賃貸か売却、どっちがお得? 一軒家の場合の判断ポイントと注意点
会社の転勤命令によって一時的に家族で引っ越すなど、現在一軒家を手放す事情ができてしまったとき、マイホームをどうするかは悩ましい問題です。賃貸として人に貸し出し将来的にまた住めるようにするか、売却してしまうかの2択で悩む人も少なくありません。一軒家の場合、賃貸と売却はどちらがお得なのか、どちらを選ぶかの判断ポイントと、賃貸・売却を選んだ場合それぞれの注意点について解説します。
賃貸?売却? 一軒家をどうするかの判断ポイント
一軒家を賃貸として人に貸すか、それとも売却してしまうか迷っている方は、「賃貸にしておけば家賃収入で住宅ローンが補点できるから大丈夫」と思われているかもしれませんね。でも、売却なら賃貸物件を管理する手間が省け、確実にお金が入るというメリットがあります。賃貸にするか売却にするかの判断ポイントは以下の通りです。
- 一軒家の立地や築年数など借り手に魅力のある物件か
- 競合物件の家賃が住宅ローンや固定資産税などを補てんできる額か
- 将来的に戻ってくる時期が明確か
- 一定期間借りたいという知り合いや親せきがいるか
それぞれの判断ポイントについて詳しく解説します。
一軒家の立地や築年数など借り手に魅力のある物件か
現在は、全国的に空き家が増加しており、一軒家を他人に貸し出すにはなかなか厳しい状況が続いています。それでも一軒家を賃貸にしたい場合は、まず借り手がすぐに見つかるような立地かどうかを確認してください。主要な電車駅の徒歩圏内なら、借り手はそれなりに多いはずです。しかし、徒歩圏内では難しい場合、バスを乗り継ぐ場所だと、借り手はなかなか見つかりにくいかもしれません。
マイホームのあるエリアがどの程度人気があるかについては、周辺の不動産物件が他のエリアと比べてどれぐらい高いか安いかを確認するといいでしょう。家賃相場を比較できるサイトなどもありますので、周辺の家賃相場を調べてみることから始めてみることをおすすめします。
また、立地と同じぐらい重要なポイントは、一軒家の築年数と設備の状態など、建物そのものの魅力です。こだわって建てた注文住宅なら、借りる側から見ても造りもしっかりしていて設備も魅力的な物件に見えます。少々駅から離れていても敷地内に駐車場があれば、車の利用が多い世帯にアピールできます。
借り手が順調に見つかるような条件がそろっている物件なら、家賃が高めでも借り手が見つかり、安定した家賃収入が得られるでしょう。
競合物件の家賃が住宅ローンや固定資産税などを補てんできる額か
家賃相場比較サイトを使うと、自分の一軒家と同じような条件の競合物件の家賃がいくらぐらいかが確認できます。その家賃の金額で、住宅ローンや固定資産税、貸家のメンテナンス費用などが賄えるかどうかも検討しましょう。一軒家を賃貸物件として他人に貸し出す際に、必要になる費用は以下の通りです。
- 住宅ローン(ボーナス払いを併用している場合は毎月の金額+ボーナス払い分)
- 固定資産税と都市計画税
- 物件のメンテナンス費用
- 物件の管理を不動産管理会社に委託する場合はその費用
つい見落としがちな費用は、ボーナス払いにしている分の住宅ローンと物件のメンテナンス費用です。エアコンが壊れたり、トイレの調子が悪くなったりすることは十分考えられます。これらの費用をすべて足して12で割った金額に家賃をプラスしてみて、その金額が、最初に調査した家賃とどれぐらい乖離があるか確認してください。
一軒家を賃貸にすると生活が苦しくなった、などということがないよう、この辺りは慎重に考え、それでも賃貸にするかどうか判断してください。
もう一度暮らす予定があり、将来的に戻ってくる時期が明確か
ここまで述べた2つの条件をクリアしていれば、賃貸として貸し出すのも悪くない選択です。しかし、その前に最後の確認として、もう一度その一軒家に戻ってくるかどうかをよく考えてみてください。必ずこの家に戻ってきて住むことがあるのか、そして将来的にいつ戻ってくるかが明確か?
