「家賃支援給付金」でいくらもらえる?法人、個人事業主別に計算してみた

  • 2020/6/6
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日本経済、いや、世界経済に大きな爪痕を残した新型コロナ。緊急事態宣言も全国的に解除され、次は第2波を牽制しながら経済を立て直す新たなステージに入りました。

そんな策の一つ、「家賃支援給付金」が5月28日に閣議決定。事業者はもちろん、大家さんにとっても安心できる材料となりそうです。

この記事では、気になる「家賃支援給付金」を詳しく見ていきます。


家賃支援給付金が導入された背景

家賃支援給付金の導入が閣議決定されるまで、実はいろいろな案が出されていました。

最初は、「大家さんに免税措置をして、家賃を安くさせよう」という程度のものでした。その後、「支援給付金を大家さんに直接払おう」とか、「一旦事業主に金融機関から借金をさせ、後から政府が支払うハイブリッド型で」など二転三転しました。

事業者の多くは3月ぐらいから打撃をじわじわと受けはじめ、4月、5月は最悪だったわけで、「とにかく早く決定してくれ」と悲鳴にも似た訴えが聞こえていましたよね。定額給付金も持続化給付金もなかなか振り込まれず、やむなく廃業を選択した事業者も多かったようです。

そんな中やっと決定した家賃支援給付金。まずはどんなものか詳しく見ていきましょう。

経済産業省が発表した資料には、以下のように書かれています。

新型コロナウイルス感染症を契機とした5⽉の緊急事態宣⾔の延⻑等により、売上の急減に直⾯する事業者の事業継続を下⽀えするため、地代・家賃の負担を軽減することを⽬的として、テナント事業者に対して給付⾦を⽀給。
経済産業省関係 令和2年度第2次補正予算案(概要)より

ビジネスをする上で大きな負担となる固定費は、人件費と家賃。人件費については(様々な問題がありながらも)早々から対策が取られてきましたが、やっと家賃にも手が回ってきたという感じです。

もちろん、「テナント」というくくりなので、店舗だけでなく、オフィスも対象です。

予算額は、2兆242億円。持続化給付⾦は1兆9,400億円だったので、同じ規模ということですね(将来の日本、大丈夫か?)。

ちなみに不動産関係の措置としては以下のものが決まっていました。

  • 令和2年度分の固定資産税の納税猶予
  • 令和3年度分の固定資産税の減免措置
  • 家賃を減額した場合の法人税法上の損金算入扱い

もちろん、これらの政策も大切ですが、政府や自治体の要請により営業自粛し、売上がなくなる一方で、使っていない家賃を払わなければならなかったテナントからは、「それじゃない!」という悲痛な叫びがあったはずです。政府は当初、上記の施策に持続化給付金を合わせれば乗り越えられるはずと思っていたというのですから、腰が砕ける思いですよね。

しかし、今回はこの施策が閣議決定したことで、大きな前進をしたわけです。

試算してみました!

では、詳細です。まずは、給付額から。

給付額は、法人で最大600万円、個人で最大300万円です。もちろん誰でもこの金額がもらえるわけではありません。「家賃安いのに、そんなにもらったらお釣りがくるじゃん」というのは甘い!
給付金の原資は税金ですから、そこまで簡単にはもらえません!

とはいえ、他の給付金に比べると、十分に簡単な手続きでもらえそうですが。
と話がそれそうなので、元に戻します。

先ほどお伝えしたのは最大金額=限度額です。では、各事業者がいくらもらえるのかといえば、「算定給付額×6ヶ月分」となります。

この算定給付額は、法人か個人か、また1店舗か複数店舗かによって変わります。順番に説明していきますね。ちなみに、わかりやすくするために「店舗」という表現を使いますが、オフィスも同じ計算方法です。

