【連載】首都圏空室増加!入居促進の最終手段「家賃減額」を低リスクで行う2つのアイデア

  • 2021/10/24
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このところ、「以前は人気があり即成約になっていた部屋なのに空室が続いている・苦戦している」という声を耳にすることが増えました。

図1は東日本不動産流通機構が発行している「レインズシステム利用実績報告」の数値を基にしたグラフです。

首都圏の賃貸物件在庫推移をみると、2020年3月(コロナショック)以降、在庫が増え続け、2021年7月時点では約350,000件に達しました。前年同月が約285,000件ですので、1年間で実に20%以上(約65,000件)も在庫が増えたことになります。

言うなれば、昨年比で「2割増しで売れ残る市場」になっているのですから、多くの物件が苦戦を強いられているのも当然かもしれません。

[図1]
artavenue_202110_1

(賃貸物件在庫:退去などを理由にレインズへ登録された月末時点の募集物件数)

コロナショック以降も新築マンション・アパート(貸家)は建築され続けています。一方で、首都圏の人口はコロナ以前に比べて伸び悩んでいる節があります。たとえば、東京都が毎月公表している「住民基本台帳による世帯と人口」データによれば、2021年7月1日時点の都の総人口は約1,384万人であり、1年間で人口が約0.3%減少した(前年同月1,388万人。差分約4万人のうち外国人が3万人)ことが分かります。供給は増え続けているのに人口が追いついていないのであれば、在庫(空室)が増えている現状も頷けます。

 

今部屋を探している人に刺さる空室対策とは

部屋探しをする人は大きく2つのタイプに分かれます。

1.引っ越し時期が明確に決まっている人
引越理由(例):就職、転勤、入学 等

2.引っ越し時期が決まっていない人
引越理由(例):家賃を安くしたい、部屋を広くしたい 等

これまで首都圏へ引っ越す人の大多数が<1>のタイプ(就職、転勤などが理由)でした。しかし、リモートワーク拡大によってその数が減少傾向であることに加え、緊急事態宣言も重なったことで「様子見」を選択している企業・人が増えています。そしてご承知のとおり、多くの賃貸物件はこの<1>をメインターゲットに建てられています。今はおそらく僅かな流入を多くの物件で奪い合っている状態でしょう。入居申込獲得の難易度は例年よりも格段に上がっているといえます。

となると、いま狙うべきはもしかしたら、一年中部屋を探している<2>のタイプなのかもしれません。それを裏付けるようなデータが、不動産情報サービスのアットホーム株式会社から発表されています。

[図2]
artavenue_202110_2

同社の発表した「2021年上半期 問合せが多かった条件・設備」ランキング(図2)を見てみると、条件編での1位は「毎月の家賃を下げたい」(34.4%)。コロナショック後に「収入不安を感じている人が多い」ことも要因のようですが、どうやら<2>のタイプの動きが活発になっているようです。本来であれば、「家賃を下げる」ことは最も避けたい空室対策ですが、現在は空室対策においても緊急事態と捉え、住んでもらう事を優先して、家賃減額を検討してみても良いかもしれません。

仮に、10万円の物件を5,000円減額するケースを考えてみましょう。

【減額シミュレーション】
・正規家賃:10万円
減額後家賃:9.5万円(▲5,000円)
・居住年数:48ヶ月(4年間)※当社実績より想定
・現状件で予想される空室期間:6ヶ月
5,000円減額時の予想空室期間:2ヶ月

A:家賃10万を維持するケース※空室期間6ヶ月
家賃収入(10万円×48ヶ月)-空室損(10万円×6ヶ月)=420万円(A)

B:5,000円減額したケース※空室期間2ヶ月
家賃収入(9.5万円×48ヶ月)-空室損(9.5万円×2ヶ月)=437万円(B)

B(減額)437万円-A(維持)420万円= +17万円

簡単な計算ですが、仮に5,000円減額し、減額前よりも空室期間が4ヶ月短くなるのであれば、早く住んでもらったほうが得なケースも出てきそうです。

しかし、入居促進の効果の一方で、減額賃料での居住期間が想定より長くなってしまうと、損失も比例して大きくなる可能性があります。そこで、居住期間の懸念を解消する手段についても考えてみましょう。

・手段1「定期借家契約」を活用する
・手段2「初回更新(再契約)時に正規賃料へ戻す」特約を付ける

「定期借家契約」は、契約終了日が最初から決まっている賃貸借契約です。オーナーにとっては、後々の計画が立てやすいことが何よりのメリットです。しかし、定期借家契約は借りる側からすると“期間を延長できない”融通の効きづらい契約形態ともいえます。周辺に普通借家契約・再契約型定期借家契約(更新・再契約を結べば引き続き住める)で募集している物件があるなら、それらよりも家賃を低くして入居促進を行う必要があります。

手段2は、普通借家契約もしくは再契約型定期借家契約で「初回更新(再契約)時に正規賃料へ増額する」ことをあらかじめ合意しておく方法です。

この場合は、募集図面や賃貸借契約書の特約に「(▲年後の)初回更新(再契約)時に●万円家賃を増額する」という旨を必ず記載しましょう。「増額するなんて聞いてない」といったトラブルを発生させないことが目的です。

特約を有効にするためのポイントは、増額金額と増額時期を明確に記載することです。曖昧な記載だと、せっかくの特約が無効になり、正規賃料へ戻せなくなる可能性があるのでご注意ください。

余談ですが、増額後家賃が(市場と比べ)高すぎるケースで、仮に賃借人から「賃料減額請求」を起こされてしまうと、想定家賃に増額できない可能性がありますので、家賃の上げ幅にも配慮が必要です。

弊社では今夏、「初回更新(再契約)時、正規賃料へ戻す」を実施しています。40物件に対し、1年間・月1万円~2万円程度の家賃減額で実行したところ、開始から2週間で既に半分の物件にお申込を頂いており、一定の効果を感じています。

賃貸市況が安定するにはまだしばらくかかりますが、市況が回復したあとに家賃も一緒に回復していける対策が今は必要なのかもしれません。

本記事が空室対策の一助になれば幸いです。

筆者:(株)アートアベニュー 伊藤
弊社は首都圏の賃貸物件約7000戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

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