不動産テックが導く、不動産の未来
- 2019/10/31
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「〇〇テック」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。たとえば、金融業界とテクノロジーが融合した「FinTech(フィンテック)」、医療とテクノロージーが融合した「MedTech(メドテック)」などです。前者でいえば、2019年10月現在、消費税増税に伴ってその高まりを見せている「モバイル決済」、後者には、細かく複雑な医師の手を担う医療用最先端ロボット「ダヴィンチ」があります。その業界にとって新たな革新的手段となるIT技術の進歩には目を見張るものがあり、さまざまな業界に進出・融合を進め、「○○テック」と呼ばれています。
今回は、そんな「〇〇テック」の中から「不動産テック」をご紹介します。
不動産テックとは
「不動産テック」とは、「不動産」×「テクノロジー」の融合体を指します。
不動産テックとは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと。
不動産テックは「Realestate(不動産)」と「Technology(テクノロジー)」をかけた言葉なので、「RealestateTech」、「Retech(リテック)」とも呼ばれますが、現状「不動産テック」が一番耳にする、浸透しつつある言葉です。
不動産テックの必要性について
人材不足の深刻化
不動産テックは、不動産業界に欠かせないものです。
不動産業界だけでなく、どの分野でも大きな課題となっているのが、労働者の高年齢化や若年層の人口減少から生じる人材不足。この問題は実に深刻で、不動産業界も例に漏れません。
人材不足をテクノロジーで補てんし、更には効率化を図ることによって業界全体の活性化に役立てようというわけです。
生産性の向上
斜陽とまではいかないまでも、発展することなくして安定した経済活動を維持できる業界はありません。不動産業界も同様、労働人口の高齢化が進み、現状のままでは先細る未来が見えてきているのが実情です。
これまでの不動産業界の業務形態にテクノロジーを融合させることによって、更なる価値を生み出し、生産性を向上させる必要があります。
たとえば、不動産といえばイメージしやすいのが「町の不動産屋さん」。個人商店としてお店を構えている経営者はやがて年を取り、お客さんをただ待つだけの業務形態では、労働生産性は上がらないままです。
アパート、マンションの大家さんも同様に老齢となり、人口減少で需要は減る中、活気ある業態を想像するのは容易ではありませんよね。
そうした中にテクノロジーを介在、融合させ、労働生産性をあげつつ、未来ある不動産業界を目指せたらどうでしょう。活気ある不動産業界が広がる可能性は、あるかもしれません。
不動産テックの「カオスマップ」
2019年8月22日、一般社団法人不動産テック協会から「不動産テック カオスマップ第5版」が発表されました。
不動産にテクノロジーを入れ込んだ企業がどのくらい参入しているのか、いくつかのカテゴリーに分類されて、分かりやすく具体的に目に見える形でマップ化されています。
不動産テックのカオスマップには、掲載要件があります。
たとえば、一企業の給与計算をパソコンで行っているとします。ですが、これは不動産にテクノロジーが加わった不動産テックとはいえません。
ほかにも、企業はインターネット上に自社を紹介するホームページを掲載しているところが多いですし、取引先とはメールを使用して商取引を行うことが多いでしょう。
ですが、こうしたテクノロジーは私たちを含めた社会活動を行う人たちにとって、すでに大変身近なものであり、不動産に関する商習慣を変革するまでには至らないですよね。
こうした理由により、不動産テック協会はカオスマップを作成するに当たり、より細やかな掲載要件を設けています。
不動産テック カオスマップ掲載要件
- AI(人口知能)、IoT、ブロックチェーン、VR/AR、ロボットなど現時点において先進的なテクノロジーを活用しているビジネスまたはサービス
- 一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しい価値や顧客体験をつくりだしているビジネスまたはサービス
- 一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しいビジネスモデルや収益モデルを実現しているビジネスまたはサービス
- 一般的なITやビッグデータを活用することで、既存の業界課題の解決や商習慣・慣例を打破しているビジネスまたはサービス
- 一般的なITやビッグデータを活用することで、オンラインプラットフォームを実現しているビジネスまたはサービス
掲載カテゴリーとその定義
