【連載】事前準備でトラブル回避。繁忙期に満室にするための外国人入居対策

株式会社アートアベニューの伊藤と申します。弊社は首都圏の賃貸物件約6500戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」をおこなっている不動産管理会社(PM会社)です。

本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などを紹介します。




「外国人の入居について相談したい」
オーナーさまから、このようなお話をいただくことが増えてきました。

その背景としては、政府施策の「留学生30万人計画」や、2019年4月の「入管法の改正」による外国人の増加がありそうです。2020年に開催の東京オリンピックや、2025年に開催予定の大阪・関西万博も、オーナーさまが外国人の募集に興味を持つきっかけになっているのではないでしょうか。

事実、2019年6月末時点の在留外国人数は282万人(総務省発表)と、ここ10年で約70万人も増えていたことが分かります。今や、外国人は賃貸物件の一般オーナーにとっても接触が多く、無視できない存在となりつつあるということでしょう。

※総務省公表:在留外国人推移

一方で、賃貸不動産の従来の顧客である”新社会人”や”新入学生”は、出生率の低下による少子化の影響で、この先減っていくことが明白です。外国人の入居を検討し始めるオーナーさまが増えたことは、自然な流れなのかもしれません。

外国人の入居はアリ?オーナーの悩みと解決策

とはいえ、外国人の受け入れはハードルが高いと考える方がいらっしゃるのも事実です。

その主な理由として、

  1. 部屋をキレイにつかってもらえるか(退去後の原状回復の懸念)
  2. 居中にトラブルが起きないか(住環境の悪化)

の2点を心配される方が多いかと思います。

心配ごと1.部屋をキレイに使ってもらえるか(退去後の原状回復に対する懸念)

結論からいえば、外国人が入居していた部屋の原状回復工事は、修繕個所が多く、工事金額が高くなりやすい傾向にあります(全ての部屋がそうではありません)。

その原因は、主に文化・生活のルールに違いがあることと、その違いによる影響を彼らが理解していないことにあります。

例えば、彼らが当たり前に行う「室内に靴を履いたまま上がる」「室内でお香をたく、たばこを吸う」といった行為の結果、退去後に床や壁紙の張り替えが必要になることを彼らは認識していないのです。

対策としては、とにかく日本のルールを知ってもらうこと。これに尽きます。生活ルールの冊子を作成して渡したり、借り主の過失による修繕は借り主が金銭負担する必要があるとあらかじめ伝えておいたりするのです。

さらにリスクヘッジするなら、入居時に敷金を最低1ヶ月分は預かるようにしたり、入居者負担分の保証をしてくれる保証会社や管理会社を利用することが有効でしょう。退去後に入居者が帰国してしまって入居者負担分の請求ができなくなるケースもありますが、保証会社を利用していれば所有者の負担を軽減できます。

心配ごと2.入居中にトラブルが起きないか(住環境の悪化)

外国人の入居に関しては、マナーやルールに関する不安も耳にします。物件内に外国人が住むことで住み心地が変わり、他の入居者が退去してしまうのではないかと考えるオーナーさまも少なくありません。

確かに、外国人の受け入れによって

  • 騒音問題
  • ゴミの無分別によるゴミ置き場の環境悪化
  • 違法民泊によるセキュリティの悪化

といった問題は起こりがちですが、こちらも根本的な原因は文化・生活の違いと認識のズレです。1の心配ごとと同様、まずは入居前にルールを理解してもらうことに注力しましょう。

ちなみに弊社では、この認識のズレを正すべく、契約上のルールを含む生活上のルールを英語や中国語で記載してあるチェックリストを作成し、入居前にルールを理解してもらえるよう努めています。

ただ、ルールを伝えようにも、そもそも言葉が通じなければ伝えようがありませんよね。これについては、「外国人専門保証会社」を利用するという奥の手があります。

例えば、株式会社グローバルトラストネットワークスには多言語対応の入居者サポートがあり、貸し主に代わって入居者と話をしてくれるため当社でも利用しています。

外国人の受け入れを上手に判断し、繁忙期対策に

ひとつ注意したいのが、外国人の受け入れで全ての空室が埋まるわけではない点です。当たり前ですが、外国人の少ない地域では空室の対策効果も半減します。まずは自治体の公表している外国人人口割合を調べ、効果の大小を予測しましょう。外国人の流入が増えている地域であれば、有効な空室対策のひとつとして選択肢を広げられます。

春の引っ越しシーズンは学生や新社会人と同様、外国人の入居需要も高まります。受け入れを始めるだけで申し込みの獲得が格段に早くなることもありますので、興味のある方は一度、地域の需要を確認してみてはいかがでしょうか。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。http://www.artavenue.co.jp/

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