住宅ローンで銀行から融資を受けるときに飛び出すキーワード、団信(団体信用生命保険度)。
団信とはどんなもので、本当に必要なのか?
ふと頭に浮かぶそんな疑問に、団信加入のメリット・デメリットを含めてお答えします。
団体信用生命保険度とは?
団信(だんしん)という言葉を聞いた事がある方も多いのではないでしょうか。団信は「団体信用生命保険」の略語で、金融機関から住宅ローンを借り入れる際に契約する生命保険です。団信に加入していると、契約者が「死亡」、もしくは「高度障害状態」となった場合に、住宅ローンの残債が支払われ、完済状態となります。つまり、それ以上支払う必要がなくなり、そのまま所有を続けられるということです。
団信の適用条件には、8つの区分がある
団信の適用条件はおおまかに分けると以下の2つの条件のいずれかに該当する場合です。また、高度障害は8つに区分され、いずれの場合も回復の見込みがない場合をいいます。
- 契約者が死亡する。
- 契約者が高度障害になる。
高度障害の条件
多少の条件の差がありますが、団信弁済パンフレットを例にしてみます。
- 両眼の視力を全く永久に失ったもの。
- 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの。
- 中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの。
- 胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの。
- 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの。
- 両下肢とも、両関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの。
- 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの。
- 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの。
※参照:団信弁済パンフレット 平成29年11月版より
団信加入は必須条件ではないが、加入するのが一般的
民間銀行から融資を受ける場合は、厳密に言うと団信加入が必須ではありません。しかしながら、銀行が私たちに融資を行う際のリスクを回避するため、ほとんどの銀行が融資契約を結ぶ条項に団信の加入を加えています。一般的に、銀行から住宅ローン融資を受ける際は、団信に加入すると考えて、問題ありません。
住宅金融支援機構が提供している「フラット35」では、団信の加入は任意となっています。ただし、平成29年10月1日以降では、「団信付きフラット35」が登場し、スタンダードとなりました。それまで以前は生命保険と団信どちらを選ぶか選択の自由度は大きく、生命保険を選ぶ方もいましたが、今では団信付きフラット35がメイン。それでもフラット35を契約する段階で、健康上の理由やその他の理由で団信に加入せずに契約することは可能ですので、フラット35に関して言うと団信加入は文字通り任意加入です。
団信のメリット・デメリット
団信に加入するうえでのメリット・デメリットは何か、1つずつ見てみましょう。
メリット 団信特約料が無料
団信に加入すると、その特約料は基本、無料であることが多いです。ただし、特約料は銀行が負担して支払ってるものの、その分は実のところ金利に上乗せされています。一見して無料のように見え、そううたわれていますが、実際は自分たちが払っているのとなんら変わりません。それでも、最初に提示された金利にすでに上乗せされた形で提示されるので、特約料は無料であると考えればメリットともとれます。
メリット 充実した保障から選べる
団信の中には、様々な保障を充実させている銀行独自の団信もあります。通常の団信に加えて、任意で加入することが出来ます。保険料は住宅ローン金利に数%上乗せされる形で、別途年次で支払う形式ではありません。
団信(通常)
保障内容が死亡・高度障害のみ
ワイド団信
保障内容は通常と同じだが、審査の間口が広く、軽度の疾患があっても契約可能
3大疾病保障付団信
保障内容が、死亡・高度障害に加えて、3大疾病「がん」、「脳卒中」、「急性心筋梗塞」が対象となる団信。
8大疾病保障付団信
通常の保障に加え、8大疾病「がん」、「脳卒中」、「急性心筋梗塞」、「糖尿病」、「まんせい腎不全」、「肝硬変」、「慢性膵炎」が対象となる団信。
全疾病保障付団信
通常の保障に加え、あらゆる病気や怪我が対象となる保険。
デメリット 貯蓄性がない
団信は一般的な生命保険にあるような、一時金の返還や満期で返ってくる保険金ではありません。掛け捨てです。掛け捨ての保険が好きではない人にしてみると団信は貯蓄性に乏しいので、受け入れ難い人もいるかも知れません。
デメリット 住宅ローンを補てんする保険であること
たとえば35年ローンで3,500万円の融資を受けたとします。住宅ローンが残り3,000万円残っている段階で団信が下りて完済した場合、変な話ではありますが、3,000万円がチャラになるのでお得感があります。しかし、30年間ローンを支払ったあと、残り500万円の残債がある状態で団信が下りた場合、当然ですが500万円分のローンだけがチャラになり完済となります。また、500万円は銀行へ直接保険が振り込まれる形。私たちを経由して支払う形でしたら一部だけ住宅ローンに充てて・・・、などといった考えも浮かびますが、あくまでも団信は住宅ローンの残債に充てられます。ここにデメリットを感じる方ももしれません。
これが団信ではなく、一般的な生命保険であった場合はどうでしょう。
死亡保険で3,000万円下りる保険に加入したとします。住宅ローンが残り3,000万円の段階で死亡し、保険が下りた場合は、残債分が差引ゼロになります。では、さきほどと同様に30年間保険を支払ったあと、残り500万円の残債時に死亡した場合、生命保険は3,000万円下りるので、2,500万円が手元に残ることになります。
こうして考えた場合、団信はデメリットが大きく見えますが、そうとも言えません。団信は実質支払う保険料が金利に上乗せされているので、住宅ローンの支払いを続ける月日が長いほど、支払う額は安くなります。一方、一般的な生命保険、死亡定期保険は定期まで定額で支払い続ける形です。こう考えると、必ずしもデメリットとはいえないのかもしれません。
団信とフラット35
平成29年10月1日に団信が新機構団信として、「団信付きフラット35」に変わりました。これはとても大きな変化です。それまでフラット35で契約する場合、保険料の支払いは年次の支払いで月々の住宅ローンとは別途、負担がありました。それが、民間の銀行同様、保険料は金利に上乗せされる形になりました。
- 新機構団信付きフラット35の最多金利:年1.270%(2019年4月)
- 旧機構団信(団信は別途支払い) :年1.07%(2019年4月)
2019年4月の最多金利をベースにして、35年ローンで3,000万円、元利均等返済、ボーナス払いなしでシミュレーションしました。
団信加入と未加入の利率差は0.2%で、結果、団信未加入の方が119万円お得になります。
団信の加入、未加入の月々の差額が3,000円ですので、それ以上に支払いが生じる場合は新機構団信にそのまま加入した方が賢明。例えば、某有名保険会社の死亡保険でシミュレーションすると、25歳、健康体で60歳まで35年間の払い込みで3,000万円の保険に加入する際、月々の保険料は4,470円。ですからこの場合は、新機構団信に加入する方がお得になります。また、月日の経過と共に団信の支払い額は更に少なくなるので、なおのこと、新機構団信の方がお得になる計算です。
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新機構団信 |
団信未加入 |
金利 | 1.27% | 1.07% |
毎月の返済額 | 89,000円 | 86,000円 |
返済総額 | 3,718万円 | 3,599万円 |
差額 | 119万円お得 |
まとめ
団信加入は必要か?と問われたら、フラット35に関して言えば答えは人それぞれです。ですが、2019年4月現在では、民間の生命保険と比較した場合、団信付きフラット35に加入することで損をすることはほぼないので、団信は必要と応えるのが賢明です。長期的な目で見て、どの団信が自分たち家族に、また自分自身に適しているのか難しい判断に迫られますが、より幸せな生活を築くために、家族とよく話し合って、安心できる道を模索しましょう。