法人の場合の算定給付額の計算方法と給付額

法人で経営しているテナント事業者の場合、一店舗だけを保有しているなら月額50万円、最大300万円が支給されます。複数店舗の場合は月額100万円、最大600万円が支給されます。

実際の給付額は、家賃75万円までは給付率2/3。複数店舗の場合は、75万円を超えて225万円までは給付率1/3。文章で言っても理解しにくいと思いますので、以下の表を参照してください。

経済産業省関係 令和2年度第2次補正予算案(概要)より

今ひとつピンとこないという方のために、いくつかの例を挙げてみますね。

パターンA
月額家賃30万円の店舗1店舗のみの場合・・・
[算定給付額]家賃30万円×2/3=20万円
[給付額]20万円×6ヶ月=120万円

パターンB
月額家賃100万円の店舗1店舗のみの場合・・・
[算定給付額]家賃100万円のうち、対象となるのは75万円分なので、
75万円×2/3=50万円
[給付額]50万円×6ヶ月=300万円

パターンC
月額家賃30万円の店舗が3店舗の場合・・・
[算定給付額]家賃は、30万円×3店舗=90万円
75万円×2/3=50万円
(90万円-75万円)×1/3=5万円
50万円+5万円=55万円
[給付額]55万円×6か月=330万円

パターンD
月額家賃50万円の店舗が2店舗の場合・・・
[算定給付額]家賃は、50万円×2店舗=100万円
75万円×2/3=50万円
(100万円-75万円)×1/3=8.3万円(便宜上、千円以下は省略)
50万円+8.3万円=58.3万円
[給付額]55万円×6か月=349.8万円

同じ家賃100万円払っている場合でも、1店舗なのか複数店舗なのかで給付額が変わるのがポイントですね。

個人事業主の場合の算定給付額の計算方法と給付額

経済産業省関係 令和2年度第2次補正予算案(概要)より

個人事業主が経営しているテナントの場合も、基本的な算出方法は同じです。ちがうのは給付額。一店舗だけを保有しているなら月額25万円、最大150万円が支給されます。複数店舗の場合は月額50万円、最大300万円が支給されます。

法人の場合は75万円が一つの区切り目でしたが、個人事業主の場合は37.5万円が区切り。また上限額も112.5万円となります。

同じく、パターン別に計算してみます。

パターンE
月額家賃30万円の店舗1店舗のみの場合・・・
[算定給付額]家賃30万円×2/3=20万円
[給付額]20万円×6ヶ月=120万円

パターンF
月額家賃100万円の店舗1店舗のみの場合・・・
[算定給付額]家賃100万円のうち、対象となるのは37.5万円分なので、
37.5万円×2/3=25万円
[給付額]25万円×6ヶ月=150万円

パターンG
月額家賃30万円の店舗が3店舗の場合・・・
[算定給付額]家賃は、30万円×3店舗=90万円
37.5万円×2/3=25万円
(90万円-37.5万円)×1/3=17.5万円
25万円+17.5万円=42.5万円
[給付額]42.5万円×6か月=255万円

パターンH
月額家賃50万円の店舗が2店舗の場合・・・
[算定給付額]家賃は、50万円×2店舗=100万円
37.5万円×2/3=25万円
(100万円-37.5万円)×1/3=20.8万円(便宜上、千円以下は省略)
25万円+20.8万円=45.8万円
[給付額]45.8万円×6か月=274.8万円

家賃は固定費の代表のように言われますが、テナントによっては売上比で算出されるところがあります。スーパーやデパートに出店している店舗がその代表例でしょう。この場合、直近の家賃が対象になるそうです。今年に入ってからじわじわと売上が下がっていた店舗は、厳しい基準になるかもしれません。

コロナの影響で売上が減少した事業者が対象

次に重要なのは、対象者が誰かと言うところです。

事業規模で言うと、中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業主。かなり広いですよね。乱雑な言い方をすれば、大企業以外は対象と言えます(実際には大企業の資本が入っていれば中小企業でも対象外となりますが)。

