【連載】満室の次は”いつでも満室”を目指す「テナントリテンション」の考え方

株式会社アートアベニューの原田と申します。弊社は首都圏の賃貸物件約6500戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」をおこなっている不動産管理会社(PM会社)です。
本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などを紹介します。
賃貸経営における「テナントリテンション」とは
賃貸不動産業界は、1月〜3月までがいわゆる繁忙期。空室のある不動産オーナーにとっては、市場の動きが停滞してしまう4月までがひとつの勝負所かと思います。
しかし一方で、不動産経営には「テナントリテンション」という考え方があるのをご存じでしょうか。「テナント=入居者」「リテンション=保持・維持」という意味で、要は入居者を保持し続ける、長く住み続けてもらうということです。
このテナントリテンション、考え方によっては「最大の空室対策」であるともいえます。なぜなら、現入居者を維持する=解約を出さなければ、そもそも空室に悩む必要すらなくなるからです。
20年ほど前までは、入居者が頻繁に入れ替わるほうがいいという考え方もありました。当時は、退去が出ても敷金から原状回復費用をたっぷりと差し引くことができた上、次の入居者から2ヶ月分の礼金も受領できたため、解約がむしろ歓迎されたのは当然といえるでしょう(不動産仲介会社も解約が出ることで、より仲介手数料を稼げました)。
しかし、今は違います。市場の変化はご存じの通りです。この厳しい状況下においては、「いかに長く住んでもらうか」というテーマこそが賃貸経営成功の鍵を握っているのです。
では、テナントリテンションとして具体的に何をすればいいのでしょうか。
テナントリテンションで実施すべきこと
賃貸経営におけるテナントリテンションでは、次の4つを実施するのがオススメです。
1.住み心地の向上
- 定期清掃の回数を増やすなどして共用部やゴミ置き場を清潔に保ち、住環境を向上させる
- いつでも何でも相談できる入居者専用コールセンターを設ける
- 発生したクレームに対して迅速に対応する
2.物件価値の向上
- 古くなった設備を刷新する(インターホン→TVモニターつきに、古いエアコン→新品に)
- 無料インターネットサービスの導入
- オーナー負担で映画見放題等のサブスクを導入(Netflix等)
※若者のTV離れが進み、ネット視聴が台頭した現代においては、ネット無料+映画見放題のセットは効果の高い施策といえるでしょう
3.料金割引
- 長期入居に対する賃料割引
- 更新料・再契約料の割引
- 更新時にプレゼント(ちょっとしたギフトや、キッチン・エアコンクリーニングなど)
※割引やサービスに後ろ向きなオーナーは少なくありませんが、長く利用してくれているのに料金を安くしないのは賃貸住宅ぐらいのもの。割引やサービスは契約継続を促す基本といえるでしょう
4.ターゲットを絞る
テナントリテンションには、ターゲットを絞ってリテンションを図る方法もあります。
弊社では、入居者からの問い合わせやクレーム、解約理由などの全データを集計していますが、そのデータを詳細に分析すると興味深いことが分かります。
たとえば、30代以上の単身女性は、単身男性などに比べると、物件の些細な問題や気分的な飽きを理由に引っ越しを決意しやすいのです。
これはつまり、「30歳以上・単身入居の女性に長く住んでもらうには、定期的に多少のサービスを提供する必要がある」ということであり、「単身男性は放っておくこともできる」ということを意味します。
実際にテナントリテンションを行う場合、予算的に厳しいのであれば「30歳以上の単身女性の部屋」から優先的に対策をしてもいいかもしれません。(そもそもこうしたターゲッティングは、データを保持・分析できないと難しいですが……)
いずれにせよ、必要なのは「どんな部屋なら借主は長く住みたいと感じるか」を考えることです。入居者の気持ちになって、お部屋の価値を維持・向上させていくことが重要といえるでしょう。
せっかくお部屋を気に入ってもらえた入居者です。次の空室を発生させにくくするためにも、空室対策(=テナントリテンション)を実行してみてはいかがでしょうか。
株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。http://www.artavenue.co.jp/