3つの事例で見る、オフィスを小さくする賃料負担軽減以外のメリット
コロナ騒動をきっかけにテレワークを導入する会社が増え、オフィスを小さくしようという話がちらほらと聞こえるようになりました。出勤者が減ると広いオフィスが不要になるという話ですが、会社によっては、「メリットが見えない」とか、「オフィスは広いに限る!」と言うところもあります。
と言うことで、テレワークが増えて事務所を小さくするメリットを見て行きたいと思います。
実際に聞いてきた話を紹介します!
実はここで書く話。
私が過去に別件の取材に行き、聞いてきた話です。日の目を見なかった内容なので、実名とあわせて紹介できればと思ったのですが、広告代理店案件でややこしくなりそうなので実名は出していません。写真も掲載できませんが、その分、普段には書けないようなぶっちゃけ話も書くことにしますね。
事例1 フリーアドレスのオフィスにしたら入社希望者が増えた
メリットの1つ目は誰でもわかる話。出勤者が少ないからデスクを用意しなくてよく、その分のオフィススペースは不要だと言う話です。これって当たり前のことだと感じる方が多いのですが、実はそうではないんです。とくに古い体質の会社。
たとえ出勤することが少ない人でも、デスクを用意するのは当然だ!と固定観念を持っているんです。
最も、私が過去に勤めていた会社もそのように考えていました。15年くらい前でしょうか?
中にはメインは地方周りで、月に1回か2回しか出勤しないという人の分までデスクが用意されていました。
でも、そこには理由があったんです。昔は紙の書類が多かったですよね。営業日報や訪店記録も手書きで(しかも複写式だったりして・笑)、引き継ぎのときには莫大なファイルを渡すのが定番でした。私が引き継ぎをした際には、手書きの書類がびっしりつまったキャビネットを2本渡され、それを読むのに一週間を要しました。電子データだと検索ができるのですが、紙だとそれができず、「まずは全部読む」という極めて非効率な方法が必要になるんですよね。
と、過去の愚痴は置いておき・・・。
そういう過去の事情もあり、古い体質が残っているところは、「書類を置いておくためのデスク」が必要だったわけです。
しかし、多くの書類は紙から電子データに変わり、今ではクラウド上にストックされていることも多く、デバイスさえ持っていればどこからでも引っ張り出せるようになりました。なので、出社回数が少ない人はデスクは不要! いっそのこと、内勤の人もフリーアドレスにして、自由度の高い職場にしてしまおう!となるのは当然の流れなわけですね。
ちなみに、フリーアドレス制とは、個々の固定の席を持たず働く席を毎日、自由に選択できるオフィススタイル。ノートパソコンと一緒に移動するケースもあれば、デスクトップが全デスクに設置されていて自分のIDでログインすれば設定がでてくるケースもあります。
私が取材に行ったした会社では、年間の最大出勤者数を出勤データから算出したところ、仕事始めの午前中をのぞき、出勤者数は最大でも全社員の半数でした。なかなか重い腰を上げなかった役員も、データで見せられると急に態度を変え、2/3ほどの広さの事務所に引っ越すことになったそうです。
この会社は経理と人事、情報システム部門をのぞく全社員がフリースペースで仕事をします。その一角にはスタンディングテーブルやソファー席などもありました。ソファーで仕事とか、夢のようですよね。デスクを固定しないことで人間関係のストレスがなくなり、無駄話もなくなり、全体の能率も上がったそうです。フリーアドレスの新しいオフィスと言うことで入社希望者が増えるといううれしい副作用にウハウハだそうです。
この会社ではオフィスの移転などにはもちろんお金がかかっていますが、毎月かかるランニングコストは約2/3程度に減り、立地条件もよくなったそうです。
事例2 自社ビルからオフィスビルへ移転したら、ムダな人件費が減った
次は、自社ビルを捨て、オフィスビルに移転し、思わぬ副産物があったと言う例です。
