マンションの耐震基礎知識を学ぶ。購入前にチェックすべき項目とは?
地震大国といわれる日本に住むうえで、お家の耐震強度は気になるところ。今回はそんな耐震をテーマとして、マンションに関わる耐震をご紹介します。安心、快適なマンションライフを送るために、ちょっとだけお勉強しましょう。
耐震、免震、制震について
地震とマンションを考えるにあたって、大切なキーワードは3つあります。『耐震』、『免震』、『制震』です。まずは、その言葉と構造について説明します。
耐震、耐震構造とは
文字通り「地震の揺れに耐える」こと。耐震をはかるために、柱を太く強固なものにしたり、地震に強い補強材を使用したり、筋交い(すじかい)を多く組み込むことで、地震の揺れに耐える構造のことをいいます。
建物自体を揺れに対して耐えられる強固なものにするのが耐震構造。一般的なマンションはこの耐震構造を用いて建てられています。
免震、免震構造とは
文字通り「地震の揺れを免れる(まぬがれる)」こと。具体的にはマンションの建物と基礎との間、また中間層に免震装置を組み入れることによって、地震の際の地盤から伝える揺れを逃し、建物にダイレクトに揺れが伝わらないようにする構造のことをさします。揺れを逃して軽減することで、建物にかかる負担も同時に軽減されます。
制震、制震構造とは
文字通り「地震の揺れを制御する」こと。この場合は軽減することをさします。具体的には建物の内部に制震装置を組み込んで、揺れを吸収し、軽減する構造のことです。高層マンションは上層階になればなるほど建物自体が大きく、しなるように揺れるので、この耐震装置で揺れを吸収、小さなものにしています。
制震装置といえば、2018年にKYBの耐震・免震装置の検査データ改ざん事件のニュースが新しいところ。あの数値を改ざんしてしまった油圧ダンパーがこの、制震構造のための油圧装置にあたります。当該事件のマンション、病院、庁舎はその数なんと、986件。ちょっと怖い事件でしたね。
マンションの耐震に関わるチェックポイント
マンション購入時の耐震に関わるチェックポイントは複数あります。さまざまな要素を総合的に比較判断したうえで、参考にしましょう。
ポイントその1 耐震基準
マンションの耐震に関わる1番のチェックポイントは、建築基準法とそれに伴う法令に準ずる耐震基準です。耐震基準は1981年5月を境に『新耐震基準』となり、その基準が変わりました。耐震基準とは建物が地震などによる大きな力で倒壊しないことを計算、数値化した基準です。ですので、チェックするポイントの1つとして、自分たちが購入希望のマンションが1981年5月以前と以後、どちらで建築申請しているのか、管理会社、不動産会社に問い合わせて確認しましょう。注意点は『建てた日付』ではなく、『建築申請日』がどちらの日付に該当するかになります。
- 1981年以前-旧耐震基準・・・震度5程度の揺れでも全壊しない基準設計
- 1981年以降-新耐震基準・・・震度7程度の揺れでも全壊しない基準設計
また、1995年の阪神淡路大震災を境に、更に耐震基準は見直され、一部更新されています。大きな地震を境に見直し、更に良いものへと改正されるのは地震大国日本ならではの、良い点ですね。
ポイントその2 耐震等級
耐震等級は住宅の地震に対する強度を等級として定めたものです。住宅の品質確保の促進等に関する法律にのっとったもので、3段階に分かれています。優位性は3級>2級>1級の順番になります。こちらも耐震基準同様に、管理会社に問い合わせて確認することが出来ます。
耐震等級3級
1級で想定される1.5倍の地震が起きても耐えられる
耐震等級2級
1級で想定される1.25倍の地震が起きても耐えられる
耐震等級1級
数百年に1度程度の地震(震度7程度)に対しても倒壊や崩壊しない
ポイントその3 築年数
マンションを選ぶ基準として築年数は当然確認されると思いますが、年数自体も地震に耐えうる強度の目安になります。また、古い物件ほど老朽化は避けられないのは当然なのですが、それ以外に、地域によっては過去に大きな震災を経験し、通常の築年数よりも建物自体が大きなダメージを負っているケースもあります。ましてや1981年以前の旧耐震基準であれば、慎重に選ぶのが賢明な判断です。
耐震、免震装置を途中から取り入れている物件を探すことも可能ではありますが、もともと設置にはかなりのコストがかかるので、そうそう見つかるものではありません。ただし、柱、壁、また外付けでフレームなどを耐震補強しているマンションもありますので、そうした物件の方が安心出来ますよね。
ポイントその4 建築構造
建築構造は大きく分けて木造、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)と主に4つがあります。マンションの建築構造を考えた場合、木造はほとんど耐震性がありません。そして一般的にイメージするのは鉄筋コンクリート造でしょう。鉄筋コンクリート造も耐震性能は優れているのですが、この4つの建築構造の中では鉄筋の持つしなやかさと鉄骨のもつハードさが組み合わされた鉄筋鉄骨コンクリート造が、最も耐震性に優れた構造となります。
ポイントその5 地盤
マンションが建っている時点である程度の強固な地盤です。それは一般的な家屋と違い、マンションはある程度の階数を有した大きな建物であると同時に、鉄筋コンクリート造や鉄骨造といった重い資材を基本とした建築物であるため、強固な地盤の上でなければ建造出来ないからです。
それでも、その土地が埋め立て地や、海辺の砂地に続いた地盤であることは大いにあり得ます。幾度かの大きな地震のニュースなどで、グニャグニャと柔らかく液状化した地面に不安を覚える方は、地震の際にそうした現象が数%でも起こりうる可能性のある埋め立て地や海辺などは、警戒した方が良いかもしれません。
耐震基準適合証明書を確認しよう
耐震基準適合証明書はその名の通りの証明書ですが、耐震基準を満たしていれば自動的に発行される証明書ではありません。外部機関から耐震診断を行ってもらい、基準を満たして初めて発行される証明書になります。
設計図、建築確認申請書、構造計算書などを揃えた上で、一次診断、二次診断、三次診断と診断を受けた上で適合していた場合に取得出来ます。
また、これまで築25年を経過している住宅を購入した際は、住宅ローン控除を受けることが出来ませんでした。ですが、平成17年度の法改正により、この『耐震基準適合証明書』があると、住宅ローン控除を受けることが可能になりました。経済的な側面でも有効な証明書となります。
余談になりますが、東京都は耐震に積極的に取り組んでいます。この耐震基準適合証明書が発行されている建築物のエントランスには、ブルーのシールで『耐震診断済』マークが貼られることになりました(平成24年4月より)。その他にも『新耐震適合』、『耐震改修済』と合計で3つのブルーのマークシールを適合していれば貼られる『東京都耐震マーク表示制度』は、目で見ることができますので安心ですね。
まとめ
日本の地震調査委員会は、2013年12月に、30年以内にマグニチュード7級の地震が70%の確率で起こると発表。その被害想定を発表しました。地震大国日本において70%の確率は昨今の地震状況から考えると、驚くような数字ではありません。地震に対する備え、また不安を抱くことなく生活するうえで、マンションの耐震に関わるさまざまな要素はとても重要です。耐震構造、構造基準、地盤など、複合的に比較検討し、安心して住めるマンションを選びましょう。
もちろん、ペットボトルや缶詰、ランタンといった防災グッズなどの備えも万全に。