【連載】急増する室内死亡事故。損しないために押さえておきたい業界最新事情と対策

  • 2021/8/6
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2021年も半分が終わりましたが、コロナ禍のダメージからの回復の兆しはなかなか見えてきません。

たとえば、2020年10月に報じられた「自殺者数増加」の件もそうです。明確に「コロナが原因」といえるわけでもないのですが、しかし警視庁発表のデータでは、自殺者数は昨年6月より11ヶ月連続で前年同月を上回っており、5月までの累計で前年比113%という結果となっています。私の周りの管理会社からも、室内での死亡事故が増えたという声が聞こえてきますし、肌感覚としても未だ自殺者は増加傾向にある印象です。

では実際のところ、賃貸物件での死亡事故はどのくらい起きているのでしょうか。

弊社の管理物件7,000戸における、過去5年間の室内死亡事故件数を調べたところ、2016年から2019年までの事故数は年間で1~2件でした。業界内では、室内での死亡事故は3,000戸あたり約1件と言われていますので、これとほぼ同数だったと言えます。

ところが、コロナ騒動の始まった2020年の事故数は、11件。まさかの10倍増です。前述の「前年比113%」とはずいぶんギャップがありますが、賃貸住宅の多くが自殺・孤独死の発生しやすい「単身タイプ」の部屋であるために、このような発生率の急増が観測されているのかもしれません。

所有物件で死亡事故が起きれば、経営へのダメージは相当なものとなります。なればこそ、こうした事故への対策や最新事情について、大家さんもしっかりと把握されておくべきではないでしょうか。

事故物件オーナーを救済か。告知事項のガイドライン案発表

まず知っておいていただきたいのが、国交省が発表した大家さんにとっての「朗報」です。

2020年5月、国交省は「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)を公開しました。今まで明確になっていなかった「賃貸物件の心理的瑕疵・死亡事故」に言及する内容であり、また一部の事故物件およびオーナーを救済するかもしれない内容とあって、大きな注目を集めています。

このガイドラインの要点は次の4点です。

①室内での他殺や自殺、事故死は【告知が必要】
②①の物件の告知期間は特段の事情がない限り、発生から概ね3年間
③自然死または日常生活における不慮の死は【告知の必要はない】
④ただし、③でも発見の遅れなどから特殊清掃等が必要となった案件は【告知が必要】で、その告知期間は概ね3年間

最重要ポイントは、早期発見が叶った自然死・不慮の死は告知不要、と国交省が明言した点でしょう。

これは特に「単身高齢者の入居」に大きな影響を与えそうです。なぜなら、単身高齢者の入居受け入れは「孤独死による事故物件化」こそが最大のリスクであり、そのリスクが”早期発見”で回避できるなら、たとえば「見守りサービス」の導入によって対策できるようになるからです。

最近は見守りサービスも進化・多様化し、室内の生活動線にセンサーを設置し、一定時間検知しないと連絡が入るサービスや、職員が定期的に電話や訪問をしてくれるサービスなどが登場しています。

ちなみに弊社では、日々の電気使用量の異常を検知して連絡してくれるサービスを利用しています。新たな設備設置や工事が不要で、低コストで導入できるのがメリットです。

相続人がいない!を委任で回避。法務省のモデル特約条項

また、高齢者入居関連でもうひとつ知っておきたいのが、2020年6月に法務省・国交省から発表された「残置物の処理等に関するモデル契約条項」です。

万一の際には、賃借人の死亡によって「賃貸借契約の解除や室内の荷物の撤去がスムーズにできない」という問題が発生しがちです。そして通常であれば、賃借権・所有権を相続した相続人と連絡をとって処理を進めるのですが、相続人がいない・所在が分からない場合には、この処理ができず次の募集が困難になってしまいます。

この問題を解決するためにつくられたのが、同モデル契約条項です。

ざっくり言うと、この契約では、賃借人に万一のことが起こった際にあらかたの事務処理を引き受ける「受任者」を設定し、受任者が①賃貸借契約の解除と②残置物の廃棄及び指定残置物の移送をできるようにします。あらかじめ賃借人死亡時の委任先を決めておくことで、万一の際のごたごたを回避し、高齢者受け入れのリスクを下げるのです。

なお、受任者は推定相続人が望ましいとされていますが、困難な場合は居住支援法人や管理業者などの第三者もなれるようです。特に管理会社が受任者となってくれれば、大家さんとしても安心して高齢者を受け入れられるのではないでしょうか。

対策を組み合わせ、リスク管理の徹底を。

今回の告知事項のガイドラインは、たとえ自殺等の要告知案件であっても、「3年後には告知不要となり家賃も戻せる」という、ひとつの防衛ラインを引いてくれました。また、モデル条項の採用や見守りサービスを活用することで、特に単身高齢者の受け入れリスクは大きく下げることができそうです。

ただし、これらだけですべてのリスクを賄えるわけではない以上、状況に応じたリスクヘッジは必要です。たとえば、原状回復費用や空室期間・値引き期間の家賃損失分の補償を受けられる少額短期の死亡事故保険に加入するのも有効な対策といえますし、同様の補償内容の火災保険オプションを利用することも検討できます。

未だ安定には程遠いコロナ禍だからこそ、時には複数の対策を組み合わせ、より安定的な経営を目指すことも必要でしょう。

筆者:(株)アートアベニュー内田
弊社は首都圏の賃貸物件約7000戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

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