電気代の高騰はなぜ起こったか?これからの電力会社は何を基準に選べばよいか

昨年から何度も目にした「逼迫」という文字。一時は「ひっぱく」とルビがふられていましたが、最近はそのまま使われるようになりました(ルビがつくのは、表外字=常用漢字表に入っていない漢字だから)。

そんなどうでもいい気持ちでWEBニュースを見ていると「電力逼迫」という文字が。しかも、逼迫したことで電気代が大幅にアップし、平常時の8倍とか10倍とか?

そんなのあり得るの?
これからは電気も使えないってこと?
今後はどうすれば?

ということで、調べてみました。

これからの電力会社の選択の参考にしていただければと思います。

知らない間に電気代が爆上がり

まずは、令和3年3月、Twitterに書き込まれた悲劇を紹介しましょう。

 

これは悲劇です。
他にも、早々に電力会社から通達が来た人や、お知らせが来て何かのマシンがバグったと思った人、「暖房使いすぎた」と悔やんでいる人など、1月中旬から現在まで、さまざまな悲痛な声があがっています。

電力の卸価格25倍の驚き!!

今回の事件の舞台となったのは「新電力会社」。これは、に「電力小売全面自由化」によってできた会社を指します。新電力は約700社とも言われていて、短期間に裾野が広がったビジネスだったんですね。もちろん、これらの会社と契約している人すべてが悲劇に見舞われたわけではありません。

その一方、1月26日、販売電力量による新電力ランキングの家庭向けでTOP10に入る楽天モバイルは、電力・ガス小売りサービスの「楽天でんき」と「楽天ガス」「楽天でんき Business」の新規契約を当面停止するなど、大きな問題にも発展しています(3月1日募集再開)。

新電力会社とは?

以前は、電力の製造と販売は大手電力会社10社に独占されていました。これが2016年4月に行われた規制緩和により、電力販売を切り離すことになりました。これにより、新たに参入した電気を販売する企業は大手電力より割安に電力を販売するうえ、太陽光発電や風力発電により作られたエネルギーを積極的に活用したことで、環境に配慮した再生可能エネルギーを積極的に調達する会社だと評価され、多くの利用者を集めることになりました。

これらの新電力企業は幅広く電力を購入する一方、自前の電源を持たないのが一般的。日本卸電力取引所が運営する市場などから電気を調達しています。

これらの市場では、販売分の電気の価格が市場の需給バランスで決まる仕組み。通常は1キロワット時当たり10円程度で取引されていましたが、昨年末からまざまな要因により上がり始め、今年の1月は高騰。1月15日には過去最高の251円に達しました。10円が250円オーバーですから25倍!

2019年度の取引平均価格の約30倍だそうで、新電力会社も存続が危ぶまれるピンチだったに違いありません。

こうなると、世間で言われている電気代10倍は、まだましだったということなのか?と思うほど。

ちなみにその後、市場価格は落ち着き、さらにいくつかの救済策(と言っても十分とは言えませんが)が発表されたことで、月間で10倍にはなった方はごく一部のはずです。

複数の要因が重なって起きた「需要の急増」と「供給の逼迫」

では、なぜこんなことになったのでしょうか?

主な理由は、「需要の急増」と「供給の逼迫」の2つが同時に起こったからだと言われています。少しややこしい話しですが、ようは電力が必要な時に、電力を作ることができなくなり、価格が高騰したということです。

もう少し詳しく見ていきましょう。

電力需要の急増の要因

①寒波の影響
1月中旬には日本列島が寒波におそわれ、暖房設備などの利用が増加しました。

②コロナの影響で日中電力を使う量が増えた
コロナ前は、多くの人が日中は職場にいましたが、在宅ワークをする人が増え、外出する人せずに自宅で過ごす人が増えました。職場も一応空いていているので暖房は稼働しています。これにより、職場も自宅も電気を使う状況になり、電気の使用総量が増加しました。

電力供給の逼迫の要因

日本の電力発電は8割が火力発電です。火力発電には燃料が必要であり、これには「LNG(液化天然ガス)」が利用されます。

このLNGは長期間のストックができません。なぜなら、超低温(-162度)で冷却しなければならず、ストック可能な量は概ね2~3週間分だと言われています。すぐに不足するので輸入を断続的に継続するわけですが、この仕入れには輸入元の事情が関わってきます。

日本で使用するLNGの主な輸入元はアメリカ。アメリカは世界一のコロナ感染者をだしたことで、さまざまな場所でコロナ対策が強化されました。そのひとつが航路のパナマ運河であり、これにより航路をスムーズに通過することができなくなり、大幅に遅延することになりました。

同時期、世界最大のLNG供給国のカタールはプラントがトラブルを起こし、輸出量が減少します。また、他国でもガスラインが爆破やストライキもあり、世界的にLNGが不足。韓国や中国でもLNG争奪戦となり、取引価格が上昇することになったわけです。

これから電力会社を選ぶとき、どうすればよいか?

事情を見れば不運としか言えなかった今回の電気代高騰。過ぎてしまったことはしょうがないにしても、これからどうすればよいのでしょうか。

まず、今回の電力市場の価格高騰を受け河野太郎規制改革担当相が、経済産業省に市場の抜本的な再設計を求めました。これにより、今回ほどの瞬間に爆上がりはなくなるのかもしれません(あくまでも可能性の話ですが)。

また、新電力会社がすべてぜい弱だと言うわけではありません。自然エネルギーを中心にした企業もあり、ユーザーと考え方の部分で一致しているということもあるでしょう。

ということで、価格優先で考えるならば今後の施策を見てからの方がよいかもしれませんが、トータルで考えるなら、ポリシーが近い新電力会社を選択するのも間違いではありません。

同じようなトラブルは世界でも

今回日本で起こったトラブルを、「だから日本はダメなんだ」とは言い切れません。原発を持たない国として知られるドイツは、もともと電気代は高く、日本の3倍ほどだと言われています。ここに至るまで、ドイツの電気代は増加の一途をたどっていて、18年間で34倍になっています。また、電力市場が日本以上に自由化されているテキサス州では、電力卸価格に連動した電気料金を選択していた人は、1週間の電気料金が100万円になることもあるという報道がでていました。

 

アメリカ、スケールでか過ぎ…

原田園子

原田園子ディレクター

投稿者プロフィール

「不動産の学校」のディレクター兼ライター。
住宅メーカーや不動産業者をクライアントに持っています。
不動産関連の取材実績も多数あり。
不動産投資から日々の暮らし記事まで、幅広く担当します。

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