家賃保証でトラブルにあってしまったケースのアドバイス編です。未読の方は先にお読みいただくとスムーズです。「家賃保証契約をしたはずなのに、実際には3ヶ月のみ。それを過ぎたら無保証状態!」
では、これは日常的なことなのか? それを避ける方法はあるのか?
ここでは、元不動産会社勤務で、現在は簡易宿泊所投資をしている三浦剛士さんにお話を伺いました。
プロフィール:三浦剛士さん
マイホーム向けの売買仲介会社、賃貸専門客付仲介会社、不動産投資コンサルを経て、現在は簡易宿所投資を推進中! URL:http://iroha-house.com/
保証会社といっても内情はさまざま。オーナーから申し込むことが可能なところも
――三浦さんは元客付賃貸会社の営業マンをされていたそうですが、このようなケースに出会ったことはありますか?
ありえないケースです。普通、賃貸仲介会社や管理会社のいう「保証会社つけますよ」というのは、賃貸借契約とは別の契約で家賃保証会社との契約を指します。しかし、最近、大手では自社で保証会社(例:エイブル。エイブル保証という保証会社があります)を持つところもありますから、一概には「絶対ない」とはいえなくなっていますが……。それでも一般的には別の会社との契約が多いと思います。
――契約するのは、保証会社と入居者という認識であっていますか?
保証会社の契約には貸主、借主保証会社、入居者の名前があります。貸主として大家さんの名前がはいっていても、不動産業者が記入していることがほとんどです。そもそも家賃保証会社には様々な会社があり、審査が厳しいところもあれば、どんなお客さんでも通せる緩い保証会社があります。また、保証会社と管理会社はその都度その都度契約する関係です。だから管理会社、賃貸仲介会社では、複数の保証会社を使っていることが多いです。また、保証会社によって、審査が厳しい会社、審査が緩い会社、そのほか外国人向けの会社といったような特徴があります。つまり、1社との契約をしないで、その都度自分で契約を結ぶこともできます。管理会社があれば、そこに任せるのでしょうが、自主管理でも客付会社の申込書を保証会社へ送ることで、オーナーから保証会社へ申込みすることもできます。
――オーナーから保証会社に申し込むことができるのですか?
それができる家賃保証会社もあります。自主管理の大家さんであれば、そのようにすることで、「どこの保証会社を使っているかわからない」また「ちゃんと保証会社と契約されているかわからない」というようなことはなくなります。
保証会社によっては退去後にしか家賃保証が支払われないところも
――保証会社との契約で気を付けることはありますか?
一般的に気を付けることでいえば、オーナー側に立っていない保証会社もあるということです。今回のMサポートシステムについては、ちょっと特殊なケースだと思いますが、それでもやはりオーナー側に立っていないですよね。たとえば、かなりメジャーな某家賃保証会社では、その入居者の家賃の未払いが完全に終わって、退去した後に代理弁済がはじまります。
――それはいつのことを指すのでしょうか? 家賃が払えなくなって退去した後ですか?
それが不明瞭ですから、親切でない契約だと思います。あくまで退去後にはじめるということですから、なかなか滞納家賃が保証されません。これはオーナーにとって不利な契約内容といえます。他にも2カ月以上連続して滞納した実績がないと督促に動かない保証会社もあります。1 ヶ月の滞納では動いてくれないということです。これは大家さんにとっては致命的だと思います。
――なにか家賃会社ごとの特徴みたいなものはないのでしょうか。
それが家賃保証会社は数が多く、契約内容もばらばらです。しいていえば、審査を通しやすいところ、審査が緩いといわれる家賃保証会社は取り立てが厳しいと聞きます。それはオーナーさんにとっては悪くないことです。
積極的な客付けが、トラブルを起こす入居者を呼び込むケースも
――それは意外です。支払いがよい会社というのはありますか?
これもバラバラでなんともいえませんが、私が今でも利用している保証会社は、滞納が発覚した月の賃料から代位弁済をしてくれます。ローンを抱えているオーナーさんにとっては安心できる内容です。期間も24 カ月です。このやり方も保証会社にみとめられているのですが、家賃支払い日を1 日でも過ぎたら、すぐに事故報告として滞納を伝えます。
1 日くらいでは、たまたま忘れただけじゃないかと思われるかもしれませんが、しかしそれに甘えていると報告期日を過ぎてしまい、全額保証してもらえないということが起こってしまいます。そのため、約定日から1 日でも過ぎたらすぐに事故報告して保証会社に対応を任せるべきだと思います。
またある程度、戸数を所有して専業でしているオーナーさんであれば、先述した通り、家賃保証会社は自ら選んで使うのがいいと思います。すべての会社とはいえませんが、可能な会社もあります。管理会社も賃貸仲介の会社もどうしても「入居させること」に注視します。それは、オーナーにとっては良いことではありますが、「客をしっかり審査せずに、保証会社の入居審査に通せばいい」と思ってしまいがちです。保証会社のなかには、どんな人でも通すような会社も存在します。それが一概に悪いとはいえませんが、健在な賃貸経営において、入居者をしっかり選ぶことは大切です。積極的な客付は、空室を早く埋めたいオーナーにとって嬉しい反面、トラブルを起こすような入居者を入れてしまうようなリスクもあるのです。
――なるほど、オーナーがしっかり入居者を選ぶことも大切なのですね。
その通りです。とはいえ難しいことはありませんよ。入居申込み書をしっかりチェックするだけで充分です。そのうえで家賃保証会社にまかせることで、二重のチェックをしていることになりますから。
契約書はしっかりチェック! 小さなことも無視しないことが重要
――最後に読者にアドバイスをお願いします。
とにかく契約書はしっかりチェックすることです。とくに自主管理の方は大変かもしれませんが、その都度その都度確認して、不明な点があれば、賃貸仲介会社に問い合わせましょう。また、著しく字が汚いといった気になる点があれば、それは無視してはいけません。最近増えている高齢者の入居についても、高齢者自身でなくその娘さんや息子さんと契約を行うなど、様々なやり方がありますし、どのような契約形態が良いかということも保証会社から言ってくれます。
アパートを購入するときや、購入してすぐのタイミングは、誰しもこういったことを丁寧に行いますが、経営をはじめて数年経つとどうしても気が緩んでくるところもあります。そこは気を引き締めて、常に細かく見るようにしてください。
※本コラムは、2017年5月15日に配信された「満室経営新聞」を抜粋・加筆・修正したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。