不動産投資でよく聞く利回りって何? 「表面利回り」と「実質利回り」の違いを知るのが不動産投資の最初の一歩

  • 2020/8/20
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先日、自宅に営業電話がかかってきました。
「新宿区の落合の駅近に、投資用の物件がでたんです!」

営業トークが軽快な方でおもしろいので「ふんふん」と聞いていると、「これ以上の物件は出てきません!毎月利益を得られます!」と言われました。

毎月というところに引っかかった私は、「利回りはどれくらいですか?」と聞くと、「3%です」と。「それって、表面利回りですよね?ローン借りて税金とか払うと利益は出ませんよね?」と言うと、「でも、落合のマンションオーナーになれますよ!」と訳の分からない方向に話を持って行かれました。

しかし、これにコロッと欺されてしまう人がいるということかもしれません。

そこで、不動産投資の利回りには2種類あることと、その違いをお伝えしたいと思います。これってとっても重要です。

不動産投資の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」がある

まず、利回りとは、投資額に対する年間収益の割合のこと。投資額に対して「リターン=収益」がどの程度あるのかを表す指標です。

そして、不動産投資の利回りには、「表面利回り」「実質利回り」というものがあります。

表面利回りと実質利回りの違い

表面利回りとは、家賃収入の金額を物件価格で割った数字です。グロスと言われることもあります。これは、年間の家賃収入の総額を物件価格で割った数字となります。

計算式は以下です。

表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100

この計算では、年間にかかる諸費用や、物件購入時にかかる仲介手数料、登記費用、固定資産などは含まれていません。しかも、常に空室がない想定です。

つまり、不動産を購入すると必要になる登録免許税や不動産取得税などの税金はおろか、リフォーム代(都内は入れ替わりが特に早いので、その都度リフォームが必要な部分もある)などもここには入ってきません。また、借主が変わる度に必要になるハウスクリーニング代や、定期的に掃除をしてもらったり、メンテナンス費用、借主を探すときの広告費なども含まれないというのがポイントです。

一方、実質利回りは、家賃収入から年間にかかる諸経費を引いた後に物件価格で割った数字のことです。ネットと呼ばれます。

計算式は以下。

実質利回り(%)=(年間家賃収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

年間の諸経費は、固定資産税などの税金や、マンションの場合なら管理費と修繕積立金など。さらに物件価格も、購入費用にプラスして、借主を探す広告費や登記費用、一括で払う火災保険料、仲介手数料なども含めて実際に購入にかかった費用すべてを含めて計算します。

つまり、不動産投資をする場合、肝心なのは「実質利回り」ということ。こちらの方が、より実態に近い利回りであり、年間あたりの収入をはっきり計算できます。

一般社団法人 日本不動産研究所が発表した「第39回不動産投資家調査(2018年10月現在)」によると、賃貸住宅一棟(ワンルームタイプ)における不動産投資の期待利回りは、東京都城南地区の場合4.4%、城東地区の場合4.5%でした。東京都の場合は、この利回りを実質利回りの標準として頭に入れておくといいでしょう。

表面利回りは何のためにあるのか?

ではなぜ「表面利回り」が存在するのかと言えば、物件を売るときの指標を示すものだからです。

実質利回りは、実際にやってみないと分からない部分もあるため、売る時点であれこれいえるものではありません。言えば、「話が違う!」となる可能性も出てきます。

それでも何かの指標は必要、、、ということで、使われます。

とは言え、わざとちゃんと説明しないところもあり、いいように使われている気がしますが、、、

表面利回りの計算方法とシミュレーション

表面利回りの計算式を見てみましょう。

表面利回り=1年間の家賃収入÷物件価格×100(単位:%)

では、実際にとあるマンション1室を3,600万円で購入し、1ヶ月の家賃10万円で貸し出した場合を想定してみましょう。年間の家賃収入は120万円となり、表面利回りは120万円÷5,000万円×100=約3.3%です。

たとえ同じ物件価格で購入したとしても、家賃が高く取れるエリアや物件の状態が良い場合だと表面利回りは高くなり、家賃があまり高くできない場合になると表面利回りは下がります。不動産物件の広告などで見かける利回りは、表面利回りのことが多いので、参考に見る程度にしておきましょう。

実質利回りの計算方法とシミュレーション

一方、実質利回りの計算方法は以下の通りです。

実質利回り=(1年間の家賃収入―諸経費)÷(物件価格+購入にかかわる費用)×100(単位:%)
諸経費:固定遺産税、都市計画税、火災保険料、各種管理修繕費、集金代行手数料など

諸経費には、税金のほかに、文章マンションの場合に必要となる管理費や修繕積立金も含まれています。また、家賃を自分で集金するのではない場合、集金代行手数料も必要です。

先ほどの例と同じく、マンション1室を3,600万円で購入し、1ヶ月の家賃10万円で貸し出した場合で実質利回りを考えます。まず、諸経費がいくらになるかを洗い出す必要があります。今回は、以下の通り仮定しました。

  • 固定資産税・都市計画税:年間5万円
  • マンションの管理費:月6,000円
  • マンションの修繕積立金:月2,000円
  • 集金代行手数料:消費税を含んで家賃の11%

家賃収入計算時に注意したい「満室想定」と「現況」

家賃収入の計算をする際、注意したいのが満室を想定した計算にするか、入居率を考慮した現況を想定した計算にするかどうかです。複数の部屋を持つ物件全体の利回りを考えるときに、満室状態での家賃収入と、入居率80%の家賃収入では大きな差があります。

