住宅弱者への公的支援制度って?高齢者も賃貸住宅に入居できる!
- 2020/2/3
- 賃貸
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衣食住は生活の基本です。しかし、さまざまな事情により住むところが見つからない「住宅弱者」が増えていることをご存じでしょうか。たとえば、高齢者の中にはパートナーに先立たれて、広い一軒家にひとりで暮らす人がいます。終活の一環として、住居を処分したお金でひとり暮らしに適した賃貸物件に移りたいとは思うものの、高齢者への入居拒否が不安で行動に移せない人も少なくないようです。そういった住宅弱者に向けて、政府は2017年に「住宅セーフティネット制度」をスタートしました。
今回は、住宅セーフティネット制度について詳しく紹介します。ご自身が当てはまる場合はもちろんのこと、周りに住宅弱者と呼ばれる立場になっている人がいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
住宅セーフティネット制度とは
住宅弱者とは、高齢者だけを指す言葉ではありません。シングルマザーや低額所得者など、家賃の支払いが不安視されて賃貸物件の入居を断られる人たちのことを指す言葉です。
これまでは、住宅弱者に対する公的支援といえば公営住宅でした。しかし、公営住宅の数を大幅に増やすことは難しく、住宅弱者が公営住宅に申し込んでもなかなか入れないのが現状です。
公営住宅が不足する一方で、民間の空き家や空き室は増加傾向にあります。
そこで、増えつつある空き家や空き室と住宅弱者を結びつけようというのが、住宅セーフティネット制度です。
住宅セーフティネット制度は、以下の3つを柱として成り立っています(※1)。
- 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
- 登録住宅の改修や入居者への経済的な支援
- 住宅確保要配慮者に対する居住支援
住宅セーフティネット制度は、住宅弱者の入居を拒まない物件の確保といったハード面と、緊急時の対応・見守りといったソフト面の連携を目指しています。
それでは、制度の詳細を見ていきましょう。
住宅確保要配慮者とは
最初に、住宅確保要配慮者について説明します。
住宅セーフティネット制度では、いわゆる住宅弱者のことを「住宅確保要配慮者」と呼んでいます。
具体的には、
- 低額所得者
- 被災者
- 高齢者
- 障害者
- 子育て世帯
が、住宅確保要配慮者です。
低額所得者とは、月収が15万8,000円以下の人を指す言葉。
子育て世代とは、18歳未満の子どもがいる世帯のことです。子どもが原因のトラブルから入居拒否につながる可能性があるため、制度の対象となっています。
そのほか、新婚世帯など、各自治体によって制度の対象者が追加されることもあります。
住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
住宅セーフティネット制度1つ目の柱、賃貸住宅の登録制度について見ていきましょう。
簡単にいうと、賃貸住宅の登録制度は物件を借りたい人と物件をマッチングさせる制度です。登録されたセーフティネット住宅は入居を断らないことが前提のため、住宅弱者の「入居を断られるかもしれない」といった不安を軽減してくれます。
さらに、セーフティネット住宅として登録する物件は、
- 耐震性
- 居住面積25平米以上
- トイレやお風呂、キッチンがあること
- 家賃が近隣物件とバランスが取れていること
など、一定基準を満たす必要があります。
入居に不安を覚えて希望条件を下げることなく一定基準を満たした物件に住めるのは、住宅弱者にとって大きなメリットですね。
また、セーフティネット住宅を登録する際に、大家は入居を受け入れる要配慮者の範囲を決めます。無条件で全ての住宅弱者を受け入れる必要がなく、大家は物件の特性を生かして入居者を募集できます。
セーフティネット住宅として登録された物件は『セーフティネット住宅 情報提供システム』で確認できますので、ぜひご活用ください。入居対象者やバリアフリー対応といった条件でも絞り込めますし、申し込み前の段階で借りたい人と物件のミスマッチを防げるため、高齢者や障がい者は自分に合う物件を探せます。
