1つの土地価格に価格が5つ?公示価格、基準値標準価格、路線価、固定資産税評価額の違いを知ろう
「自分の住宅がいくらで売れるのか?」、マイホームを所有している方は気になるところですよね。残念なことに、建物の価値は年を経るごとにどんどんゼロへと近づいていきますので、「住宅がいくらで売れるのか」、そのポイントは「土地がいくらで売れるのか?」ということになります。自分の住宅がいくらで売れるのか?その問いの答えを5つの土地価格と共にご説明します。
土地の価格は「一物五価」
物にはいくつかの価格が存在しても珍しいことではありませんよね。みなさんの身の回りの物にも、いろんな値段が付いていると思います。お寿司の時価。市場価格。希望小売価格。さまざまな値段、価格がありますよね。同じように、土地に対してもそれぞれの目的によって、それぞれの価格が存在し、5つの側面があるとされています。これを「一物五価」といいます。1つの土地に対して、5つの価格があるのです。それぞれの価格は以下のようになります。
- 地価公示(公示価格)
- 基準値標準価格(都道府県地価調査価格)
- 相続税評価額(路線価)
- 固定資産税評価額
- 実勢価格(時価)
地価公示(公示価格)とは
毎年「銀座の土地が今年は更に上昇して〇〇円になった」、といったニュースを新聞やテレビなどで目にすることがありますよね。そのニュースなどで公表された土地の価格が「公示価格」です。
公示価格とは全国の主要な地点(平成31年では26,000地点)で、毎年1月1日時点の標準地の1㎡あたりの正常な価格を公表するものです。この土地の価格は鑑定評価員を務めた不動産鑑定士が鑑定します。
本来はすべての土地を鑑定して価格をつけるのがベストですが、そう簡単にはいきません。そこでその地域の代表的な土地を標準地として選び、地価公示法に基づいて、標準地の価格を毎年3月下旬に国土交通省が公表するといった形を取っています。
地価公示の目的
地価公示にはさまざまな役割があります。
- 一般の土地の取引に対して指標を与えること
- 不動産鑑定の基準となること
- 公共事業用地の取得価格算定の基準となること
- 土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること
- 国土利用計画法による土地の価格審査の基準となること 等
「国土交通省 地価公示の主な役割」から引用
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000043.html
公示価格は国土交通省のホームページから簡単に調べることが出来ます。時間があるときに自分の住む土地がいくらなのか、調べてみましょう。
「土地総合情報情報システム」
http://www.land.mlit.go.jp/webland/
基準値標準価格(都道府県地価調査価格)とは
たまにインターネットや書籍で一物五価とうたいながら、4つしか価格が説明されていないときがあります。それは今回説明する「基準値標準価格」を1つの価格として捉えるか、公示価格の補足的な存在として公示価格と合わせて1つとしてしまうか、別にカウントするかで別れて来ます。
基準値標準価格は「当道府県地価調査」により公表された土地価格のことであり、公示価格に近しいものはありますが、基準値標準価格は国土利用計画法施行令第9条に基づいて、各都道府県知事が毎年9月下旬に公表しています。
鑑定するのも公示価格と同様に不動産鑑定士です。毎年7月1日を基準日として、地価調査の代表的な基準地を鑑定します。基準地は公示価格の標準地と異なる地点を設定していますが、一定数を同じ地点で設定しています。そのため、公示価格の公表が3月下旬、基準値標準価格の公表が9月下旬と約半年間の土地の価格変動をこの2つで捉えることが出来るので、公示価格の補足的な役割を担っているといえます。
基準値標準価格は公示価格同様に、国土交通省のホームページから簡単に調べることが出来ます。公示価格のみを調べるか、都道府県地価調査(基準値標準価格)も一緒に調べるのか、チェックボタンにチェックをそれぞれ入れるだけで簡単に調べられます。