戸建ての場合、賃借人が長く住む可能性も高いので、自身が戻ってくる時期が明確なのであれば、賃貸として貸し出すときに期限付きにすると安心です。
一定期間借りたいという知り合いや親せきがいるか
借り手にとって魅力のある物件ではない場合でも、知り合いや親せきで「一定期間借りたい」という人がいて条件が合致するなら、賃貸として貸し出すのもいいでしょう。空き家になるリスクが減るため、入居者を探す手間が不要になります。家は誰も住まいないまま何年も放置すると劣化が激しくなってしまいます。それを考えれば、例え安い賃借料となっても、知人や親せきに貸した方がいいかもしれません。ただし、期限についての取り決めはきちんとしておかないと後からトラブルの元になるので注意は必要です。
ここまで紹介した4つの判断ポイントによって賃貸としても問題なさそうな場合は、一軒家を賃貸として貸し出す方向で考えてみていいでしょう。
一軒家を賃貸に出す場合の注意点
一軒家を賃貸として貸し出す場合に注意したいポイントは以下の通りです。
- 知人に貸す場合でも必ず契約書を作る
- 定期借家契約を締結する方向で動く
- 賃貸物件の管理業務ができるかどうか検討
これらの注意点を確認して、マイホームを賃貸に出す準備を進めましょう。
知人に貸す場合でも必ず契約書を作る
のちのちトラブルを発生させないためにも、一軒家の賃貸契約書は必ず作っておきましょう。特に知人や親せきに貸す場合は、なし崩し的に契約書を作らないまま貸してしまうリスクがあります。賃貸として貸し出すということは、必ずいつかはこの家に戻ってくる、というつもりのはず。だからこそ、きちんと期限を定めた賃貸契約書を作っておかなければなりません。
賃貸契約書で主に記載する内容は以下の通りです。
【期限についての規定】
- 契約期間(定期借家契約なら1年未満の契約期間も有効)
【家賃についての規定】
- 金額
- 納付方法
- 納付期限
【家賃以外のお金についての規定】
- 敷金および礼金があるかどうか、ある場合はその金額
- ・共益費・敷金が必要かどうか、必要場合はその金額
【家の使い方に関する規定】
- 禁止事項、貸主の承諾なくに行ってはいけないこと
- 模様替えや改築など建物を改修する行為
- また貸しや商売に使うなど居住以外の使い方など
- 模様替え、改築、又貸しを行うなど
【契約解除に関する規定】
- 契約解除の要件
- 家賃の滞納
- 目的外の使用
- その他禁止事項に触れること
【退去と原状回復に関する規定】
- 借りている人が退去する際どこまで原状回復してもらうか
【連帯保証人に関する規定】
- 連帯保証人が必要かどうか
最初から賃貸契約書を作成するのも大変ですので、国土交通省が公開している「賃貸住宅標準契約書」を参考にして作成するといいでしょう。
定期借家契約を締結する方向で動く
いずれは一軒家に戻ってくることを考えると、基本的に契約の更新がない定期借家契約を検討しましょう。期限が決められている物件は借り手が見つかりにくいというデメリットがありますが、いざ戻ってきたいというときに住んでいる人に出て行ってもらえなければかなり困った事態になります。定期借家契約の特徴は以下の通りです。
【契約期間】
契約の更新がない契約、契約期間は自由に定めることが可能
【契約の締結方法】
公正証書等の書面による契約と貸主側が借主に契約期間について明確に説明することの両方が必要
【中途解約】
中途解約は床面積が200㎡未満の住宅に居住している借り主に限り、やむを得ない事情が発生すれば認められる
【契約終了時】
契約期間が1年以上の場合、貸主は期間満了の1年~6ヶ月前までの間に、借主に対して契約終了の通知が必要
【契約終了時】
貸主と借主双方の合意があれば可能
定期借家契約として成立させるためにはいろいろな条件が付いています。これらの条件を満たすようにして、定期借家契約を結ぶようにしましょう。
賃貸物件の管理業務ができるかどうか検討
最後に、賃貸物件の管理業務を自分で行えるかどうか検討しましょう。仕事をしていて忙しい場合は配偶者や近くに住む親せきにお願いする方法もあります。資金的に余裕があるなら、管理業務を専門業者に頼むかも検討してみてください。
一軒家を売却する場合の注意点
一軒家を売却する場合は、いくつかの注意点を押さえて少しでも高く売れるように準備を整えましょう。
【周辺地域の競合物件を確認】
賃貸にする場合でも同じでしたが、同じような一軒家の競合物件を調べて、どの程度の相場で売れるのかについて確認しておきましょう。
【我が家のアピールポイントを検討】
周辺の競合物件は、どのような部分をアピールしているでしょうか。一軒家特有のアピールポイントがありますので参考にして、我が家ならどこがアピールポイントなのかを検討します。
【劣化や悪化している部分がないか調査】
売却物件絵に、売主が把握していない欠陥があると、修繕費用を負担しなければいけなくなる可能性があります。売り物件に問題がないかどうか、専門家に相談してチェックしておくと安心です。
【土地の権利と境界線を確認】
売却する一軒家の土地について、権利や隣との境界線がはっきりしていないとトラブルの元です。境界線があいまいな場合は、隣の土地所有者と相談して、境界線が分かる書類を作成しておく必要があります。
一軒家を手放すなら売却が楽!賃貸にする場合は準備や調査を怠らずに
賃貸にするか売却にするかが悩ましい、一軒家を手放す場合の判断ポイントと、賃貸・売却それぞれを選んだ場合の注意点についてまとめました。
基本的に、いつまた戻れるか分からないという状態であれば、売却する方がのちのちの手間も不要でおすすめです。マイホームに愛着があり、どうしても戻ってきたいという気持ちが強い場合のみ、賃貸を検討することをおすすめします。賃貸にする場合は、戻ってくることを前提に定期借家契約を締結するようにしましょう。賃貸か売却か、どちらを選ぶかの判断材料としてお役に立てれば幸いです。