【連載】コロナ禍で取るべき施策は大胆に

株式会社アートアベニューの原田と申します。弊社は首都圏の賃貸物件約6700戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

物件の「実力」が明白に。タイプに合わせた募集戦略が必要

新型コロナウイルスは不動産業界に多くの影響をもたらしました。弊社管理物件においても、昨年7月の稼働率が97.65%だったところ今年7月は97.08%と、約0.6%の下落。解約が増えた一方、契約数が移動自粛によって伸び悩み、空室を吸収しきれなかったことが要因の一つです。

しかしながら、すべての物件が「コロナで反響が減った」というわけでもないのです。もう少し深く分析してみると、物件も次の3つに大別されることが分かりました。

  • コロナ禍中も高い人気が維持され、賃料を上げることに成功している物件
  • ビフォーコロナでは好調だったが、緊急事態宣言前後から勢いが衰えた物件
  • ビフォーコロナから苦戦物件の常連で、さらに厳しい状況に陥った物件

実は、このような状況下でも①のような物件があります。こうした「実力の高い物件」は、引き続き強気の設定賃料でも決まるでしょう。問題は②と③のタイプです。

②に当てはまるのは、例えば「立地はそこそこ良いけどちょっと高めのシングル」です。それぞれ8万円のワンルームに暮らしていたカップルが、コロナで収入が減ったことをキッカケに「同棲」という選択で家賃を節約することにした(2人で10万円など)…、こんな話が増えてくると解約数が訴求力を上回り、空室が目立つようになります。空室解消のためには、募集条件や初期費用の見直し、募集販促費の付与といった一定の条件改定が必要です。

厄介なのが③のタイプ、例えば「決まらないので積極的に外国人を誘導していたシングル」などです。外国人の流入に頼ってどうにか空室を埋めていたものが、コロナの影響で流入がストップし、稼働が急激に悪化。出入国という個人の力でどうにもできない事情が原因であるだけに、このままだと年内ずっと空室になる可能性もあります。

対策としては、②に行く客を引き込めるような、強力かつ即効性のあるものが求められます。場合によっては、痛みを伴うレベルの値下げやキャンペーン、ターゲットを変更しての大幅な室内刷新も必要かもしれません。アフターコロナにおける正解は誰にも分かりませんが、誰も経験したことがない状況下だからこそ思い切った施策をとるべきでしょう。

解約抑止にはまず不満解消。ネット環境は要確認

一方で、入居満足度の向上も重要です。究極の空室対策は「解約を発生させない=テナントリテンション」にあります。

コロナ禍における入居者の不満は「音の問題」と「インターネット環境」です。弊社管理物件でも、ネット環境に関する問い合わせは昨年の1.3倍(今年3月〜7月235件、昨年同時期179件)に増加しています。内容は「在宅勤務時、ネット速度が遅く仕事に支障がある」「無料でありがたいが通信規制がある」「夜間の通信速度が遅い」といった声が多数。インターネット無料というキーワードは当たり前となりつつありますが、コロナ禍では「より通信の速い回線」が求められている以上、回線を増強する・より速度のあるネット会社に切り替えるといった施策が不満解消に効果を発揮しそうです。

大胆な「値下げ」に踏み切る際も、リスクヘッジの徹底を

ちなみに、③の対策に「痛みを伴うキャンペーン」を挙げましたが、実は弊社でも既に実施中です。弊社が取った施策は「年内賃料半額キャンペーン」。インパクトの大きい差別化策とあって、対象物件の20%が開始2週間で申し込みを獲得しています。

しかし、こうした大胆な施策で重要なのはリスクヘッジです。今回、弊社は半額という魅力を「特約」で付与していますが、そもそも特約を無効とされたり、趣旨に反した解釈をされたりしないよう明確な条文を作成しましょう。もちろん、短期解約違約金の設定も忘れずに。弊社では違約金に加えて、万一「半額期間」で解約されても損害が小さくなるよう、年明けの引っ越しシーズンを見越したキャンペーン期間を設定しています。

今回は採用を見送りましたが、弊社が得意とする「定期借家契約」を使って、短期間の賃料半額期間と、正規賃料での通常契約期間とを「再契約でつなぐ」という方法も有です。手間はかかりますが、SUUMO等への掲載時のインパクトとリスク回避の効果は抜群です。できる対策を徹底的に、大胆に、しかし慎重にやってみる――、矛盾は重々承知していますが、この苦境を乗り切るための一番のポイントかもしれませんね。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

 

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