土地総合情報システム
http://www.land.mlit.go.jp/webland/
相続税評価額(路線価)とは
相続税評価額とは土地の相続や贈与の計算をする際の基礎となる価格です。毎年1月1日を基準日として、国税庁が7月1日に公表します。一般的に「路線価」といった場合はこの相続税評価額を指します。そして、路線価の文字通り、土地全体の価格ではなく、土地に面した道路の価格に、土地の面積を掛け合わせ計算して、評価額を算出します。公示価格の約80%を目安に決められています。
固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは不動産に関わる税金に関連した計算の基礎となる価格です。固定資産税評価額は3年に1回、4月に各市町村から公表されます。23区だけは区ではなく、東京都が公表します。
固定資産税評価額を使用計算する税
- 固定資産税
- 都市計画税
- 登録免許税
- 不動産取得税
固定資産税評価額は全国のほとんどの土地や家屋が対象となっているため、毎年そのすべてをカバーするのは難しく、3年に1回、1月1日時点の価格が更新されることになっています。3年に1回と公表から長期にわたって時間が経過するため、土地価格の変動と大きなズレが生じる場合があります。ただし、価格の基準日から地価が下落した場合に限り、「下落措置修正」を図り、地価下落を反映した評価額に計算、修正します。
固定資産税評価額は公示価格、基準値標準価格の70%を目安に決定されています。固定資産税評価額は総務大臣の定める「固定資産評価基準」によって算出するのですが、総務省のホームページからこの「固定資産評価基準」を確認することが出来ます。それよりも簡単にわかるのは、市町村から届く納税通知書です。ご覧頂けば、おおよその評価金額がお分かり頂けます。
実勢価格(時価)とは
その名の通り、時価です。ただし、時価というとお寿司屋さんのお寿司を想像する方も多いのではないでしょうか?その日に仕入れた、その時の価格で握ったお寿司の値段が時価です。不動産の時価はちょっと違います。不動産の実勢価格(時価)は売主と買主の当事者間で決定される価格、成約価格のことを指します。
ですから、例えば不動産屋さんの店頭に張り出したチラシに掲載されている販売価格は実勢(時価)ではありません。何故ならばその価格で買い手がつくか、成約するかはわからないからです。
ではどのようにして実勢価格(時価)が決まるのかといえば、近隣の土地の取引相場、過去の当該土地の価格、それらを見比べ、検討した結果の平均に値する価格が出来上がり、その価格に買い手がついて、成約して初めて実勢価格(時価)となります。
一物五価の比較
これまで説明した一物五価を1つの表にまとめました。実勢価格は基準日、公表日といったものなどが存在しないので、表には加えていません。それぞれの価格の役割から、公示価格を100%とした場合の価格も記してあります。例えば固定資産税評価額は公示価格の70%を目安に決定されている、といった表記になります。
公示価格 | 基準値標準価格 | 相続税評価額 | 固定資産税評価額 | |
役割 | 一般の土地取引価格の指標 | 一般の土地取引価格の指標 | 固定資産税等、税金計算の基礎となる価格 | 相続税、贈与税の基礎になる価格 |
基準日 | 毎年1月1日 | 毎年7月1日 | 1月1日(3年に1度評価替え) | 毎年1月1日 |
公表日 | 3月下旬 | 9月下旬 | 4月 | 7月1日 |
決定者 | 国土交通省 | 都道府県 | 国税局 | 市町村
東京23区は都 |
公示価格を100%とした場合の表か割合 | 100% | 100% | 80% | 70% |
さいごに
一物五価、土地の価格はさまざまな側面から見ることが出来ます。自分の住宅が一体どのくらいの価値あるものなのか?5つの側面から見比べてみるのも面白いですね。また、住宅の価値を5つの側面から多面的に捉えることが出来るので、実際に住宅を販売することになったときは、住宅の魅力を推して、より高く売ることが可能になるかも知れません。まずは、一物五価とそれぞれの関連性を把握しておきましょう。