登録住宅の改修や入居者への経済的な支援
続いて、2つ目の柱となる経済的な支援について見ていきましょう。
住宅セーフティネット制度には、要配慮者の専用物件にする場合の改修費用や入居者への支援があります。
入居者への支援を「家賃低廉化補助制度」といい、低額所得者の入居に補助金が出る制度です。国と地方自治体から最大4万円が支給されます(※2)。たとえば、家賃が5万円の場合、国と地方自治体から2万円ずつ補助され、入居者が負担する家賃は1万円です(※3)。
家賃低廉化補助制度の補助期間は最長 10 年と定められています。ただし、10年間の補助金額の合計が限度額480万円を超えない場合、自治体判断で期間が延長となるケースもあります。
そもそも、住宅弱者が賃貸物件の審査に通らないのは、大家側に住宅弱者を避けたい理由があるからです。具体的には、家賃滞納や孤独死といったリスクがあります。そういった大家側の事情が住宅弱者への入居拒否につながります。
その一方で、住宅セーフティネット制度の経済的な支援は、入居者だけでなく大家側にもメリットがあるといえるでしょう。低額所得者は低い家賃で入居でき、大家は支援があることで本来の家賃に近い金額を確保できます。
大家にリスクがなければ、低額所得者や高齢者の入居を拒む理由もありません。
住宅確保要配慮者に対する居住支援
住宅セーフティネット制度、最後の柱は居住支援です。
これまで、住宅弱者への居住支援は福祉関係者がおこなっていました。一方、住宅セーフティネット制度では、居住支援法人や居住支援協議会も居住支援を行います。
居住支援法人とは、都道府県から指定を受けたNPO法人や社会福祉法人、居住支援を目的とする株式会社などのことです。居住支援協議会とは、地方公共団体や不動産などの関係業者、居住支援団体などが連携した組織のことで、住宅弱者と大家を支援してくれます。
住宅弱者への居住支援の一例としては、
- 住まいに関する相談
- 家賃債務保証
- 見守り、安否確認
- 健康相談
- 財産管理
- 死後事務
などがあります。
たとえば、京都市では定期的な見守りのほか、緊急時の対応や保健福祉に関する生活相談などの生活支援サービスを、市民税が非課税の人は無料で、市民税が課税される人は月額1,500円で利用可能です。なお、サービスの利用には、支援が必要な65歳以上のひとり暮らしで、住み替えを希望する人といった条件があります(※4)。
居住支援は都道府県に指定を受けた居住支援法人が実施するため、利用できる支援サービスの内容や費用などは地域によって異なります。現時点で登録済みの居住支援法人は『居住支援法人一覧(PDF)』で確認できますので、ぜひご活用ください。
セーフティネット住宅を選ぶメリット
セーフティネット住宅の大きなメリットは、住宅弱者の入居を断られる心配が軽くなることです。
セーフティネット住宅であれば、高齢者は高齢者の入居を拒まない物件から住むところを探せます。また、居住支援制度があるため、入居に関する相談や住居支援法人による家賃滞納時の立て替えが利用可能です。
もちろん、セーフティネット住宅に入居できればそれで全てが解決するわけではありません。しかし、住宅セーフティネット制度の居住支援では、入居だけでなく、入居してからの悩みや不安に対するサポートも受けられます。
たとえば高齢者の場合、目に見えて分かる大きな異変はなくとも、健康面に何かしらの不安を持っている人は多いものです。パートナーが先立った後、日常生活で思う通りにいかないこともあるでしょう。そういったときに電話や訪問による見守りや、ちょっとしたことを頼める生活支援があれば、心強いですよね。
住むところの決定だけでなく居住を継続するための支援があることは、住宅弱者にとって公的支援制度を安心して利用できる最大のポイントです。
まとめ
住宅セーフティネット制度は大家にとってもメリットがある制度ですから、今後は物件の登録もさらに増えると考えられます。住宅弱者の中には、入居を断られただけでなく、住みたい場所が現住所から遠いといった事情で物件を探すこと自体が難しい人もいることでしょう。そんなときは、まず住んでいる都道府県の居住支援法人に連絡し、入居や住み替えの相談をしてみてはいかがでしょうか。