不動産投資スタートアップ講座 ~物件調査編~

これから不動産投資を始める初心者の方に向けてお送りしている「スタートアップ講座」ですが、これまでは物件の情報収集と勉強方法、物件情報の見方についてお伝えしてきました。今回は現地でおこなう物件調査と、ヒアリングについて解説していきます。

過去の投稿をご覧になりたい方は、以下をご覧ください。

*物件の情報収集と勉強方法についてはコチラ(リンク追加)

*物件情報の見方についてはコチラ(リンク追加)

 

現地調査で必要な4つの観点

不動産投資業界でよくいわれている「買う物件を決める前に、最低100件見る」という格言や、アメリカの不動産投資家ドルフ・デ・ルース氏が提唱している「100:10:3:1の法則」などは有名です。100件の物件を現地調査して、そのうち10件に買付けを出し、3件の買付けが通り、最終的に1軒買えるというものです。

しかし、今は100件見て10件しか買付けを入れられないようでは、事前のリサーチ精度が良いとは言えません。ひと昔前ならばGoogleストリートビューはおろか、インターネットで得られる情報そのものが少なかったので、現地に行かないと分からないことたくさんありました。しかし現地調査で得られる情報量というのは以前と比べてウエイトが低くなっています。あらかじめ投資指標や需給調査や人口動態などをネットで調べ、買うか買わないかの判断基準を明確にしてから、現地を見て問題がなければ購入するという流れが望ましいでしょう。

とはいえ、現地に行かないと分からないこともたくさんありますので、そのポイントをお伝えします。

まず現地調査で大事なのは、現地へ行かないと分からないものを確認することです。現地調査のポイントは、大きく分けて4つになります。

  • 1つめは、建物の劣化状況
  • 2つめは、管理体制と入居者のマナー
  • 3つめは、物件の雰囲気
  • 4つめは、周辺の環境と需給状況

 

建物の劣化状況

建物の劣化状況はGoogleストリートビューや、賃貸募集サイトの物件写真からおぼろげながら判別できますが、やはり現地に行かなければ分からないチェックポイントです。

 

外回り

外回りでチェックすべきポイントは幾つかありますが、経年通りの修理がなされている物件はまずありません。ババ抜きのような話ですが、中古物件の大半は「もうすぐ大規模修繕が必要」という状態で売りに出されています。建物がきれいで築浅物件でもない限り、クラックやサビや汚れというのは当然あるものです。中古物件は建物が劣化していることを前提として、現地では修繕する箇所・時期・費用などを具体的に見積もっていきます。

外回りで確認することは外壁・屋上の防水、鉄部のサビ、木部の腐食、タイルの剥がれです。とくに建物というのは防水が大事で、もし雨漏りが発生した場合は建物にダメージを与えますし、入居者にも迷惑がかかり居住できなくなる可能性もあります。

防水劣化を確認する方法としては、まず外壁を触って塗料の粉末が白く手に付く「チョーキング現象(※)」の有無です。不思議なことにどんな色の外壁でも、手に付く塗料の粉は白色です。チョーキングがあるとかなり劣化している証拠で、2~3年以内に何らかの塗装や防水処理をしないと、建物自体に大きなダメージを負うことになるでしょう。

外壁工事は内容によって価格が違うので一概にいえませんが、ネットで調べればおおよその施工単価が分かります。そこで注意しなければいけないのは、外壁工事で必要になる足場です。高さのあるビルでは塗装代よりも足場代の方がかかるようなこともあるので、塗装単価だけで調べないように気をつけてください。

※チョーキング現象…外気や紫外線などの影響で外壁材の表面塗装が劣化し、顔料がチョークの粉のように浮き出てくる現象です。

 

屋上防水

屋上防水の劣化は外壁よりも分かりやすく、ひと目見て修繕が必要かどうか判断できます。たとえば、シート防水など接合部の剥がれ、目地の浮きや表層のひび割れ、雨水の溜まりなどがあります。

物件によっては屋上自体に登るのが困難で、傾斜のある屋根だと上の方は見えないケースもありますが、万難を排して確認しましょう。可能であれば売主に防水工事の履歴や当時の見積書を出してもらえれば、防水があと何年持つかの検討がつきます。(工事が手抜きじゃない場合の話ですが・・)

アパートの防水工事で1番多いのがウレタン防水で、約10年の寿命だと言われています。施工単価の相場は1㎡あたり3,500〜4,000円なので、修繕費用と時期が分かれば安心して買える判断ができるのではないでしょうか。ちなみに防水が劣化している時は、ウレタン防水の上からトップコート塗装をして、表面の防水層を再コーティングするという安価な方法もあります。畳でいうところの表替えみたいなものです。詳しい工法は専門書やネットなどで研究してみてください。

