【連載】ついに数字に表れた「郊外物件ニーズ」を掴む。テレワーク環境充実の際の3つの工夫ポイント

  • 2021/7/2
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「賃貸物件の好立地とは都心駅近であり、家賃が高くても都心の方が高稼働である」

そんな「業界の常識」が揺らいでいると言ったら、皆さん驚かれるのではないでしょうか。

変化の原因は言わずもがな、新型コロナウイルスです。緊急事態宣言、まん延防止等重点措置…、コロナ禍は日本の経済活動、ひいては私たちの生活・暮らしにも大きな影響を与えました。

特に、昨年から賃貸業界でも注目を集めているのが「リモートワーク」の影響です。
政府の発表によれば、テレワークを実施した企業は63.5%。職住近接だった住まい選びが、テレワークの普及によって変化している――、そんなネット記事やニュースを見かけた方も多いことと思います。

そして、皆さんの関心は一点に集約されます。「その変化は本当に起こっているのか?」

正直、私たちも半信半疑でしたが、しかしデータにはしっかりと表れていました。
当社・アートアベニューでは毎月「23区」と「首都圏全体」の空室率を算出しているのですが、2020年6月を境に様子が一変します。

これまで常に「23区<首都圏全体」だった空室率が、なんと1年間にわたって「首都圏全体よりも、23区内物件のほうが空室率が高い」という状況を続けているのです。

トレンドは「働きやすい住環境」。苦情発生要素を解消して快適に働ける部屋づくり

23区物件の稼働率低下は、解約件数の増加によるところが大きいです。中でも目立って増えたのが『都心の近さより部屋の広さを重視』という解約理由。つまり、郊外への転出です。

この変化は、郊外物件にチャンスが訪れている、とも言い換えられるでしょう。勤務先等への移動の利便性が重視されなくなったぶん、価値が高まったのが住空間の利便性です。たとえば、テレワーク環境を充実させることで、人気物件に返り咲くことも夢ではないかもしれません。

①高速インターネットの無料化

近年は「インターネット無料」の物件がずいぶんと増えましたが、一方で、テレワーク普及と比例するように増加したのが、ネット無料物件からの『ネットが遅い』という相談です。当社でコロナ禍中に受け付けたインターネット関連の相談・苦情件数は、コロナ禍以前と比べて最大で2倍にも達しました。

回線速度が遅い原因は、ネット無料物件のほとんどが「1棟1ギガ程度の共有回線」であることです。共有かつ1ギガですから、物件内にヘビーユーザーがいる、あるいは全体的な利用増が起こるとあっという間に速度が低下します。改善案として、利用率の高い部屋を回線業者に調査させ、該当者のみ利用制限をかける方法もありますが、これでは根本的な解決にならず、該当者の解約にも繋がります。

そう考えると、郊外物件が採るべき「リモートワーカー訴求策」は以下の2つです。

A:大容量・高速の共有回線を契約して提供する
B:1戸当たりの専用回線をひく

単なる「ネット無料」では、ストレスのない仕事環境を求めるリモートワーカーを捕まえるには訴求力不足です。どちらも導入費・ランニングコストがネックですが、ネット無料ぶんを賃料に反映した場合の費用対効果や、空室期間の短縮効果によっては十分に検討できるでしょう。

②ワークスペースの確保

テレワークの普及、そして広さ重視の入居者心理を考えると、ニーズが高そうなのが「ワークスペース」です。とはいえ、新築の企画中でもない限り部屋の広さは変えられない以上、既存物件ではなんらかの工夫をもってワークスペースを確保する必要があります。

たとえば、折り畳みできる壁付けのデスクセットや、小スペースで展開可能なワークスペースキットであれば、大幅な間取り変更なしに導入ができ、デッドスペースの有効活用も検討できそうです。
また、専有部だけでなく「共用部」をワークスペース化する手もあります。エントランスなどに十分なスペースがあるなら、共用のWi-Fi環境などが整備されたワーキングスペースを作ってもいいでしょう。

③防音性の高さをアピールする

テレワークの弊害として象徴的なのが、在宅時間の増加とともに急増した騒音問題です。一時期流行したZOOM飲み、子どもやペットの騒音…、こうした「リモートワークの敵」にきちんと対策のできている部屋は、その強みを大いにアピールしましょう。
既存物件での音対策はワークスペース同様、簡単ではありませんが、壁や床に防音パネルやシートを施工する、窓をペアガラスにしたり2重サッシにするといった工夫もできます。まずは現段階の音の状況を精査し、予算と相談しながら進めていくのが良いでしょう。

そのほか、「壁の一面にオンライン会議で映えるような壁紙を貼る」「入居特典に高性能のヘッドセットをプレゼントする」などの作戦も考えられますし、近隣の魅力をまとめた「ロケーションマップ」を作って暮らしやすさ・住環境の充実をアピールするという方法もあります。

細かい工夫ですが、コロナ禍中・アフターコロナの”新しい生活様式”にどれだけアプローチできるかがライバル物件との差別化のカギ。都心物件にない魅力を充実させ、コロナ禍をチャンスへと変えていきましょう。

筆者:(株)アートアベニュー石井

弊社は首都圏の賃貸物件約7000戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

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