借地借家法って何?賃貸借契約に関する法律や権利を分かりやすく解説
不動産について調べていると必ずといって良いほど出てくる言葉の1つに、「借地借家法」があります。「借地借家法って何だろう?」と思って調べても、難しい専門用語ばかりが並んでいて、情報がなかなか頭に入ってきませんよね。
そこで、今日は借地借家法や借地権、地上権や借家権などについて、その定義や種類、特徴などを分かりやすく解説します。貸す人も借りる人も、土地や建物の賃貸借契約に携わる人には必要不可欠な知識です。ぜひチェックしてみてください。
借地借家法とは
まずは、借地借家法(しゃくちしゃっかほう)について解説します。
借地借家法とは、1992年(平成4年)に施行された法律です。借地借家法が施行されるまでは、「借地法」と「借家法」の両方がありました。これらを統一して新たに制定されたのが、借地借家法です。
では、なぜ借地法と借家法を統一する必要があったのでしょうか。
◇借地借家法が誕生した理由
借地借家法が誕生したのは、借地人や借家人(しゃくやにん)を保護するためです。
土地を借りる人を借地人、家を借りる人を借家人と呼びます。
それに対して、家や土地を貸すことで賃料を受け取る人が「賃貸人」です。
土地や家を貸す人に比べると、借りる人の方が弱い立場になりやすいことから、民法の規定を補う形で借地借家法が制定されました。
また、借地借家法が誕生したことにより、これまで賃貸人にとって不利だった部分についても改善されています。
◇借地法・借家法と借地借家法の違い
続いて、旧法(借地法・借家法)と新法(借地借家法)の違いを解説しましょう。
違い1.借地権の契約期間
旧法と新法の違いとして最も特徴的なのは、借地権の契約期間です。
借地借家法の借地権とは、建物の所有を目的に土地を借りる権利のこと。借地権には、「土地の賃貸権」と「地上権」の2つがあります。
土地の賃貸権とは、その名の通り土地を借りる権利のことです。一方、地上権とは、土地の上にある建物や竹木を所有するために他人の土地を使用する権利を指します。
旧法の契約期間でポイントとなるのは、構造がしっかりしている建物かどうかです。
構造のしっかりしている建物とは、石やレンガ、コンクリートなどを使って建てられた建物のこと。
一方、構造のしっかりしていない建物とは、主に木造を指します。
旧法によって定められている借地権の契約期間は、構造のしっかりしている建物なら30年以上、構造のしっかりしていない建物なら20年以上です。
ただし、賃貸人と借地人の間で取り決めを行わなかった場合や、旧法で定められている期間よりも短い期間で契約した場合は民法で定められた期間を適用します。民法で定められた借地権の契約期間は、構造のしっかりしている建物なら60年以上、構造のしっかりしていない建物なら30年以上です。
旧法では、構造がしっかりしているかどうかで契約を更新した場合の契約年数も異なります。更新後の契約年数は、構造のしっかりしている建物なら30年、構造のしっかりしていない建物なら20年です。
一方、新法で定められた借地権の契約期間には建物の構造による違いがありません。借地権の契約期間は、一律で30年です。なお、賃貸人と借地人の間で取り決めを行えば30年より長い期間でも契約できます。
また、新法における更新後の契約期間は、1回目が20年、2回目以降は10年です。
違い2.建物の状態による借地権の存続
建物の状態による借地権についても、旧法と新法では違いがあります。
注目すべきは、旧法では建物の状態によって借地権が消滅してしまう可能性があること。旧法では、契約期間に関する取り決めを行っていなかった場合に建物が朽廃(きゅうはい)すると、借地権が消滅します。
朽廃とは、建物が腐ったり壊れたりして人の住める状態ではなくなることです。
一方、新法では、契約期間中に建物が朽廃しても借地権が残ります。
借地権の定義・種類
続いて、借地権について解説しましょう。
◇借地借家法と民法それぞれの借地権
先ほどもお伝えしたように、借地借家法の借地権とは、建物の所有を目的に土地を借りる権利のことです。
一方、民法における借地権には、建物の所有を目的にしていない場合も含みます。
たとえば、駐車場や資材置き場といった使用目的で土地を借りる場合には民法が適用されるということです。
◇新法と共に誕生した「定期借地権」
借地借家法の借地権には、「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があります。
先ほど旧法と新法の違いとして解説した借地権は、普通借地権のことです。なお、定期借地権は借地借家法が誕生したことで生まれました。
定期借地権には契約の更新がないため、一定の期間が経過すると借地人は賃貸人(地主)に土地を返還します。
これまで、貸した土地は半永久的に帰ってこないと言われていたことをご存じでしょうか。これは、旧借地法によって借地人を強く保護しすぎたことが原因だと言われています。そこで誕生したのが、定期借地権です。定期借地権なら契約の更新を行う必要がないため、賃貸人は安心して土地を貸せます。
借家権の定義・種類
借家権(しゃっかけん)とは、建物の賃借権(ちんしゃくけん)のことです。
建物の賃借権とは、建物の賃料を支払うことで借家人が得た「建物を使用する権利」のこと。借地権と同じく、借家権にも「普通借家権」と「定期借家権」の2種類があります。
一般的な賃貸物件の契約では、普通借家権を用いられるケースが多いです。
普通借家権の特徴としては、
- 原則として、借家人が希望をすれば契約を更新できる
- 契約期間は1年以上
の2つが挙げられます。
たとえば、アパートやマンション、借家などの賃貸借契約においては、契約期間を2年~3年と定めて契約するケースが多いです。
借地借家法では、借家の契約は自動更新が原則となっています。そのため、たとえ賃貸借契約の期間が終了しても、借家人が契約解除を申し出ない限りは更新されるのが一般的です。ただし、正当な理由がある場合に限り、賃貸人は賃貸借契約の更新を拒否できます。
一方、定期借家権には契約期間の定めがありません。一般的な賃貸借契約とは違い、1年未満の短期契約や10年以上の長期契約が可能です。
ほかにも、定期借家権には
- 必ず書面を用意して契約を交わす必要がある
- 更新されないことについては、契約書とは別の書面での説明が必要
- 原則として借家人から解約を申し出ることができない
といった特徴があります。
普通借家権は個人契約にも多く用いられますが、定期借家権は飲食店やシェアハウスといった法人契約に用いられることが多いです。
■まとめ
今日は、借地借家法や借地権、借家権について、その定義や種類、特徴などを解説しました。
借地借家法が施行される前に契約を交わした賃貸借契約においては、旧借地法および旧借家法が適用されます。契約時に借地借家法が施行されていなかった場合は、契約の更新後も旧法が適用されますので注意しましょう。