 

外階段と爆裂

外階段はとくに鉄部のサビが出やすい箇所です。接合部分が錆びて外段が外れかかっているのでなければ、防水に比べて症状はかなり軽く、軽微なサビを気にする必要はまったくありません。鉄部塗装をすれば見違えるほどきれいになるので、物件価値を上げやすいポイントの1つです。

共用電灯の鉄部にもサビが入りやすいですが、構造とは関係ありませんし、塗装で簡単に蘇ります。こうした細かい劣化を気にするあまり、物件を買えなくなってしまうことの方が大問題です。

ただし、現地調査で見つかる劣化現象の中には、修繕に相当な費用が掛かるものもあります。その1つが「爆裂」です。爆裂というのは主に鉄筋コンクリートの建物に起こる現象で、外壁のクラック(ひび)から雨水が侵入して、鉄筋が錆びて膨張しながらコンクリートを破壊する現象です。これは壁面や屋上の防水性能劣化を長期間放置していた証拠で、今すぐ建物が崩れることはありませんが、一部の外壁が落下して重大事故につながる可能性があります。劣化した躯体部分を直すのは非常に難しく、壁面の補修にもかなりの費用が掛かります

 

配管

また、築古物件を買うときに厄介なのが「配管」です。現在使われている配管は塩ビ管という塩化ビニル製ですが、昔の配管は鉄製の亜鉛めっき鋼管でサビが発生してしまいます。配管の寿命は30年といわれていますが、鉄筋コンクリートの建物は耐用年数47年で、当時の耐用年数は60年でした。なぜこんなアンバランスな設計をしたのか不思議です。建物自体は元気でも配管がボロボロになっている、という物件は結構あるものです。

配管のサビは、水道を出して赤水が出るかどうかで判断できます

豆知識として鉄に付くサビは赤錆と黒錆の2種類あり、人体に有害なのが赤錆です。日本の水道水は薄い塩素が含まれているため、配管から出るサビはほぼ有害な赤錆になります。壁に埋まったサビだらけの配管は、修繕困難で莫大な費用がかかります。そこで露出配管といって、建物の外側に新しい配管を通す方法があります。外壁に沿って配管がむき出しになるため、場所や雰囲気によってはモダンな感じになることもありますが、やはり大抵は見栄えが悪くなってしまいます。

 

高圧洗浄

ほかにも配管を高圧洗浄する方法があります。高圧ジェットや超音波洗浄などで配管に水を流して赤錆をこそげ落とすのですが、その高圧洗浄に劣化した配管が耐えられず、破損を誘発してしまうリスクがあります。また、水道メーター部分に電気や磁力で水のイオン編成を変える機械を付けて、赤錆を黒錆にしていくというアクロバチックな方法もありますが、これは時間と数百万単位のコストがかかるため、小規模な賃貸住宅には向きません。このように古い鉄管というのは、直すことも改善することも難しいので特に注意しましょう。

 

室内

室内の劣化は現地へ行かなくとも、賃貸募集サイトに載っている写真を見ればだいたい分かりますが、空室があれば当然見せてもらった方がいいでしょう。

その場合は部屋の状態を見て購入判断をするのではなく、どこをどういう風に改善すれば価値を上げることができるのかを主軸に見ていくのがポイントです。今の設備、内装、管理体制の結果として、今の家賃と入居率がある訳です。逆にいえば、設備や内装、管理体制が向上すれば、家賃や入居率も上げていけるということになります

自分で物件の価値を上げることができれば、相場に関係なく高値で売却することが可能です。内装や設備はその中でも1番のポイントなので、どうすれば物件価値を上げることができるかという観点で判断していきましょう。

 

リフォーム

リフォームは、

現状回復 → 表層リフォーム → フルリフォーム → リノベーションの4段階

に分かれており、各レベルによって内容や費用が変わってきます。「現状回復」は元に戻すだけなので、ハウスクリーニングや簡単な修繕を含めて1坪あたり2~3万円程度で済みます。賃貸物件の場合は「表層リフォーム」が1番多くなります。たとえば和室を洋室にする、クロスを全面張替える、床をフローリング調、玄関土間をテラコッタ調のクッションフロアにする、照明・エアコン・洗面台を入れ替えて1坪あたり5万円程度になります。

「フルリフォーム」は建物の築年数によって変わりますが、お風呂を取り替えて1坪あたり10万円程度が相場です。

大事なことは限られた予算の中で、どれだけ物件価値を上げることができるかです。費用対効果に応じたリフォームパターンを自分の中で把握できれば、購入後の計画もより立てやすくなります。

 