続いて、不動産テック カオスマップの各カテゴリーを挙げながら、いくつか具体的な例を紹介します。
・AR・VR・・・VR・ARの機器を活用したサービス、VR・AR化するためのデータ加工に関連したサービス
たとえば、AR(エーアール)・VR(ブイアール)を利用したものとしてイメージしやすいのは、「VR内見」です。
VRというと「バーチャルリアリティー」、大きめのヘッドセットを頭に装着して仮想現実を覗くイメージですが、パソコンやスマホ上でも拡張化された仮想現実の世界を立体的に内見することが可能です。
インターネットを介して、内見を「体感」できることは、実際に物件を確認するため何度も現地に足を運ぶことが省かれ、コスト、また営業担当者のコスト、人件費も大幅にカットしつつ、効率化を図ることができます。
・loT・・・ネットワークに接続される何らかのデバイスで、不動産に設置、内臓されるもの。また、その機器から得られたデータ等を分析するサービス
最近はテレビCMでも目にすることが増えたIoT。グーグル社の「OK!グーグル」、アマゾンの「アレクサ!」といった呼びかけと共に、家電製品が音声で反応し、音楽を再生したり、タイマーを設定したりするイメージがありますが、それ以上に、セキュリティーセンサーや遠隔地から鍵を確認、施錠するスマートロックなど、スマートホームに関する業態は市場に大きな影響を与えています。
・スペースシェアリング・・・短期~中長期で不動産や空きスペースをシェアするサービス、もしくはそのマッチングを行うサービス
・リフォーム・イノベーション・・・リフォーム・リノベーションの企画設計施工、Webプラットホーム上でリフォーム業者のマッチングを提供するサービス
・不動産情報・・・物件情報を除く、不動産に関連するデータを提供、分析するサービス
・仲介業務支援・・・不動産売買・賃貸の仲介業の支援サービス、ツール
賃貸仲介業は利幅が小さく、それでいて超過労働となりやすい業態。そこに不動産営業担当同士を繋ぎ合わせるマッチングシステムを提供することによって、労働集約的だった業務から、効率性を大幅にアップさせることに成功しています。
また、延長線上に顧客をマッチングすることにより、業務を更に効率化。対面回数が少なくても、きちんとコミュニケーションの取れたチャットシステムなどを取り入れながら、作業回数、作業時間を削ることに成功しています。
・管理業務支援・・・不動産管理会社等の主にPM業務の効率化のための支援サービス、ツール
・ローン・保障・・・不動産取得に関するローン、保証サービスを提供、仲介、比較しているサービス
・クラウドファンディング・・・個人を中心とした複数投資者から、webプラットホームで資金を集め、不動産へ投融資を行う、もしくは不動産事業を目的とした資金需要者と提供者をマッチングさせるサービス
・価格可視化・査定・・・様々なデータ等を用いて、不動産価格、賃料の査定、その将来見通しなどを行うサービス、ツール
不動産価格は一般的に「1物5価」といって、実勢価格、公示価格、固定資産税評価額、相続税路線価、基準値標準価格があります。
それらを踏まえた上で相場を見比べ、金利、時節なども踏まえた上で不動産は売買されますが、ここにAIが介入することによって、不動産売買にかかるセンスや技術などを必要としない、だれでも簡単に不動産売買ができる可能性が生まれます。
膨大な情報群、ビッグデータから価格を分析、算出できれば、インターネット上で不動産価格を査定し、売り手と買い手をマッチング、売買することが可能になり、効率性、透明性、平等性のもと、業界全体が活気づくのは想像に難くないですよね。
・マッチング・・・物件所有者と利用者、労働力と業務などをマッチングさせるサービス(シェアリング、リフォームリノベーション関連は除くマッチング)
・物件情報・メディア・・・物件情報を集約して掲載するサービスやプラットフォーム、もしくは不動産に関連するメディア全般
これまでは情報の不明瞭性も含むのが不動産情報でした。
好ましい例ではありませんが、例えば格安な物件を見つけても「先ほど契約が決まった。この物件はないけれど、これはどう?」といった顧客を引き込むための存在しない「おとり物件」や、そもそも存在しない「架空物件」の存在がそれです。
しかし、物件情報を集約するプラットフォームの存在で情報の透明性が増し、共有されることによって、これまで以上にそうした怪しい物件は減少することが想定されます。
まとめ
不動産テックは私たちの目に見える形で、進歩しているのがお分かりになりましたでしょうか。情報の質、量が飛躍的に増え、向上することによって、公平性、透明性が加速し、不動産市場全体が活性化します。目に見えるイキイキとした市場になれば、私たちも安心とワクワクをもって「買いたいな」、「借りたいな」といった購買意欲も湧きますよね。そうして、不動産テックの進歩は、私たちの未来をより明るくすることでしょう。