その会社は創業者が自社ビルにこだわり、社員が300人になったタイミングで自社ビルを建てていました。都内の中心地に地上6階地下2階のビルを建てたのですから凄いものですよね。その後、創業者がお亡くなりになり、次期社長についた人が徹底した経費削減に取り組み、自社ビルを売却してしまいます。決して創業者の意向を軽視したわけではなく、カリスマ亡き後に業績が傾くことを想定したという感じだったそうです。
そして、駅前にある超高層オフィスビルのワンフロアを借りきります。面積的にはかなり狭くなったそうですが、それは想定内のこと。会議室スペースが小さくなり、その分狭くても問題なかったそうです。打ち合わせはビル内のミーティングルームやカフェなどを利用し、セミナーもビルが管理するセミナールームへ。事前に管理会社に予約すればいつでも使うことができるため、そのスペースが不要になったというわけです。
さらに、これが「人」に関する変化も生み出します。それまでは社内で受付を配置し、美女たちが受付嬢をしていました。以前は受付嬢になることが名誉だった時代もあるそうです。彼女たちは単に来客対応をするだけでなく、会議室の管理も任されていました。時代は移り、あるとき女性社員(受付に関係のないおばさん社員)から、「女の子ばっかりお茶汲みをするのはどういうことか」と言う意見が出ます。時代なのか、やっかみなのか・・・。
それならばと、若くて愛想のよい男性社員も配属させたのですが、その若い社員はキレイなお姉さんたちと常に仕事をするわけで、今度は「あいつは仕事そっちのけで遊んでいる」と方々からクレームが届きます。面倒くさいですよね。結局、受付嬢は派遣さんに任せることになったそうですが、オフィスビルでは社外からの来客は、共有の受付嬢が対応してくれますので、こういった無用なストレスがなくなったのが最大のメリットだったかもと言っていました。
他にも、自社社屋では水漏れがするだの冷暖房の切り替えがうまくいかないだのと何かとトラブルが起こりがち。それを庶務課が担当していたそうですが、なんだかんだと社屋の維持のために専門で動く人が存在していたのだそうです。防災訓練とかの調整などもあり、かなりのストレスだったとか。これもオフィスビルになったことで管理会社に言えばよくなり、人の効率配置が可能になったそうです。
事例3 オフィスをなくし給料を上げたら業績が上がった
最後に、オフィスをなくしてしまった会社をご紹介します。
この会社、ある時まで社員の数に合わせてオフィスを広くするということに価値観を見出すベンチャー企業でした。ときには、わずか半年で次のオフィスに移ったこともあるそうで、それを武勇伝として話していました。
ところがあるとき、会社の成長率が鈍化します。右肩上がりだったのに、現状維持がやっとの状態に。そして金回りが悪くなったところで、「なぜ手元にお金がないのか?」と調べたところ、移転費用が莫大であることに気づきます(それまで気づいていなかったのが怖いですが)。そして、この削減を究極に考え、今度は「オフィスなんてなくてもいいんじゃない?」と極端な方向に意識が向いたそうです。極端すぎるのですが、これぞベンチャーという感じですよね。
当時の社員数は150名くらいだったと聞いています。社員は基本的にテレワーク。どうしてもテレワークで対応できない人用の作業スペースと本社住所が必要だと、小さな貸事務所を借ります。会議はすべて貸会議室。半年に一度、全スタッフがあつまるようにし、それはホテルの宴会場を借ります。なんだかメチャクチャな気もしますが、こうして余ったコストを社員に還元。全社員、数万円の給料アップがあったそうです。この会社は再び業績が上がっているそうで、写真のやる気につながったのは確実ですね。
まとめ
IT化と今回のコロナでテレワークがますます広がりそうです。オフィスの賃料という固定費をカットすることで難局を乗り越えたり、福利厚生を充実させたりできるかもしれません。
社内に帰るべき場所があるという感覚も大切かもしれませんが、そういった感覚にとらわれるのはおじさん、おばさんだけかも。新しい感覚で無駄を省き、コストを有意義に使っていくという意識が大切な時代なのかもしれません。