【連載】管理会社で収支が変わる!? 空室対策・提案ができる管理会社の選び方

(株)アートアベニューの高橋と申します。弊社は首都圏の賃貸物件約6500戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。
本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

「今の管理会社が空室を決めてくれない」
「そもそも空室対策の提案がない」

これは当社が管理会社変更のご相談をいただく際に、最も多く耳にする”今の管理会社に対する不満”です。残念ながら、「問題なく物件を管理してくれるなら管理会社はどこでもいい」とお考えのオーナー様は少なくありません。しかし、そういった方ほど、長期空室などの「問題」が発生して初めて、管理会社選びの重要性に気が付かれるようです。

事実、管理会社の動きや提案によって不動産運用の収支は大きく変わります。今回は空室対策提案の観点から、管理会社選びのポイントを考えてみましょう




稼働率は「客付力」の目安。ただし、計算方法には注意

管理会社を選ぶ際、多くの方が気にされるのが「客付力(きゃくづけりょく)」でしょう。客付力とは、お客様(入居者)を付けられる(みつけられる)力のこと。当然ながら、客付力の強弱によって物件の収入はダイレクトに変わります。

しかし、各社の客付力は数値化されているわけではありませんので、判断はもっぱら「稼働率(入居率)」に頼ることになります。稼働率が100%に近ければ、その管理会社の空室は比較的早く決まっているということですから、客付力が高いと判断できるでしょう。

ただし、稼働率には明確な定義がなく、管理会社によって計算方法がまちまちである点には注意が必要です。例えば、リフォーム期間を空室としてカウントしない計算方法の会社は、そのぶん他社より稼働率が高く算出されます。もし複数の管理会社を比較検討されるのであれば、稼働率の数値だけでなく、計算方法についても確認してみましょう。重要な指標のため、たとえ稼働率を公表していない会社であっても担当者が把握しているはずです。

組織の管理体制は、提案の数に直結しやすい

冒頭のような「空室対策の提案がない」は、なぜ起こるのでしょうか。その理由の1つは「担当者が忙しすぎて提案する時間がないため」です。

これは人的な余裕のない中で“物件担当制”を敷いている管理会社で起こりがちです。物件担当制とは、その物件のことであれば入居者対応もリーシングも退去精算も、すべて一人の担当者が受け持つ管理方式のこと。中には仲介営業を兼任しているケースもあり、こうなると繁忙期などは空室対策どころではなくなってしまいます

空室対策提案は、「今日やらなくても明日できれば問題ない業務」に分類されやすく、後回しにされてしまうことがしばしばです。空室対策を専門とする担当がいればベストですが、専任でなくても担当者が多くの業務を兼務していないか、組織体制をヒアリングすることも重要です。

 

長期空室に対して危機感のある組織を選ぶ

これも物件担当制で起こりがちな問題ですが、会社が担当者任せにしているせいで長期空室が認識されず、いつまで経っても空室対策が提案されないケースもあります。組織全体が長期空室という危機に鈍感なのです。

仮に、空室期間が60日を迎えたら長期空室とみなし、担当者個人の問題とせず組織全体で対策を考える、というルールの会社であれば、どの担当者が何室の長期空室を抱えているかも社内で一目瞭然です。当社では多数の長期空室を一人の担当者が持ってしまった場合には、募集部署全員で手分けして対策を考えます。

管理会社を選ぶ際には、長期空室とはどの位の期間の空室を指すのか、長期空室は何部屋あるのか聞いてみましょう。しっかり回答できる会社は、長期空室に対して真摯に対応している可能性が高いです。

そのほか、気になることは管理会社に遠慮なく質問してみましょう。具体的な数値を把握しているかどうかも管理会社選びの判断材料の1つです。数字で答えられるのは、その会社が日頃から提案に注力している証拠。今後の管理会社選びの参考にしてみてください。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

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