スルガ銀行アパマンローン問題の疑問点。オーナーの事業者としての責任はどこにいった?
- 2021/6/16
- 不動産投資
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何をするにしても、ビジネスに失敗はつきもの。事業は10年で9割の企業が倒産するとも言われており、決して楽なものではないのは多くの人の共通認識でしょう。しかし、耳を疑うようなことも世の中には起こっています。そのひとつがスルガ銀行が直面しているアパマンローンを巡る話題。今回はこの一連の流れについて見ていきながら、ひとつの疑問を呈したいと思います。
「カボチャの馬車」事件で大きな痛手を負ったスルガ銀行とオーナー側の事業者としての責任
スルガ銀行といえば、2018年にシェアハウス「かぼちゃの馬車」をめぐる融資の不祥事で話題となりました。不動産投資をしている方ならご存知のことでしょう。
簡単に説明すれば、かぼちゃの馬車を管理・販売していたスマートデイズと結託し、融資承認を得るためのオーナーの銀行貯金残高を水増し申請して、それがインチキだと知りながら受領し融資を実行していました。また事業に参入するオーナーに対し、スマートデイズが家賃明細書(レントロール)を偽造し、収益性を高く見せかけていたことをスルガ銀行も知っていたと言われています。つまり、スルガ銀行が結託していたわけです。
最終的には、スマートデイズは破産し、オーナー達は銀行に救済を求め、2018年3月に被害弁護団が発足。長い交渉を経て、2020年3月に257人のオーナーと和解が成立しています。具体的には、オーナーはシェアハウスを手放す代わりに、スルガ銀行は債務を帳消しにすると言う解決に至っています。
筆者はもちろん当事者ではないので、オーナーにどのような話がされ、シェアハウス運営に踏み切ったのかはわかりません。ただし、多くの(ちゃんとした)不動産投資家の間では、「かぼちゃの馬車はきちんと調べれば手を出す物件でない」とずっと言われていたことを考えれば、オーナー側のあまい計算があったのは事実のはず。にもかかわらず、圧倒的にオーナーに有利な解決策を見出したことが、ある意味、衝撃的だったというのが正直なところでした。
もちろんスルガ銀行がやった不正は許されるものではありません。当然です。しかし、それを加味しても・・・と思うのは私だけではないはずです。
第二弾はアパマンローン
そして、この度、第2シーズンが始まりました。これはアパートやマンションのローンに関するもの。基本構造はシェアハウス向け融資と同じで、レントロールの偽造や融資書類の改ざんが行われていたと弁護団は主張しています。
しかし、さらに悪いこともあります。カボチャの馬車のときは、不正を主導していたのはあくまでもスマートデイズであり、スルガ銀行はそれをサポートしていたという立場でした。しかし、アパマンローンの方では、スルガ銀行自身がセミナーなどを主催し、販売会社を用意し、オーナーを焚きつけたという構図になっているのです。
このため弁護団は、アパマンローンの債務減免を求め、交渉を始めました。50人以上の弁護団を組んで・・・。恐すぎる!
再度言いますが、不正は許されるものではありません。当然です。しかし、ここには事業を起こしたオーナー側を棚に上げようとする姿勢が見え隠れし、さらに言えば、オーナー側が被害者のような主張をしていることに大きな疑問を感じます。不正問題と事業を興した責任はある程度分けて考えるべきではないかと思うわけです。
少し話はズレるのかもしれませんが、このコロナ禍、たくさんの企業が倒産を余儀なくされました。その中にはコロナ以前は順調であったにも関わらず、コロナという見えない敵に行く手を阻まれ、泣く泣く倒産という道を選ばなければならなかった事業者も多くいます。もちろんそこにはたくさんの従業員も含まれていたはず。
それでもこの道しか選べなかった人がいる一方、あまい計算で、あまい汁をすすろうとしてアパマンローンを組んだ人は救済しようとされる。言い方には気をつけなければなりませんが、事業を起こすとは当然、リスクも伴うわけです。にもかかわらず、「あまい汁がなかったのは俺たちのせいではない。欺された」というのは、どうなんでしょうか?
今回のスルガ銀行の第2ステージ突入の流れを見れば、オーナー側があまりに被害者ぶっていることに疑問を感じずにはいられません。
オーナーのあまい計算は許されるの?
さらにこのアパマンローンの問題は、スルガ銀行だけの問題ではありません。なぜなら、アパマンローンを実施しているのは、スルガ銀行だけではないからです。ほとんどの銀行が行なっています。その中には、都市銀行も当然含まれます。
つまり、スルガ銀行がアパマンローンに対して元本カットなどの措置を講ずる前例を作れば、他の銀行でアパマンローンを組んだオーナーも元本カットを求める可能性が出てきます。その中には、ベテラン不動産投資オーナーから見れば、最初から無理だとしか思えない無謀な計画に、見積もりの甘い計算をし、いい思いをしようという軽い計算から手を出す人もいるでしょう。それを認めることになります。
実際、甘い計画に、甘い運営が高じて経営を断念したアパートやローンを別のオーナーが購入し、立て直している物件が多くあります。これが不動産オーナーの役割であり、優秀な経営者はそうして資産を形成しているわけです。事業なので、うまくやれる人と、やれない人がいるのは当然なわけです。誰がやっても成功するはず無いのは不動産も他の事業も同じ。それを無視して、うまくいかないから何とかしてくれと特例を認めるのはいかがなものかという問題があるわけです。
不動産投資業界が冷え込むという、さらに大きな問題も
また、このような流れが転じて、不動産業界が冷え込むのも問題です。
コロナ禍では一部の飲食チェーン店のオーナーが(飲食店を代表してと言って)、不動産オーナーが飲食店からの家賃減免交渉に応じることの義務化を求めたこともありました。しかし不動産オーナーの多くは、自身もローンを組んで物件を購入しているわけで、それを一方的に減免しろと主張するのはいかがなものかと感じたものです。筆者自身も小さいながら飲食店を経営していますが、自称代表者たちが一方的な主張するのを見て、「自分のことしか考えてない。恥ずかしいからやめろ!」と叫びたくなりました。応じれる人は応じてくれるだろうけど、無理な人は無理なんだよと。
しかし、これは一般の人が持つ”大家さん”のイメージを踏襲したものではないかと感じています。不動産オーナーといえば、みんなが大地主のような左団扇のイメージがあり、一定の財産があればそれを目指せると思っている甘い考えの人がいるわけです。そういう人がアパマン経営に手を出すことで不良債権が発生し、さらに事業に失敗したことを棚に上げて原本カットを主張されるのが増えたのでは、本来銀行が行うべき融資すら行われなくなります。
こうなれば、不動産業界自体が冷え込み、いずれは一般の人が住む住宅問題にまで関わってくるかもしれません。
あえてもう一度書きますが、不正は許されるものではありません。けれどもそれと同じく、甘い考えで事業に手を出すのも正しいことではありません。ましてや、そのつけを銀行に押し付けるのは間違っています。
皆さんはいかがお考えでしょうか?