実質利回りを計算する際、家賃収入に入居率を掛けておくと、さらに利益計算の制度が上がります。マンションがずっと満室ということも難しいですので、空き部屋の数を周辺の状況に合わせて加味して計算しましょう。 

不動産投資の利回りは地方の方が高いが、儲かるかどうかは別問題

「第39回不動産投資家調査(2018年10月現在)」を見ると、東京に比べて、地方の政令都市の方が期待利回りが高く、大阪の4.9%を除いて5%台となっていることに気つきます。数字だけ見れば、地方に不動産投資をすれば儲かる、と感じるかもしれません。

しかし、数字には出ない部分で、地方都市への不動産投資には注意しなければならないポイントがあります。ここでは、注意したいポイントについて解説します。

地方での不動産等リスクで注意したいポイントは入居者探し

現在、日本の世帯数は全体としてまだ上昇を続けていますが、総務省の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によると、日本の総世帯数のピークは 2023年、その後は減少すると推計されています。

一般世帯総数の増加率(2015~2040年)で、この期間中世帯数が増加いているのは、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)2019(平成31)年推計」によると、東京都、愛知県、滋賀県、沖縄県の4都県のみ。地域ブロックとしても、関東以外の地域は世帯数が減少しており、世帯総数としても母数が少ない状態です。

この数字から言えることは、不動産投資の期待利回りが高くても、地方の入居者探しは、首都圏に比べて非常に厳しくなるということです。借主を見つけるための広告宣伝費がかなりかかることを覚悟しなくてはなりません。地方の不動産投資に手を出すには、初期投資として広告費などをどの程度必要とするのかについて、見積もる必要があります。

地方には首都圏にない投資リスクが存在

地方で比較的入居者が多いエリアは、その近辺に大企業の工場や大学のキャンパスがある場合です。この場合は一定数の需要があるため、安定した収入が得られる可能性が高くなります。ただし。逆に言えば、その工場が閉鎖された、大学が移転する、といったことが起これば、一気に収益が悪化する、というリスクも避けられません。

企業や大学があるので収益が安定している、と言われている物件でも、投資をする前に、移転計画などがないかについては、できる限り調査をしておきましょう

結果的には首都圏の方が儲かる場合も

地方都市への不動産投資は、期待利回りが高いとはいえ少なからずリスクがあります。このリスクを入居者を探す費用を物件購入費用に含めて計算すると、利回りの数値は首都圏の方が上回る可能性大です。

このように、不動産投資を検討する場合、利回りの数字だけを見ていると、本当に儲かるかどうかを見落としてしまうことがある点には留意してください。

では、不動産投資の利益を見極め、投資リスクを避けるためにはどういう点に注意すればいいでしょうか。

不動産投資の利益を見極める!リスクを避けるポイント

不動産投資の利益がどれぐらいになるかを見極めるためには、以下のポイントがあります。

  • 利回りの高い物件は家賃設定が周辺よりも高くなっていないか確認
  • 家賃相場が高くても入居者が集まるポイントが備わっているのかを確認

利回りの高い物件は家賃設定が周辺よりも高くなっていないか確認

不動産の利回り計算を何回かすると分かってきますが、利回りは家賃収入が多く、物件価格が安いと高い数字になります。不動産の広告で、そのエリアにしては高い利回りを謳っている場合は、周辺エリアの家賃相場と、その物件の家賃を比較してみてください。あまりにも相場とかけ離れた家賃になっていると、よほどのことがない限り入居者が集まらず、実際の利回りはかなり下がることになります。

利回りが低めでも入居者が集まるポイントが備わっているかを確認

設備面を充実させているため価格が高くなっている物件の場合、利回りはどうしても低めになります。しかし、入居者が家賃より優先する設備などがあれば、その家賃設定でも住みたいという人がいるため、結果的に実質利回りでは高くなるかもしれません。

例えば、駅から同じぐらいの距離にある物件を比較する際、オートロック&2階以上で、セキュリティ上安心な物件の方を選ぶ女性は少なくないでしょう。入居者が集まるポイントは、少々家賃が高くても入居したい、と思わせるだけの設備が整っているかどうかです。

家賃と物件価格を判断する際は、周辺の相場を確認して、なぜ高いのか・安いのかの原因をきちんと確認して、これなら収益が出るかどうか、という判断ができるようにしましょう。周辺の相場については、家賃相場を見積もれる不動産系のサイトがいくつかあるので、参考程度に利用してみてください。細かく条件を設定できるので、どういう設備があると家賃相場があがるのかも確認できて便利ですよ。

まとめ

不動産の利回りには、家賃収入と物件価格だけで算出する表面利回りと、諸費用まで考慮した実質利回りの2種類があります。不動産投資の判断には、表面利回りだけでなく実質利回りまで確認して、実態に即した利益がどれぐらい出るのかを確認しましょう。

不動産の利回りは、家賃収入が高く物件価格が安い場合は高い値となり、家賃収入が少なく物件価格が高い場合は低くなります。家賃収入が高いため高い利回りとなっている物件の場合は、その家賃でも入居者が集まりそうかどうかを確認することが重要です。物件価格が安い場合、入居者が集まらないような設備ではないかを確認しておく必要があります。

注意ポイントを押さえつつ、不動産の利回りを計算して、投資に値する物件かどうかを見極めてくださいね。

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