけられる滞納者のサイン

株式会社アートアベニューの福原と申します。弊社は首都圏の賃貸物件約6500戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。
本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

保証会社の審査が通ったから入居審査はOK。
このようにお考えの自主管理大家さんは多くいらっしゃいますが、果たして本当によいのでしょうか。

当社では、長期滞納者になりそうな人は、「たとえ保証会社の審査が通ったとしても入居させるべきではない」と考えます。自主管理の場合でも、ある程度ご自身で入居審査を行い、長期滞納者の入居を未然に防ぐべきです。
今回は、入居審査を保証会社や客付業者任せにしている大家さんに、アートアベニューがそう考える理由と、長期滞納者の傾向と対策についてお話しします。




保証会社の利用増えるも、滞納発生率は変わらず

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が2019年6月に発表した最新の「賃貸住宅市場景況感調査」によれば、全国平均81.51%の賃貸借契約が保証会社利用を必須としていました。前年同時期の調査と比べると7%もの増加。保証会社利用は年々一般的となってきています。

一方で、注目したいのは長期滞納者の数です。同調査は月末時点で2ヶ月分以上の家賃を滞納している長期滞納者の割合も調べているのですが、こちらは全国平均1.4%と、前年同時期とまったく同じ数字でした。
つまり、保証会社の審査を通った人の中にも確実に長期滞納者が存在するということ。『保証会社の審査通過=滞納者が入居しない、ではない』のです。

 

長期滞納者の入居は保証会社を利用していてもコスト高

また、滞納家賃の保証はあっても、滞納者の入居が金銭的リスクにつながることに変わりはありません。たとえば、保証会社は滞納初期こそ正常化に向けて交渉しますが、難しいと判断するとすぐに賃借人を退去させてしまいます。それが高い広告料や手数料を支払い、苦労して入居させた人だとしても、です。
加えて、長期滞納者は一般の方に比べて部屋の使い方が荒いことが多く、多額の原状回復費用がかかりがちです。『保証会社の審査通過=滞納者に損をさせられない、ではない』のです。

 

入居申込書の虚偽記載を見抜くには「健康保険証」が有効

以上のような理由から、当社では保証会社の審査を通過した人であっても入念に審査するようにしているのですが、この”再審査”で多く発覚するのが「勤務状況の虚偽記載」です。
長期滞納に陥るような方は、仕事について正直に書くと保証会社の審査を通過しにくいため、虚偽の記載をすることが多々あります。(仲介する不動産会社がその指南をするケースもあります。)

よくあるパターンは、

  • 身内や知人の経営する会社で働いていることにする
  • すでに退職している会社で働いていることにする
  • アリバイ会社※を利用する …など。
    (※アリバイ会社とは、料金を支払うことで、嘘の在籍証明書や内定通知書、収入証明書などを発行してくれる会社のこと)

借りたい物件と勤務先住所が著しく遠い、転居理由に不審な点がある、年齢・職種・収入のバランスが悪い、といった場合は要注意でしょう。

ちなみに、虚偽記載が疑われる際の有効策は『健康保険証の写しを提出させる』です。一般的な企業に勤務しているはずなのに国民健康保険証だったり、紛失や手続中などの理由で提出できない場合は虚偽の可能性が考えられます。理由を詳しく追及しましょう。

 

どこをチェックすればいい? 入居審査時の危険信号とは

長期滞納者になりやすい傾向を見抜くには、以下のような確認も有効です。

・国民保険証の有効期限が短期
⇒保険料滞納実績の可能性大

・保険証を持っていない
⇒無保険状態

・運転免許証の再発行回数が多い(12桁の免許証番号の一番右の数字が再発行回数)
⇒紛失が多い人はお金にもルーズ

・現住所と身分証明書の住所が異なる
⇒転居届を出していない

・親が健在なのに緊急連絡先が親以外(兄弟やその他の親戚、知人など)
⇒過去に親に迷惑をかけていて頼めない?

・入居を極端に急いでいる
⇒計画性の欠如、現住所を追い出された疑い

・勤続年数が短い(転居理由が転職や就職の場合を除く) など。

これらに1つ該当したからといって必ず滞納する、というわけではありませんが、複数該当するような場合には注意が必要です。保証会社の審査結果に関わらず、冷静な判断が必要ではないでしょうか。

 

長期滞納者は大家さん同士の「ババ抜き」

前述の通り、保証会社の利用が増えても滞納者の数は減りません。賃貸物件を追い出された長期滞納者は、保証会社の審査を巧妙に掻い潜ります。そしてまた違う大家さんの部屋を借り、滞納を繰り返します。まるで大家さん同士で「ババ抜き」をしているようです。

入居審査を保証会社に丸投げしている大家さんも多いと聞きますが、今よりも少しだけ注意して見てみてください。その入居者は本当に「ババ」ではないでしょうか?

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

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