次に、今回のコロナの影響で売上が減少していることが条件となります。そりゃそうですよね。救済策のわけですから・・・。

さて、この減少の基準には以下の二つがあります。これのどちらかをクリアしていれば対象となります。

テナント事業者のうち、中堅企業、中⼩企業、⼩規模事業者、個⼈事業者等であって、5⽉〜12⽉において以下のいずれかに該当する者。
・いずれか1カ⽉の売上⾼が前年同⽉⽐で50%以上減少。
・連続する3ヶ⽉の売上⾼が前年同期⽐で30%以上減少。

経済産業省関係 令和2年度第2次補正予算案(概要)より

これは、すでに多くの事業者が申請した(と思われる)持続化給付金とちょっと似てますよね。ただ一つ違うのは期間です。持続化給付金は2月から12月までのいずれかでしたが、今回の家賃支援給付金は5月から12月とちょっと短くなっているので注意してください。

飲食店にしろ塾にしろ、他の事業にしろ、すでに影響を受けてしまった事業は、緊急事態宣言が解除されたからといってすぐに元通りとはいかないところがほとんどだと思います。なんとか給付金でしのいで、年内には復活したいところです。

でも、極端な話。「営業自粛が求められた5月はめちゃくちゃ売り上げが下がって半減したけれど、通常営業が始まった6月からは売上は元通り。それどころかバカ売れしているぜ! 」という場合も対象になるわけです。事業者としては、これを目指したいところですね。 

手続きの方法

詳細についてはまだ発表になっていません。ですが、持続化給付金の手続きをした人はそのあまりの簡単さにびっくりされたのではないでしょうか?
必要なことが書いてあれば、基準月の売上はメモでいいと言うあの簡単な方法・・・。
今回はあれほどではないにしても、他の給付金や助成金よりはうんと簡単な方法になると予想されています。

今のところ必要と言われている資料は以下。正式発表になると変わることもあると思うので、あくまでも現在のところの予測だとご理解ください。

[法人の場合]

  • 確定申告書別表一(収受印あり、e-Taxの場合は「受信通知」)
  • 法人事業概況説明書
  • 対象月の売上台帳
  • 通帳の写し
  • 賃貸借契約書
  • 直近の月額家賃が分かるもの(賃貸借契約書や家賃の支払・引落を証明する資料等)

[個人の場合]

  • 確定申告書第一表(収受印が押されているもの、e-Taxの場合は「受信通知」を添付)
  • 青色申告決算書(青色申告を行っている個人事業主のみ)
  • 対象月の売上台帳
  • 通帳の写し
  • 本人確認の書類の写し
  • 賃貸借契約書
  • 直近の月額家賃が分かるもの(賃貸借契約書や家賃の支払・引落を証明する資料等)

申請は6月下旬から、支給は7月頃と予測

家賃支援給付金は閣議決定されているので、根本から覆るということはありません。定額給付金(世帯主に家族の人数分×10万円支給される制度)は、一度、一世帯30万円と発表されてから覆っていますが、あれは閣議決定前でしたからね。
このまま順調に進むとすれば、6月17日に閉会する国会で予算を成立させ、6月下旬かあたりから申請がはじまるのではないかと思われます。そして、7月中に支給開始でしょうか。

最大の不安は、サービスデザインなんちゃら協議会(あえて実名回避・笑)の問題で、業務委託先がない・・・なんてことになったら最悪ということ。不透明なことはNOですが、何とかまともに事を運んでほしいものです。

何はともあれ、管轄は経済産業省になる予定。ホームページなど要チェックですね。

原田園子

原田園子ディレクター

投稿者プロフィール

「不動産の学校」のディレクター兼ライター。
住宅メーカーや不動産業者をクライアントに持っています。
不動産関連の取材実績も多数あり。
不動産投資から日々の暮らし記事まで、幅広く担当します。

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