管理体制と入居者のマナー

一棟物件と区分マンションでは、管理体制に対する見方が全く違います。一棟物件の場合は管理状況が良くない場合も、購入後にほぼすべて改善することが可能です。たとえば、ゴミが分別されていない、自転車置場に放置自転車がある、植栽が伸び放題など管理体制のアラはいくつもあります。これらの管理不足はむしろプラスポイントで、少しのお金と手間をかければすぐに改善するので、思ったより簡単に物件価値を上げやすいのです

これが区分マンションになると、放置自転車を片付けるだけでも理事会に議案を提出して、各戸の所有者から承認されないと撤去できません。「マンションは管理を買え」と不動産業界ではよくいわれていますが、たしかにその通りでいくらズサンな管理体制であっても、すぐ改善できないのが難点です。区分マンションを購入するときは、管理状況や管理規約をしっかり確認しましょう。

一般的な入居審査をしていれば、特定の物件にマナーの悪い入居者が集中することはほとんどありません。それでも入居者マナーが悪い物件というのは、2パターンの原因が考えられます。1つは普通の入居者がマナー環境の悪さに毒されてしまい、もはやルールを守るのが馬鹿らしくなっている。もう1つは管理会社の入居審査が甘く、前オーナーもズサンで、ここだったら悪い入居者でも受け入れてくれるというイメージが物件についてしまっている。

賃貸契約書の中にはルール違反者に対して契約解除できるという文言があるので、それをチラつかせて話をするだけでも入居者マナーは改善するものです。実際に退去させる場合は裁判になるので大変ですが、まずは自分と管理会社のやる気次第でいくらでも変えることができます。

 

物件の雰囲気

物件の雰囲気は肌感覚が大事で、それこそ現地にいかないと分からないものです。ゴミも落ちてなければ放置自転車もないのに、何かそこにいると嫌な感じがある。こういった雰囲気や空気感は、30分ぐらい現地にいると分かるものです。人それぞれ性格や価値観は違いますが、「なにか気持ち悪い」と思う感覚は、入居者も同じように感じていることが多いので、自分の肌感覚を信じてみて下さい。

雰囲気や空気感を悪くする原因としては、過度な湿気と日当たりの悪さであることが多いのですが、これらを全く気にしない入居者も一定数いるのが迷いどころです。都市部の繁華街にあるマンションなどは、隣の建物との距離がほとんどなく、良い日当たりが確保できている建物の方が少ないくらいですが、それを上回る利便性と高い入居率を維持しているケースが多くあります。そういった繁華街にある物件と、郊外や住宅地にある物件は分けて考えましょう。

 

周辺の環境と需給状況

周辺環境を調べる上で、現地にいかないと分からないことは「騒音と臭い」です。とくに忌諱施設といえば墓地や宗教施設や組事務所などもありますが、一般的にマイナス要因となるのは騒音と臭いを出す施設です。代表的なものは下水やゴミの処理場、食肉処理場、一部の飲食店(中華料理店など)などです。パチンコ店やラブホテルは立地によって違います。たとえば駅前物件であれば、さほど気にすることはないでしょう。

ほかにも周辺環境で注意すべき点は、線路沿いや幹線道路沿いの物件です。都市部の在来線沿いにある単身者向け物件は、入居者が日中家にいないことも多いので、線路沿いであっても入居率にさほど大きな影響はない場合があります。逆に問題なのは地方にあるJR線沿いの物件で、真夜中に寝台列車や貨物車両が走るので睡眠を妨げることもあるでしょう。また、幹線道路は線路沿いよりも騒音が激しく振動が伴う場合もあります。

とくに高速道路の出入口付近は要注意です。高速道路は高い位置にあり防音壁音で音や振動を吸収していますが、出入口は位置も低く防音壁が設置されていません。分譲マンションなどでは二重サッシで音を遮断していますが、安い賃貸アパートではそこまでの防音設備はありません。

10年程前は現地に行って周辺の競合物件を探して、1つ1つ足を使って入居率を調査していました。これは今でも非常に有効なものですが多くの労力を必要とします。今はインターネットで地図と賃貸募集サイトを見比べ、似たような間取りの物件が募集されているのか確認することができます。

現地に行く場合、使い古されたノウハウですが、空室を見分ける確実な方法はガス栓を見ることです。電気はリフォームや部屋の見学に来た人のために空室でも停止にしていたいことがあるので、ガスメーターの栓を見るのが1番確実です。しかも、電気メーターは各戸についていますが、ガスメーターは外にまとめて設置してあるので確認がしやすいという利点もあります。その他に現地調査に行く場合の便利ツールとして、建物の傾きを見る「水準器」、ひび割れの幅を計る「クラックスケール」、コンクリートやタイルなどを叩いて音で調べる「打検棒」などがあります。

 

※本コラムは、2018年1月15日配信の満室経営新聞から抜粋・加筆・修正したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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