【連載】相続対策として気軽に海外投資し、痛い目にあう人が増えている!
- 2019/2/27
- 海外
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みなさん、こんにちは。行政書士グリンエア法務事務所 所長の吉田幸弘です。
「日本の市場は、将来の成長見通しがとても暗いし、オリンピックでは一時的には良くなるかもしれないが、その後は手持ちの物件が重荷になる」ということが言われています。
それではどうしたらいいのか、というと、海外に目を向けたらいいと、アジアやハワイなどにツアーを組んで物件の視察が企画されていました。こでは最近ではタイがメッカになっています。そしてタイでは日本ブランドが憧れの的になっています。
中でも日本料理店が高い利回りを得られるということで、日本人経営でサービスの行き届いた高級日本料理店が羨望の的のようです。ポイントは、日本人が経営しているということです。日本料理はたいへん人気なので、現地の人が日本まがいの日本料理のお店を多数出しています。しかし、日本人のようなきめ細かいサービスは出来ませんし、なんといっても、本物の日本料理を食べたいという人を満足させることは出来ません。
そこで、日本人経営の日本料理店への投資がお勧め、だと言われるのです。
一時期、中国の低コストがもてはやされました。同様に今、タイでは人件費や家賃などが日本の相場の約3分の1のコストだそうです。それなのに、値段を高くすればするほど、飛ぶように売れるということで、客単価が非常に高いのだそうです。ですから、「こんなに儲かる」とツアーの主催者側は説明します。
投資は約1年で回収、2年目には利益の100%が懐に入るということらしいです。
このような事前の説明を受けて、ツアーに参加するのです。現地の実際のお店に案内されると、店の駐車場には高級車が並び、店員たちもよく教育されているようです。出された料理は都心の中級以上のお店と比べても遜色ないくらいの味や盛り付けで、ツアー参加者も感心したとのこと。周りのテーブルでは非常に値段の高い料理が次々と運ばれて来ます。
視察を終えると、型通りに、「さきほど実際に見てもらったようなお店を新しく出店できることになったので、投資しませんか?」と切り出されるのです。海外での事業ですから、お店の内装、仕入れ、会計、法務に関して、低コストで全て主催者側でやるとのこと。投資した方はたまに旅行がてら来るだけでよいと言い、店の看板には日本国内の有名チェーン店の名前を書き加えるという話だったようです。
さて、このような経緯で投資した結果、どうなったのでしょうか。
実際に出来上がった店舗を見に行くと、多くの費用をかけたはずの内装が驚くほど安っぽく、出された料理もひどいもので、その割に値段が高額だったそうです。お店の場所も日本人街という話だったのが、日本人が来るとされるエリアからはかなり遠い場所で、駐車場すらなかったということでした。しかも、内装費や家賃、仕入れや会計、法務の金額が地元の相場の約5~6倍。更には不透明な顧問料まで請求されたそうです。こうなると、収益どころか、元金も返って来ません。その上、毎月の赤字を補てんするために、更に多額の支払を求められるようになったそうです。
悪いことは更に続きます。大手チェーン店での利用権を有するアメリカの会社から、名前を勝手に使っているという通知が届くはめになり、有名ブランド店名を使えるという話が嘘だったのです。また、タイでの労働許可の無い外国人が不法就労をしているとタイのイミグレーション関係者がお店にやって来たそうです。従業員に関しては労働許可を現地で得るという話をされていたようですが、これも嘘だったのです。そして丸く治める為に賄賂を要求されたそうです。海外投資の話は現地の事情がわからないことから、全権委任に陥ることもしばしばあります。事前の調査や確認は勿論ですし、日本人会に相談することも有効だと思います。
行政書士グリンエア法務事務所 所長 吉田幸弘
NPO法人市民生活支援センター 前理事長
5年度に渡って、相続税、贈与税、所得税、(法人、個人)住民税の申告相談受付。著書では「大家さんが是非知っておきたい法律の話」を面白く、わかりやすく解説している。昨今の安易な「墓じまい」を危険視し、安全な墓じまいの為の「傳の会」を発足、作家の顔も持ち、amazonで発刊されている「影山一族」は三春町、田村市、須賀川市、フランス・リヨン日本人会の寄贈図書になっている。
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